第二部19話── 三人再集結。語られる“黒石初代”の名**
【野営地点──ソフィアの帰還】
タクが傷だらけの体でどうにか野営地へ戻り、
キャスが泣きそうな声で手当てをしていた、その時。
ザザッ……!
「タク!! キャス!!」
森の奥からソフィアが飛び出してきた。
髪は乱れ、ローブは土で汚れ、
明らかに二人を探して走り回っていたのが分かる。
「ソフィア……!」
タクが立ち上がろうとすると、
ソフィアは怒ったように、しかし震えた声で叫んだ。
「タク!! その血!!何したの!?
一人で何に突っ込んだのよ!!」
「ソフィア落ち着けって……」
「落ち着けるわけないでしょ!!」
ソフィアはタクの前に膝をつき、
涙目のまま両手を強くかざした。
「光癒──《ライフ・リバース》!」
柔らかい光がタクの全身を包む。
キャス「お姉ちゃん……お兄ちゃん、いっぱい怪我……」
「分かってる!……タク、ほんっとうに……バカ……!!」
(……ああ。
こいつ……こんなに心配してたんだな……)
「悪い。心配かけた。」
「心配どころじゃないわよ……
もう……ほんとに……死ぬかと思った……」
ソフィアは胸に手を当て、深呼吸し、
ようやく落ち着くと、鋭い目でタクを見る。
「さ、話しなさい。
相手は──“何”だったの?」
タクはゆっくりと息を吐き、告げた。
「……黒石家の初代だった。」
ソフィア「………………は?」
キャス「く、黒石……?」
空気が、一瞬で凍りつく。
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【黒石清九郎盛隆──名が落とす影】
「黒石家の……初代?
冗談じゃないわよ、タク。」
「……冗談じゃねぇよ。
名乗ったんだ。“黒石 清九郎 盛隆”ってな。」
ソフィアが息を呑む。
「……本物なのね。
まさか……生きたまま闇に呑まれた……?」
キャスが震えながらタクの袖を掴む。
「お兄ちゃん……その人……
すっごく強かった……?」
「……強すぎる。」
タクは拳を握りしめた。
「一撃で木が粉々になる。
理の圧が……息できねぇほどだった。」
ソフィアが唇を噛む。
「黒石初代……
“理の乱れた地”が最も深かった時代の武人。
核の闇に近づきすぎて、飲まれたんだわ……」
タク「でも──喋れた。」
ソフィア「……え?」
タクは静かに言う。
「喋ったんだよ。
“ほう、白石の小童か”ってな。」
ソフィア「……!?」
キャス「し、しゃべれる屍人なんて……」
タク「さらに言った。
“白石は500年変わらんのう”って。」
ソフィアの瞳がわずかに揺れる。
「……理が強すぎて、“全部は壊れきれなかった”んだ。
だから記憶の断片だけ残って……」
タク「そうだろうな。
……父さんも、祖父も……
あいつと戦ってたのかも知れない。」
ソフィア「源蔵さんが……?」
タク「おそらくな。昔聞いたことがある。扉の向こうには、おろそしく強い理を持つものがおるって。」
キャス「…………」
キャスは震える手でタクの腕にしがみつく。
「お兄ちゃん……怖かった……?」
「正直……やべぇと思った。」
ソフィア「よく生きて帰ってきたわ……」
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【黒石初代の“理”の圧力】
「ソフィア。
あいつ……斬れねぇぞ。」
ソフィア「……斬れない?」
「如水の双斬も三断も弾かれた。
理そのものが……“おかしい”。
あれを倒すには、何かが足りない。」
ソフィアは目を閉じ、ゆっくり言った。
「……タク。
黒石初代は“理の重力”を完全に理解してた人よ。
本家白石と同格か、それ以上。」
「やっぱりそうか……」
「あなたの理はまだ伸びる。
だから“相性負け”して当然なの。」
タク「……でも倒すしかない。」
キャスもうなずく。
「うん……!
あんな怖いの……ほっとけない!!」
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【静かに燃える決意】
ソフィアは二人の顔を見て、頷く。
「よし。
黒石初代に対抗する方法を考えるわ。」
タク「……頼む。」
キャス「お姉ちゃん、私も……!」
ソフィア「もちろんキャスも戦力よ?
あんたの獣気は屍人に効く可能性あるし。」
キャス「うんっ!!」
焚き火の光が三人の影を大きく映す。
ソフィア「もう一度言うわ。
タク。勝手な単独行動は、二度としないこと。」
タク「……ああ。」
キャス「絶対だよ、お兄ちゃん!」
タク「……はいはい。」
二人に両側を固められ、タクは頭をかいた。
(……でも。
この二人がいるなら──
黒石初代とも、きっと戦える。)
こうして──
三人は“黒石初代との決戦”への準備を進めることを誓った。
その闇は深く。
けれど、その光もまた強かった。




