第二部10話── 公国ラインハルトへ!英雄三人、自由を楽しむ**
【山岳を越えて──公国が見えた】
「わぁぁ……!」
キャスが思わず感嘆の声を上げた。
山岳の向こう側に広がるのは、
崖と海に囲まれた城塞国家・ラインハルト公国。
高い城壁が白く輝き、
赤い屋根の街並みが階段状に広がる。
帆船が港に並び、潮風が心地よい。
「綺麗だな……」
「でしょ? 公国は景観にこだわるのよ。」
ソフィアが胸を張る。
「お兄ちゃん、あれ!船がいっぱい!!」
「おう、あれは公国の商船だな。
……飯もうまそうだ。」
「結局そこなのね。」
ソフィアが笑う。
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【公国・謁見の間】
地竜を倒した報告は先に王国ギルドから回っており、
三人は公国でも“英雄扱い”だった。
「タク・シライ殿、ソフィア殿、キャス殿。
ようこそラインハルト公国へ。」
公国の元老院代表が微笑む。
「今回の地竜討伐、見事であった。
公国としても感謝する。」
「いえ……自分たちはできることをしただけで。」
「謙虚だな、英雄よ。」
儀礼はすぐ終わり、
彼らはあっさりと“自由行動”にされた。
——公国は形式張った国家ではない。
余計な引き止めもなく、旅人に優しい場所だった。
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【街探索!お金があるって素晴らしい】
「お兄ちゃん!!これ!見て!!
このパン、魚入ってる!!」
「おお、本当だ!うまそ……!」
「ちょっとタク、買いすぎよ?」
「ソフィアも食べるだろ?」
「食べるけど……
まぁ……食べるけど……」
キャスは魚パンにかぶりつきながら
尻尾をバタバタ振っている。
「おいしいぃぃ……公国さいこぉぉ……!」
「キャス、口にパンくずついてる。」
タクが指で取ってやる。
「ん……ありがと。
やっぱり……お兄ちゃん好き……」
「ちょ、近い近い近い。」
「はいはいイチャイチャしないの!」
ソフィアが割り込む。
「えぇ〜、お姉ちゃんも食べる?」
キャスがパンを差し出す。
「食べる。」
「食べるんだ……」
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【公国ギルド──大歓声】
ガチャ──
「地竜を倒したタク・シライだ!!」
「うおぉぉぉぉ!!本物だ!!」
「キャスちゃん!?
獣化でトドメ寸前まで追い詰めたって噂の!?」
「いやトドメは私よ?」
ソフィアが手をひらひら。
「ソフィアさん!!光魔法の女神だ!!」
「女神!?へへ、もっと言って〜♪」
ギルドの冒険者たちが一気に群がってくる。
「タク殿!!
あなたのおかげで公国は救われたも同然!!」
「え、えぇ……そんな……」
「お兄ちゃんすごいね!!」
キャスが誇らしげに胸を張る。
「いや……みんなのおかげだって……」
「謙虚かっ!!」
ギルド全員が総ツッコミ。
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【そして──Sランクの影】
ギルドの奥から、
重い足音が響いた。
冒険者たちが自然と道を開ける。
「……来たぞ。
紅の騎士団 だ。」
赤の鎧をまとった騎士たちが整然と歩く。
その中央に──
紅の騎士団 団長
グランド・クロス(31歳)
背が高く、筋肉質。
目は鋭いが、穏やかな気配もある。
団長はタクの前で立ち止まり、
静かに言った。
「…………貴殿が、タク・シライ殿か。」
「え……あ、はい。
えぇと……初めまして……」
グランドは微かに微笑む。
「礼を言わせてほしい。
地竜は我々が討伐予定だった。
だが任務の都合で遅れていた。」
「そうだったんですか……」
「その間に貴殿らが倒してくれた。
公国騎士団として、感謝する。」
タクが緊張して固まる一方で──
「ねぇねぇ団長さん?」
ソフィアが指を立てる。
「ん?」
「謝礼金の話はどうなるのかしら?
ねぇ、ねぇ?」
「ソフィアお前ほんとに金の話が好きだな!!」
「当然でしょ!猶予なしよ!!」
ソフィアは胸を張る。
グランドは少し吹き出した。
「ふふ……面白い仲間がいるな、タク・シライ殿。」
「…………いや……本当に……」
その横でキャスが小声で囁く。
「ねぇお兄ちゃん……
あの団長さん……強い……“匂い”がする……」
「わかるか?」
「うん……あの人、たぶん……
地竜より強い……」
「マジかよ。」
タクは背筋を正す。
紅の騎士団団長グランド・クロス。
この出会いは“後の旅”に大きな意味を持つことになる──
……だが今はまだ何も知らない。
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【そして──楽しむだけ】
「タク。キャス。
今日はギルドの酒場でご馳走するわよ!!」
「マジか!?珍しいなお前が奢るなんて!」
「もちろんギルドの“英雄無料券”でね?」
「アンタが払うんじゃないのかよ!!」
「タク兄ちゃん、飲も飲も!!」
「お前まで言うか!!」
ギルド酒場には
三人の笑い声と
冒険者たちの讃える声が響いた。
こうして――
**公国での“楽しい一日”が終わり、
ここから物語は次の段階へ進んでいく。**
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