第45話── 大水一閃、完全成功。そして倒れゆく身体**
最後の夜は、とうとう深夜を過ぎていた。
雪がちらつく庭で、拓海はふらつきながら立ち上がる。
(もう……時間がない……
明日は……戻らなきゃ……
どうしても……今夜中に……!!)
刀を握る手が震える。
気力も体力も限界に近い。
それでも──
拓海は刀を構えた。
(やる……!!)
◆ ◆ ◆
濁流が“刀そのもの”になる瞬間
拓海は目を閉じ、
胸の奥に生まれた“濁流”を呼び起こす。
心臓の音、
気のうねり、
理の振動。
それらが一つの巨大な渦になり、
身体の中心へ集まっていく。
ド……ド……ド……ッ
(いけ……
この濁流を……そのまま……刃へ……!!)
拓海は渦を両腕へ流し、刀へ落とし込む。
ゴ……ゴゴゴゴ……ッ!!!
庭の空気が押しのけられ、
木々が大きく揺れた。
(これだ……!!
押し流す力そのもの……!)
刃先から、
水でも雷でもない“奔流”の気が立ち昇った。
大水一閃。
(行く……ッ!!)
◆ ◆ ◆
大水一閃──発動
拓海は一歩踏み込み、
刀を横一文字に振り抜いた。
――ッッッッッ!!!!
風が爆ぜた。
庭の空気が左から右へ“押し流され”、
雪が大きな弧を描いて吹き飛ぶ。
庭に置かれた丸太や切り株が、
音もなく真っ二つに裂けた。
その裂け目は──
濁流にえぐられたように滑らかだった。
(……できた……
できた……!!
大水一閃……!!)
胸が熱くなり、
視界がじんわりと滲んでいく。
「よっしゃぁぁぁ……!!」
声にならないほどの達成感。
だが──。
◆ ◆ ◆
“大河の反動”が、身体を襲う
刀を納めようとした瞬間、
膝がガクンと崩れた。
「っ……!!?」
呼吸が乱れる。
視界が霞む。
(う……そ……
体が……動か……)
大水一閃は“動の極致”。
内部の濁流を一気に刃へ解放する技。
成功の代償として──
全身の気が一瞬で空になっていた。
「はぁ……っ……
くそ……こんな時に……!」
立ち上がろうとしても、
足は震え、体は地面へ戻る。
(戻らないと……
明日、ソウロウタイのみんなが……
待ってるのに……!!)
手を伸ばす。
でも、雪の上へ落ちる。
寒さが、ゆっくり体を奪っていく。
(眠るな……
寝たら……起きれねぇ……)
意識が落ちていく。
(……ガイル……
みんな……)
最後に、星のない夜空が見えた。
(……もう少し……
修行したかったな……)
そのまま──拓海の意識は闇に沈んだ。




