第二部11話── 公国地方巡り。旅は楽しく、そして“黒の影”が忍び寄る。
【公国街道──平穏な旅の始まり】
地竜討伐の数日後。
三人は公国地方をめぐる旅へ。
馬車の上でキャスは、
風に揺れながら大はしゃぎだった。
「お兄ちゃん!!見て!!
麦畑がずーっと続いてる!!」
「ほんとだ……風が気持ちいいな……」
「公国の食文化は“麦×魚×ハーブ”が中心なのよ?」
ソフィアが指を立てる。
「つまり……美味いパンが大量にあるってことだな?」
「そういうこと♪」
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【第一の街:ベッカーヴェルト(パンの都)】
街に入ると甘い香りに三人とも足を止めた。
「おにぃちゃん!!パン!!いっぱい!!」
「やっべ……どれ買おう……」
「全部買わないでよ?」
ソフィアはため息をつきつつ、
すでに自分の袋を持っている。
「おや?冒険者さんかい?
もしかして……タク・シライの?」
「なんでここまで噂が!?」
「英雄の話は早いんだよ。
ほら、新作の蜜パンだ。おまけだよ。」
「おおお!!」
「食べよ食べよ!!」
キャスが腕を引っ張り、タクが笑う。
※ この街はただの平和な“パンの楽園”。
影はまだ見えない。
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【第二の街:アルト高原の景勝地】
翌日。
丘を越えると──
“空と繋がる鏡”のような湖が広がっていた。
「……すげぇ……」
タクが言葉を失う。
「お兄ちゃん!!魚!!でっかい!!」
「落ちるなよキャス!!」
「落ちたら拾ってあげるから安心しなさい♪」
ソフィアが笑う。
※ この街も平和。
ただただ綺麗で、旅らしい景色。
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【第三の街:温泉の町・レーベン】
温泉の湯気が立ちのぼり、
キャスは耳まで立てて喜んだ。
「お湯!!入りたい!!」
「キャス落ち着け……!」
「いいじゃない。
今日はのんびりしなさいよ。」
湯船で──
(男女別。ソフィア監視)
タク「……生き返る……」
キャス「お兄ちゃん……あったかい……」
ソフィア「温泉はね?魔力も回復するのよ?」
タク「知らねぇよ!!」
笑い声が響き、
三人の旅は順調に続く。
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【そして、旅の空気が変わる──
外れの街“グラウフェン”】
鉱山の労働者が多く、
少し荒んだ空気のある街。
酒場に入り、三人は聞き込みを始めた。
「よぉ英雄さん!
パンの都でも有名だったぞ!!」
「ありがとうございます……」
「この辺りで変わったこと、ない?」
ソフィアが聞く。
店主は眉を寄せ、声を潜めた。
「……あるには、ある。」
タク「どんな?」
「夜の山道だ。
黒い靄に包まれた……“人影”が出る。」
キャスが、タクの腕をぎゅっと掴む。
「お兄ちゃん……黒い……人……?」
店主はさらに続ける。
「姿は見えねぇ。
でも“剣の音”だけが聞こえるんだ。
生きてるのか死んでるのかすら分からねぇ。」
ソフィアの表情がわずかに陰る。
(……黒の人。
屍人の前兆。)
タク「他に噂は?」
「いや、それだけだ。
ただ……誰も近づきたがらねぇ。
あれは……良くねぇ。」
キャスが震える声で囁く。
「お兄ちゃん……こわい……
でも……行くの……?」
タクはキャスの頭に手を置く。
「行く。
放っておけない。」
ソフィアも静かに頷いた。
「うん。
これは……調べなきゃいけないわね。」
こうして──
三人は“黒の影”の核心へと足を踏み入れた。
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