第二部18話── 黒石家・初代当主、現る。500年を越えて残った“理の記憶”**
【北の深淵】
「我が影達よ。時は来た。
各々、役目を果たされよ。」
「我が名を名乗ることを許す」
【公国北・断崖の森】
地竜討伐から数日後。
“黒の人”の正体を追うため、タクは単独で森の奥へ足を踏み入れていた。
「……ここだな。」
黒い霧が日差しを遮るように漂い、
空気がひどく冷たい。
タクの呼吸が自然と深くなる。
(今日こそ……奴の正体を掴む)
そして──
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【初めての、“遭遇”】
森の奥、断崖の前。
黒い靄が渦巻き、
その中心に“それ”は立っていた。
黒石家初代当主
黒石 清九郎 盛隆(くろいし せいくろう もりたか)
名が持つ気迫と同じだけ、
闇に侵された身体は威圧に満ちていた。
その男は……
「……白石の……小童か。」
タクは凍りついた。
(……喋った……!?
屍人なのに……!?)
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【500年越しの言葉】
盛隆はゆっくりと顔を上げ、
タクの“理”を測るように目を細める。
「白石は……
500年、変わらぬのう。
その理の気配……嫌でもわかるわ。」
「っ……!?
お前、俺の理が……見えるのか?」
「見えぬはずがあろうか。
わしは黒石家の始祖。
理を極め、闇に呑まれ、なお残った者よ。」
黒霧の中で、わずかに笑ったように見えた。
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【初代の本性】
盛隆の声が急に低くなる。
「だがの、白石の小童よ……
お主がここへ来たのは……間違いよ。」
「間違い?」
「わしはもう、救われぬ。
魂も……理も……
“核”に喰われたのだ。」
黒霧がタクへ伸びる。
「来るな……
殺せ……
……殺してくれぬか……?」
その声は一瞬だけ、人間のものだった。
(くそ……これ……
闇に侵されながら……
“まだ意識が残ってる”状態……!)
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【戦闘──タクの斬撃が弾かれる理由】
「ごめん……
今の俺じゃ、お前を救えねえ……!」
「救いなど……とうに捨てたわ!」
盛隆の黒刃が地を裂く。
ドゴォォッ!!!
(速いっ……!
500年前の“極み”の剣……!)
「如水──三断!!」
水刃を放つが、
ガァンッ!!
黒い霧に弾かれる。
(やっぱり……
あれは闇じゃなく、“理の残滓”……!
ただの屍人じゃねえ……!)
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【撤退を選ぶ勇気】
タクは眉を食いしばりながら叫ぶ。
「今の俺じゃ勝てねぇ……!
でもな──」
「…………」
「絶対に戻ってくる。
お前を“屍人のまま”にはしねぇ。」
黒石初代が微かに動きを止めた。
「ほぅ……
白石は……いつでも……
言うことだけは……立派よの……」
だがすぐに、再び黒霧が暴走を始める。
タク(やばい……!本格的に闇に飲まれ始めてる!!)
「すまねぇ……!!
今日は引く!!」
タクは雷の理を脚へ叩き込み、
一気に距離を取る。
盛隆は追わなかった。
「白石の小童よ……
来るがよい……
次は……“斬り合う”時よ……」
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【撤退後──タクの震え】
森から離れ、
タクは膝に手をつきながら深く息を吐いた。
「……まじかよ……
あれが500年前の……黒石家の初代……」
身体が震える。
「じいちゃん……
本当に、こんなヤツと戦ってたんだな……」
その背中に──
逃げ帰る無念ではなく、
“いつか救う”という静かな炎が宿っていた。
こうして、黒石初代との初遭遇は
タクにとって“最大の試練”の幕開けとなった。
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