第二部8話── 地竜の巣へ。約束の前夜
【山岳地帯・手前の崖上】
翌朝。
三人はキャスの案内で、地竜が潜む山岳地帯へと向かっていた。
冷たい風が吹き抜ける。
「この先が……地竜の縄張りなの……」
キャスの声は震えていたが、
昨日よりずっと“前を見ている”瞳だった。
タクはその肩に手を置く。
「キャス。」
「……うん?」
「なぁ──
キャス? お前、お兄ちゃんを倒したやつ……
やっつけたくないか?」
キャスは目を見開き、
胸の奥に押し込んでいた感情が溢れそうになる。
「……やっつけたい……
本当は……すごく……!」
「だよな。」
タクは真剣な表情で言う。
「なら、
お兄ちゃんと一緒に倒そう。
俺が……全部守るから。」
キャスの目に涙が滲む。
「……うん……!
倒す……!
お兄ちゃんと倒す……!!」
◆ ◆ ◆
【キャスの覚悟】
だがタクは続ける。
「ただし──復讐だけじゃ勝てねえ。
地竜は強い。
でも弱点もあるはずだ。
隙を見つけたら、一矢報いるんだ。
その瞬間は俺が合図する。」
「……わかった!
お兄ちゃんの言うこと、全部聞く!」
握りしめた拳が震えている。
恐怖と、怒りと、希望が混ざった震え。
ソフィアが近づき、
キャスの頭をふわっと撫でる。
「キャス、かっこいいじゃん♪
私がちゃんと補助してあげるからね?」
「うん……お姉ちゃん……ありがとう……!」
◆ ◆ ◆
【ソフィアの軽口】
そしてソフィアがタクの肩を肘で小突く。
「ねぇタク?
私にも一つだけ約束して?」
「なんだよ?」
「地竜討伐したら──
懸賞金、私にも頂戴ねぇ?」
「お前……また金かよ……!」
キャスがくすっと笑い、
「ふふっ……
はーい、お姉ちゃん……」
「ほらタク、聞いたでしょ?
キャスも“お姉ちゃん”って呼んでくれるし♪
懸賞金よろしくね?」
「誰が聞いたんだよ!?
……くそ、しょうがねぇな……!」
「いい返事♡」
◆ ◆ ◆
【地鳴り】
その瞬間──
ゴゴゴゴゴォオオオ……ッ!!!!
大地が揺れ、鳥たちが一斉に飛び立つ。
山の奥から、
石を砕くような低い轟音が響いた。
「……来るぞ。」
タクは呼吸を整え、
足元に“雷の理”を集中させる。
キャスは短剣を握りしめ、
獣のような低い呼吸を始めた。
ソフィアは袖をめくり、
光風の魔法陣を手首に纏わせる。
「三人で行くよ。
今日から私たちは──
三人でひとつの隊 だから。」
「うん!!」
「任せろ。」
大地の裂け目から、
巨大な影が姿を現す。
地竜。
背には岩。
その一歩ごとに大地が響き、
空気が重くなる。
タクは二人を振り返る。
「行くぞ……!!」
「はいっ!!」
「了解!!」
こうして──
地竜戦が、ついに始まる。
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