第二部5話── 森の只中、雑魚とは言え数が多い!**
【公国へ向かう街道横の深い森】
王国を発って二日。
公国へ抜ける街道の端には、
獣道のような細い道が続いていた。
「この先の森を抜ければ、公国の境よ。」
「思ったより暗いな……」
「魔物も多いしね。気をつけて。」
ソフィアはローブの裾を軽く押さえながら進む。
だが次の瞬間──
ガサガサガサッッ!!
木の上、茂み、地面。
あらゆる方向から魔物の気配が湧き上がった。
「うわっ、多くね!?」
「うん、多いねぇ……っと来るわよ、タク!」
黒い影が木陰から飛び出す。
犬のようで、猿のようで、
口から毒液を垂らす魔物たち──
“腐れ猿犬” の群れだった。
◆ ◆ ◆
【戦闘開始】
「タク、右から三体!」
「任せろ! 一式──如水・水刀鋭斬!!」
タクが跳ねるように踏み込み、
水の軌跡が空を裂く。
薄く、ほとんど見えない刃が
正面の魔物をまとめて三体、音もなく切り裂いた。
シュッ……!
ガギャァッ!!
「さすがね! じゃあ私も──
光風!」
ソフィアが指を鳴らすと、
風に乗った光の矢が数十本、木々の間を駆け抜けた。
ズババババッ!!!
矢は弧を描きながら魔物を撃ち抜き、
その光だけが残像のようにキラキラと森に散った。
「お前……今のすげぇな!?
もっとなんか、こう……“どっかーん!”ってできねぇの?
大魔法使いなんだよな?」
「はぁ?すると思う?」
「いや、なんか大爆発とか――」
「しないわよ。」
「ケチだなー」
「ケチじゃない。バカなの?」
「バカって言った!?」
魔物がさらに迫る。
◆ ◆ ◆
【タクの疑問 → 世界観説明】
「でもよ、ソフィア。
お前ほど強けりゃ……もっと強い魔法撃てんだろ?」
「撃てるわよ?」
「じゃあなんで使わねぇんだよ!
“核撃魔法”とか……なんか派手なやつ!」
「タク。」
「なんだよ。」
「そんな魔法、この森で使ったら――」
「使ったら?」
「間違いなく“お尋ね者”になるわ。」
「…………は?」
ソフィアは魔物を焼き払いながら淡々と続ける。
「ただの盗賊団どころじゃないわよ?
軍、騎士団、ギルド、帝国の魔術管理局──
全員に追われることになるわ。」
「えっ……なんで?」
「“核撃魔法”は国家級魔法。
街ひとつ吹っ飛ぶの。」
「そ……そんな危険な……」
「そうよ。
雑魚退治にあんなの使ったら、
私がまずアンタを縛って連れて帰るわ。」
「お前が捕まえるのかよ!!」
「当然でしょ。
……ほら、喋ってないで手を動かして!」
「うわっ、まだ来るのかよ!?」
◆ ◆ ◆
【連携の進化】
タクは深く息を吸う。
(まずは理を読む……右斜め後ろ……!)
「ソフィア、後ろ三体!」
「任せて!」
「接近──一式、二連!!
如水・水刀二段!!」
タクの刃が二重に重なり、
迫る魔物の群れを一瞬で切り裂いた。
「タク、上! 木の上!!」
「くっ! 迅雷──空歩!!」
タクが空気を蹴って跳び、
雷撃で空中の魔物を貫く。
ズガァァッッ!!
「やるじゃん!」
「お前もな!」
「うん、私は天才だから♪」
「……自分で言うな!!」
言い合いながらも戦いは確実に終わりへ向かう。
数分後。
あたりは静寂に包まれた。
◆ ◆ ◆
【異変──気配】
「……終わったか?」
「終わったね。
でも……」
ソフィアが眉を寄せた。
「タク、感じない?」
「……何か、奥に……」
タクは“理”で風を読む。
森の奥の奥。
腐った血の匂い。
小さな呼吸と、苦しそうな心臓のリズム。
「誰か──倒れてる?」
「行こ!」
二人は森の奥へ駆けた。
木々の間で――
血まみれで倒れている、
猫耳の少女を見つけた。
胸が上下し、呼吸は浅い。
背中には深い裂傷。
牙の跡。
爪の跡。
「ソフィア!!」
「わかってる! 今すぐ治療する!!」
こうして――
キャスとの運命の出会いが訪れる。
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