第二部2話── タク・シライ、王城へ招かれる**
城下町は朝から騒がしかった。
双頭の大蛇討伐の噂が一気に広まり、
市場の人々は半信半疑ながらも興奮していた。
「本当に倒したのかよ?」
「いや〜Bランクすら壊滅したんだぞ?」
「でもギルドが正式に認めたって話だ!」
「なら王城に呼ばれるのも当然か!」
タクは聞こえてくる声に、
背中がむず痒くなりながら歩いていた。
「緊張してる?」
横を歩くソフィアが、
にやにやしながら突っついてくる。
「してるわ!だって呼び出し理由が“英雄待遇”なんだぞ……」
「へぇ〜?英雄なんだ?
じゃあさ、帰ったら私にもなんか奢ってくれない?」
「……お前なぁ!?」
「だって懸賞金半分こだし?」
「それまだ根に持ってんのかよ……」
◆ ◆ ◆
【焚き火のように暖かい国──シュパイン王国】
シュパイン王国は、
大陸でも珍しい農業と漁業の両方に恵まれた国。
肥えた大地では麦・野菜・果物がよく育ち、
西の海からは豊富な海産物が届く。
そのおかげで、
国民はいつもよく食べ、よく笑い、よく働く。
王城へ続く大通りは
パンの香りと焼き魚の匂いで満ちており、
すでに昼が近いにも関わらず露店が賑わっていた。
「うまそ……」
「寄り道ダメー。ほら行くよ」
「ソフィア……お前の方が寄り道したくないか?」
「当たり前でしょ。魚が美味しい国なんだから!」
(こいつ……本当にエルフか?)
◆ ◆ ◆
【王城──極悪面の好人物】
大扉が開かれた。
その先にいたのは──
豪華絢爛の王座にどっしりと座る、巨大な男だった。
太い首。
太い腕。
太い胴。
指には宝石がこれでもかと並び、
王冠は目が痛いほど金と宝石で飾られている。
(おいおい……
完全に悪徳王の風貌じゃねーか……)
ギルド職員が叫ぶ。
「シュパイン王国国王、
アウグスト・シュパイン陛下である!!」
「うむっ!」
王は腹の底から響く声でタクを見下ろす。
「そなたが──タク・シライか!」
「……っ!」
タクは緊張のあまり背筋が凍る。
(やっべぇ……怒ってる?
なんか俺なにかしたっけ……?)
王がゆっくりと立ち上がる。
巨大な腹が揺れる。
「……礼を言わせてくれ!!」
「え?」
次の瞬間。
ドガァッ!!
王は階段を駆け下り、
大地が揺れるほどの勢いでタクの肩を抱いた。
「よくやったぁぁぁぁ!!
よくぞ双頭の大蛇を倒してくれた!!!
あれには我も手を焼いておったのだ!!!」
(近い近い近い!?
重い重い重い!!
汗くさい!!)
あまりの威力にタクがよろめくと、
ソフィアは後ろで笑いをこらえていた。
「ふふ……あんた、愛されてんじゃん」
「笑ってる場合か……!」
王は握力そのままに、タクの左右の肩をガッと掴む。
「タク・シライよ!!
そなたは我が国の恩人である!!
望む褒美を申せ!!
金でも地位でも屋敷でも、何でもくれてやる!!」
「なっ……!?
いや、その……そんな……」
突然の大絶賛にタクは困惑してしまう。
王は続ける。
「そなたの名はすでに国中に響き渡っておる。
だが、“たくみ しらいし”という名は聞きづらい!」
「そこ!?そこなんですか!?」
「ソフィア殿の提案により──
そなたは今日より “タク・シライ” とする!!」
(完全にソフィアのせいだぁぁぁ)
ソフィアは満面の笑み。
「良い名前でしょ?気に入ると思ってた」
「勝手に決めるなぁ!!」
王は大笑いした。
「はっはっは!
そなたら、仲が良いな!」
(いや仲良くねぇよ!?)




