第50話── 回想:Bランク十八名、双頭の大蛇との激闘**
森の奥。
陽の光すら届かない深闇の中で──
戦いは、静かに始まった。
◆ ◆ ◆
【回想──三つのBランクチーム、総勢18名】
盾を構えた戦士ドランが叫ぶ。
「構えろ!
あいつが……双頭の大蛇だ!!」
泥を砕くような重低音。
森が震え、地面が波打つ。
茂みが“破裂”し、
二つの巨大な頭が揺れながら姿を現した。
一つは黒。
一つは赤。
それぞれが独立した生気を持っていた。
「行くぞ……全員、隊列を崩すな!!」
総勢十八名のBランク冒険者たちが
武器を構え、陣形を組む。
◆ ◆ ◆
【激闘──しかし、一撃差】
「突撃ッ!!」
三つのパーティが一斉に斬りかかる。
矢が放たれ、
炎の魔法が炸裂し、
槍が鱗に突き立つ……が──
キィン……!
火花は散るのに、
双頭の大蛇の“皮膚”には……傷がない。
「な……んだと……!?」
「うそだろ……俺の槍が、通らない!?」
その瞬間、赤い頭が大きく口を開いた。
「全員、散開し──」
――ゴオオオオッ!!!!
炎でも毒でもない。
腐敗と死の匂いをまとった“瘴気の吐息”。
前衛五名が、その一撃で吹き飛んだ。
「ぐあああっ!!」
「う、動け……ない……っ!」
肌が瞬時に黒ずみ、
血管が浮き、
意識が落ちていく。
(なんだ……
なんだこれは……!!)
◆ ◆ ◆
【盾持ちの男──最後の防壁】
ソウロウタイの盾戦士、グラーフが叫ぶ。
「後退しろ!!
俺が行く!!」
巨大な盾を構え、
黒い頭の噛みつきを正面から受け止める。
ガァンッ!!!!
「ぐぉっ……!
まだだ……まだ……っ!!」
盾が軋む。
腕が折れそうに震える。
「お前ら……
逃げろ!!
この森だけは……越えさせねぇ……!!」
仲間のために立ち続けたその一瞬が──
ズシャッ……!!
終わりだった。
黒い頭が彼を薙ぎ払い、
グラーフの大盾もろとも吹き飛ばした。
「グラーフ!!」
「嘘だろ……
あのグラーフが……!」
彼はもう動かなかった。
◆ ◆ ◆
【残酷な現実──18人 → 生存6人】
魔法使いが血を吐き、
弓使いが腕を落とし、
前衛が一人、また一人と倒れていく。
「撤退だ!!
これ以上は……無理だ!!」
「誰か……誰か助けてくれ……!!」
森は叫びを飲み込み、
何事もなかったかのように静まり返った。
気がつけば──
18名いたはずの者たちは、6名しか動いていなかった。
その6名の中に、
ガイルとニーナもいた。
二人とも重傷。
血を流しながらも、互いを支え、森の出口へ向かった。
「ガイル……
もう無理……」
「いいから……歩け……
生きて……帰るんだ……」
ガイルの足跡はふらつき、
途中で倒れ──
それでもニーナに背を押されて、
なんとか街道までたどり着いた。
そこでようやく──
荷馬車の一団に拾われたのだった。




