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第54話 ── 初撃。静の技は通じず、速度に殺される**

 双頭の大蛇が、地面すれすれの低い姿勢になった。


 それは、まるで──

“狙いを定めた弓”。


(来る──!!)


 拓海の理が鋭く反応する。


 


     ◆ ◆ ◆


速い。理が読めないほどに。


ズバァァァッ!!!


 黒い頭が、地をえぐる勢いで突き出してきた。

 まるで雷撃のような速度。


(速い!!!

 こんなの──読めない!!)


 静の構えで受ける暇はない。

 刀を構えるより速く、

本能で身体を横へ跳ばす。


バンッ!!


 さっきまで拓海がいた場所が、

蛇の牙で抉り取られた。


(受けたら死ぬ……!!

 一発で……!!)


 冷汗が背中を伝う。


 


     ◆ ◆ ◆


水刀鋭斬──通じない


 拓海は刀を引き、

身体の流れに合わせて技を放つ。


「水刀鋭斬──!」


 斬撃は滑らかな水の流れ。

 静かに、流れるように蛇の胴へ触れ──


キィン……


 火花が散るだけだった。


「……は?」


 赤い鱗に、傷一つつかない。


「双斬!!」


キィンッ!!


 同じ結果。


「三断!!」


キイン!!


 ……通らない。


(だめだ……

 静の技は……硬さに負ける……!!

 鱗が固すぎる!!)


 頭が真っ白になりかけた。


 


     ◆ ◆ ◆


隙がない。近づけない。


 大蛇がわずかに動く。


 それだけで、

 視界の中が“死”で染まる。


(隙が……ない!!

 一瞬たりとも……!!)


 黒い頭の軌道、

 赤い頭の腐敗息の準備、

 どちらも“見える”のに──


対処が追いつかない。


(これじゃ……

 動いた瞬間に殺される……!!)


 大蛇の周囲は、

“刃だらけの空間”のようだった。


 踏み込めば死ぬ。

 下がれば追いつかれる。

 止まれば噛み砕かれる。


(じゃあ……どう戦うんだよ……?)


 


     ◆ ◆ ◆


ただ一つ──迅雷空歩


 赤い頭が腐敗息を溜め始めた瞬間、

拓海は足に気を集中させた。


「くっ──

 迅雷空歩!!」


バシュッ!!


 拓海の身体が“浮く”。

 地面の摩擦を断ち切り、

 わずかに浮いた状態で一気に横へ滑る。


 腐敗息が直前を薙ぎ払う。


ゴォォォオオッ!!!


(避けた……!!

 これしか……避けられる手段がない!!)


 身体の奥が震える。


(戦えない……!!

 今の俺じゃ……

 静の技は……ただの隙になる……!!)


 初めて、理解した。


この双頭の大蛇に対抗できるのは──

“空を裂く速さ”しかない。


(大水一閃……

 使う隙なんて、ない……!

 近づけない……!)


 


     ◆ ◆ ◆


大蛇の二つの頭が拓海を狙う


 黒い頭が高速で迫る。


 その裏で、赤い頭が口を開く。


 二つの死が迫る。


(避けろ……!!

 生きろ……!!

 ここで死んだら──

 ガイルたちの想いが……終わる!!)


 拓海は雷光のように走り出した。


生き残るために。

 戦うために。

 そして──仲間のために。


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