第58話── 片首を落とし、片足を失い、それでも立つ**
大蛇の二つの頭が交差し、
**あの“硬直の線”**が現れた。
(今だ……!!
大水一閃──全部を込める!!)
拓海は構え、
足元から全身へ気を巡らせる。
ザァァァッ……!!
大河が氾濫するような濁流の圧が、
刀に収束した。
「大水一閃ッッ──!!!!」
ドオォォォォォォッ!!!!
世界が割れた。
濁流が大蛇の胴へ叩き込まれる。
次の瞬間──
ズバァァァァァ!!!!
黒い頭が
“大地ごと”切り落とされた。
森に血飛沫が散り、
巨体が崩れ落ちる。
「……っ……はぁ……はぁ……!!
やった……落とした……!!」
だが──
勝利の瞬間は、一秒も持たなかった。
◆ ◆ ◆
反撃──赤い頭が一瞬で距離を詰める
赤い頭の叫びが森を震わせた。
ギャアアアアアアッッ!!!!
(まずい……!!
隙が……!!)
大水一閃の最大の欠点──
使用後の硬直。
赤い頭はその隙を見逃さなかった。
飛びかかってくる。
避けられない。
もう動けない。
そして──
ガブァアアアアアッ!!!!
「──ッッッ!!!??」
拓海の視界が反転した。
赤い頭の牙が、
拓海の左足を根元から噛み千切ったのだ。
ブシャァアアア……!!
血が滝のように噴き出した。
「う、ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
痛みで意識が飛びそうになる。
(足が……
ない……!?
うそ……だ……だめ……死ぬ……!)
◆ ◆ ◆
気で止血──残った全気を脚へ
「……止まれ……!!
死ぬわけ……ないだろ……!!
ここで……!!」
拓海は震える手で断面を押さえ、
気を集中させた。
「止まれえええええええッッッ!!!」
ビキィィィッ……!
気の流れが乱れた血流をねじ伏せる。
断面が“焼けるように”硬直する。
止血成功。
しかし痛みは尋常じゃない。
「はぁ……はぁ……っ……!
いてぇ……ッ!!
でも……まだ……死なない……!!」
拓海は片足で立ち上がる。
視界が揺れる。
血の匂いで吐き気がする。
だが──
倒れなかった。
◆ ◆ ◆
大蛇もまた片首を失い、狂ったように暴れる
大蛇は黒い頭を失い、
赤い頭だけが残っていた。
だがその動きは──
単調だった。
もはや、“単一の蛇”。
(一本の首じゃ……
交差攻撃はできない……
軌道も……読める……!!)
拓海は刀を構えた。
片足で立ちながら、
血に濡れた大地をにらむ。
(来いよ……
まだ終わってねぇ……!!)
「さぁ──来いよッ!!!」
双頭の大蛇(片頭)は、
狂ったように拓海へ突っ込んできた。




