第二部22話── 中央都市の夜、怪しい少女と“光らない瞳”**
【中央都市・夜】
中央都市ルーメンは夜になると、
昼間以上に光で満ちる街だった。
魔石灯が並ぶ通り、
騎士団詰所、酒場、露店──
どこも人で賑わっている。
だが。
「……タク。なんか変じゃない?」
ソフィアが歩きながら眉をひそめる。
「違和感か?」
「ううん。“風の流れ”が妙……
この街、何かを隠してる。」
キャスもタクの袖を掴む。
「お兄ちゃん……
なんかね……“黒の匂い”がする……
でもここ、街の中だよ……?」
タクは無意識に腰の刀へ手を伸ばす。
(街の中で……黒い影の気配?
普通はありえない──)
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【中央図書院・残された記録】
三人は、情報を集めるため
“中央図書院”へ向かっていた。
だが──
扉を開けた瞬間、ピリ、と空気が刺すように揺れる。
「……タク、ここ……」
「ああ。誰か結界張ってるな……」
奥の閲覧室には一冊の古書が開かれたまま置かれていた。
タイトルは──
『影走りの記録──北へ消える者達』
ソフィアが目を通す。
「……これ……
“黒い影(屍人)”の記録……?」
ページにはこう記されている。
⸻
【中央図書院・秘匿記録】
黒い影は、約五百年前から現れ始める。
初めは“ただそこに止まり、害をなす者”として存在。
しかし時を経るにつれ──
“北へ向かう習性”が強まりつつある。
光・無属性以外の攻撃は通用しない。
水・火・土・雷は無力。
戦えば闇に落とされる恐れあり。
⸻
「……やっぱりだ。」
ソフィアは本を閉じて息を吐く。
「黒の人は……何かに呼ばれてる。
“北”──終焉領へ。」
キャスの耳が震える。
「やだ……そんなの……
お兄ちゃん……また危険になっちゃうよ……」
「大丈夫だ、キャス。」
タクはそっと肩に手を置く。
「危険なら……避ければいいだけだ。」
(でも。避けきれない未来がある気がする……)
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【図書院の出口──少女】
三人が外に出ようとした時──
「…………あ。」
廊下の影に、少女が立っていた。
年齢はキャスより少し下。
ぼろい白ワンピース。
裸足。
髪は静かに揺れ、瞳は月光を映しているのに──
光っていなかった。
まるで“色”が抜けたような、透明な目。
「えっ……誰……?」
キャスがタクの腕にしがみつく。
少女はふらりと近づき、タクの前で止まる。
「…………白い……石……」
「……え?」
「あなたの中……白い光……
とても……とても……綺麗……」
ソフィアが表情を固める。
「タク、後ろに下がって。」
「いや……この子、敵じゃ──」
「わかんないわよ。」
少女は続きを呟く。
「でも……気をつけて……
“黒”が……来る……
すぐ……すぐそこに……」
「黒……?」
ソフィアが風の結界を展開した瞬間──
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【黒い霧・接近】
図書院の外から──
まるで“触手”のように黒い霧が舗道を這ってくる。
「キャス!!」
「わかってる!!」
「ソフィア!!防御!!」
「大丈夫!!」
少女はタクの袖を掴んで震えながら囁く。
「……くろ……しじん……
ひとり……すごく……つよい……」
タクとソフィアは顔を見合わせる。
(ひとり……?
狙ってくるのは──)
「……タク?」
ソフィアが息を呑む。
タクは静かに刀を抜いた。
「……わかった。」
(黒い屍人……
また、俺を狙ってるのか)
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【少女の最後の言葉】
黒い霧が敷地を越える直前──
少女がタクの胸に額を寄せて言った。
「……白い……理……
あなた……壊れないで……」
タクの心臓が揺れる。
「あなたが……落ちたら……
“赤”も……“黒”も……
……ぜんぶ……死ぬ……」
「……え?」
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【第二十三話へ続く】
黒い霧が跳ねるように飛びかかる──
タクの刀がそれを迎え撃つ──
少女の正体は──?
屍人の目的は──?
白い理とは何か──?
物語は、さらに深い闇へ。
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