第48話── 扉へ疾走。間に合わなかった影
道場に飛び込んだ瞬間、
拓海の身体は迷いなく奥の部屋へ向かっていた。
(扉だ……
もう迷う理由なんて……一つもない!!)
床板が軋む。
胸が焼けるほど熱い。
ドンッ!!
扉の前に立ち、深く息を吸う。
もう躊躇なんて欠片もなかった。
「……行く!!」
一歩踏み込むと──
世界が静かに裏返り、異世界の空気が全身を包んだ。
◆ ◆ ◆
【城塞都市──異常なざわめき】
異世界の空気は冷たく、刺すように重かった。
いつもは活気ある市場も、
今日だけは違った。
「……おい、聞いたか?」
「Aランク冒険者もやられたって話だぞ」
「うそだろ!? あの連中が……!?」
「マジだよ。森の奥で全滅……
Bランクのパーティなんて、ほぼ壊滅。
騎士団も……半分以上戻ってこねぇってさ」
「これ……
そのうちこの城塞都市にも来るんじゃねぇか……?」
不安と怒号と悲鳴が混じった声が、
街の空気を揺らしていた。
(やっぱり……
嫌な気配が……強くなってる……)
肌がピリピリする。
理が警告する。
(でも……俺には……
行く場所が……決まってる)
◆ ◆ ◆
ソウロウタイの宿舎へ
拓海はすぐさま城門横の路地へ走り、
蒼狼隊の宿舎へ向かった。
(ガイル……
ニーナ……
みんな……!!
今行くから……!!)
息を切らせながら建物の前に立つ。
そして、扉を開けた──
誰も……いない。
テーブルには食べかけのパン。
急いで装備を整えた跡。
椅子は倒れたまま。
そして──
隊長ガイルのメモだけが置かれていた。
「拓海へ
約束の十日が来た。
待つつもりだったが……
奥が崩れ始めた。
行かなきゃならねぇ。
俺たちが止める。
無理に来るな。
お前はまだ若い。
命を粗末にするな。
──ガイル」
拓海はしばらく動けなかった。
「……っ……そっか……」
胸の奥が、ぐしゃりと音を立ててつぶれる。
(間に……
合わなかった……)
乾いた息が漏れた。
「ごめん……
ガイル……
みんな……」
扉を握る手が震える。
宿舎に残された温もりが、
逆に心をえぐった。
(待っててほしかった……
けど……
こんな状況じゃ……
みんなも……行くしかなかったんだ……)
悔しさが、喉に刺さる。
(でも……
俺は追いかける……
命を粗末にするなって言われても……
それでも──!!)
立ち上がり、拳を握った。
「今行く……
絶対に追いつく……!!」
蒼狼隊が向かった“森の奥”──
そこには、もう誰も戻れないと言われる“何か”が待っていた。




