第55話── 二段攻撃。迅雷を超える“殺意”**
双頭の大蛇は、
ただ巨大なだけの魔物ではなかった。
理解してしまった。
“速い”のではない。
速さの質が違う。
蛇特有のしなりと、異界の瘴気、
そして二つの頭が“完全に別個で狙う”という異常。
(まずい……
まずい……一瞬たりとも止まれない……!!)
◆ ◆ ◆
迅雷空歩──反応はできる。だが追いつかない。
黒い頭が低く構え、
蛇道を描く軌道で襲いかかってくる。
「迅雷空歩!!」
バシュッ!
拓海の身体が地面から半歩浮き、
滑るように横へ逃げる。
避けた──
はずだった。
ガッ!!
「……え?」
視界が揺れた。
黒い頭の尾が、
避けた先に“回り込んでいた”のだ。
(そんな……
あの速度で……
軌道を変えた……!?)
脇腹を打たれ、
身体が宙を舞う。
ドサッッ!!
「っ……ぐ……!!」
肺から空気が抜け、血の味が広がる。
(やばい……
一瞬で……死ねる……)
◆ ◆ ◆
二段攻撃──赤い頭が追い打ち
大地が震えた。
黒い頭はまだ“攻撃態勢”のまま。
その裏で──赤い頭が口を開く。
ガアァァァァ……ッ!!
腐敗息が溜まる音がする。
「まずい……!!」
身体がまだ動かない。
脇腹が痛む。
視界が霞む。
(撃たれる……!!
避けられない……!!)
◆ ◆ ◆
雷歩の“残像”でかろうじて逃げる
「……動け……動けぇ……!!」
拓海は残った気を全て脚へ集中させた。
「迅雷空歩・解放──!!」
バチッ!!
雷気が一瞬だけ脚から走り、
身体が残像のように横へ飛ぶ。
ギリギリで──
腐敗息が地面を焼き裂いた。
ドゴォォォォ!!!!
土が爆ぜ、木々が炭のように崩れた。
(……あと数秒遅れてたら……
消し飛んでた……)
息が荒い。
片膝をつく。
(……やばい……
まじでやばい……!!)
◆ ◆ ◆
静の技は封じられた。雷も追いつかない。
(この距離じゃ……
水の技が全く届かない……!!)
黒い鱗は刀を弾く。
赤い頭の瘴気は近づくだけで危険。
(近づけば死ぬ。
遠ざかれば殺される。)
そして一番致命的なのは──
(迅雷空歩……
これでさえ……追いつかない……!?)
◆ ◆ ◆
大蛇、本気の構え
双頭の大蛇の身体が沈む。
右と左、二つの頭が同時に拓海へ向く。
これまでで最も強烈な、
“殺すためだけの構え”。
(くる……!!
本気だ……!!)
脇腹の痛みを抱えながら、
拓海は立ち上がる。
(でも俺は逃げない!
ここで引いたら……
ガイルたちが……死んだ意味がなくなる!!)
刀を構え、足を踏みしめる。
(耐える……!!
絶対に……生き残る!!)
森の空気が裂けるように震えた。
双頭の大蛇が──飛びかかってきた。




