第57話── “わずかな硬直”。勝機が線として見えた**
双頭の大蛇は、
もう完全に拓海を“脅威”として認識していた。
だからこそ──
次の瞬間。
ズバアァァァッ!!!
黒い頭が、
地を抉りながら一直線に突っ込んできた。
赤い頭が、
腐敗息を溜めながら反対側から迫る。
(くる……!!
本気の連撃!!)
拓海の身体は
反射で動くしかなかった。
◆ ◆ ◆
避け続ける──しかし限界は近い
迅雷空歩で滑るようにかわす。
木の陰へ跳び、
地面を蹴り、
わずかに浮いて方向転換。
(無理だ……!!
避け続けたら……
そのうち捕まる……!!)
腕が痺れる。
脇腹はまだ痛む。
呼吸が荒い。
双頭の大蛇の動きは
回を追うごとに加速していく。
(……限界が……来る……!!)
絶望が脳裏をかすめた、その瞬間──
◆ ◆ ◆
理が“音”を見せる
世界が、
ほんの一瞬だけ“静”になった。
その中で──
理が線を見せた。
「……え?」
大蛇の身体。
巨大な胴体。
二つの頭。
拓海の理は、その動きの中心に
“円”ではなく一本の軸を見つけた。
(これ……
ただの蛇じゃない……)
双頭の大蛇は、
攻撃のたびに
二つの頭を交差させるように動いている。
その交差の瞬間──
わずかな“軸の硬直”が生じる。
(……止まる……?)
たった0.3秒。
いや、もっと短い。
でも──そこだけは。
“動きが死ぬ”瞬間。
◆ ◆ ◆
硬直──唯一の突破点
黒い頭が突進し、
赤い頭が角度を変える。
二つが交差する瞬間。
そこに──
たしかに“線”が走った。
(……あれだ……!!
ここしかない……!!)
冷汗が背中を伝う。
(静じゃ届かない。
雷でも速さが足りない。
胴体に斬撃を通すなら──)
脳裏に浮かんだのは
祖父の言葉だった。
「大水一閃はの……
大河が氾濫する瞬間、
その濁流の一撃で全てを押し流す……
静と動の“極み”じゃ」
(あれしか……ない……!!)
技の中で最も“隙が生まれる”奥義。
間違えば即死。
だけど──
この大蛇に届くのは、
あれだけだ。
◆ ◆ ◆
決意
(やるしかない……
ここで決める……!!)
拓海は刀を握り直し、
わずかな硬直の“線”を目に焼き付けた。
ここだ──!!
森が震え、
大蛇の頭が交差する。
濁流の一閃に気を集中させる。
(大水一閃……
全部の気を、全部の理を……
この一撃に!!)
死闘は、ついに核心へ向かう。




