第60話── エルフの少女・ソフィア**
意識の底が揺れた。
黒い闇の中に、突然――
「うはぁ〜勝ったんだ!すっご〜い!!」
やけに明るい声が落ちてきた。
(……ん?)
まぶたを開けると、
そこには長い金髪の少女が立っていた。
尖った耳。
エメラルド色の瞳。
エルフだ。
「いやぁ〜、マジ死ぬかと思ったよ? 私がね?」
少女は地面に転がる双頭大蛇の残骸をつつきながら笑った。
「私も狙ってたんだけどさ〜、
これ無理だわって思ってね?
そしたらあんたが突っ込んでいくから、
“あぁ〜また犠牲者が〜!”って思ってたのよ」
(……クソ……元気だな、この姉ちゃん……)
◆ ◆ ◆
“助けてほしい?”
少女がこちらを覗き込んだ。
「で、タク?」
「……誰……?」
「ソフィア。エルフ。あなたを見てた人。
で、聞くけど――」
ソフィアは口元をにやりと上げる。
「お姉さんに、助けてもらったり……して欲しい?」
拓海の胸がズキッと痛む。
視線を下げると、自分の左足が……ない。
「……お願いします……」
「ふ〜ん?」
ソフィアはしゃがみ込み、耳元で囁く。
「じゃあさ――
“助けてください、お姉様” って、言ってみてくれる?」
「…………」
拓海は唇を震わせて言った。
「……た、助けてください……
お、お姉様……」
ソフィアの目が輝いた。
「いいわよ♡」
◆ ◆ ◆
治療開始
「さて。生命維持魔法っと……」
ソフィアの手が光を帯び、拓海の全身に暖かい感覚が流れ込む。
「あ、赤い頭だったね。足、あっちだわ。取ってくる〜!」
ソフィアは倒れた大蛇の赤い首の近くに転がっている「足」を掴んで戻ってきた。
「はい、あったよー。じゃあ……こうして!」
「部位再生!!」
眩い光が走り、千切れた足と本体の断面が結び合わされる。
「ねぇ?生きてる? ……あれ?
おかしいな? つんつん……」
「ギャァァァァァァァ!!!!」
「あ、生きてる♡」
ソフィアは楽しそうに笑いながら、さらに魔法を重ねた。
「身体蘇生!」
「臓器再生!」
「生命再活性!」
光が体内に染み渡り、
拓海の呼吸が安定し、
脈が整っていく。
「……は……っ……」
拓海はゆっくり身体を動かして、自分の足を見る。
「あ……動く……?」
「うん、動くよ?
私の魔法は大陸トップクラスだからね〜?
“命の調律師”のソフィア様に感謝しなさい?」
(……なんなんだこの人……
強いのか、ふざけてるのか……)
◆ ◆ ◆
会話シーン
ソフィアは拓海の隣に座り、指で地面をトントン叩いた。
「それにしても……すごかったよ、タク。
双頭の大蛇を たった一人で 倒すなんてさ」
「……でも、片足……」
「うん、飛んでったねぇ〜!」
(お前が言うな)
拓海はため息をつく。
「……ありがとう。
本当に……助かった……」
「んふふ、もっと言って?」
「……え?」
「助けてくれて、ありがとうございますお姉様、って♪
ほら、言ってみ?」
「……か、勘弁して……」
「ダメ〜♡」
ソフィアは無邪気に笑い、
拓海の胸にぽすっと拳を当てた。
「ねぇタク。
あんた、ここから“化ける”よ。
私が見たんだから間違いない」
その声は不思議と温かかった。
「だから――」
ソフィアは手を差し伸べた。
「これからしばらく、私が面倒みてあげる」
「……え?」
「嫌なの?」
「いや……その……」
「ふふん♡
じゃあ決まり!」
◆ ◆ ◆
新たな仲間との出会い
ソフィアは森の奥へ歩きながら言った。
「さ、行くよ。
あんたをここに置いておいたら、
また死ぬもの」
「……お前に言われたくないんだけど……」
「ん?
なんか言ったぁ? タク♡」
「……いえ……何も……」
「よろしい♡」
双頭の大蛇が眠る森を背に、
拓海とソフィアは歩き出した。
ここから、新しい物語が始まる。
第一部 完
これで、第一部の完結です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
このまま、第二部となります。
引き続きよろしくお願いします。




