第44話── 最後の夜、刃に宿る“大河の影”**
約束の日まで、残り──一日。
白石家の庭は、冬の夜気が張りつめていた。
吐く息が白く漂う中、拓海は刀を握りしめていた。
(今日で……決める……
これが最後の夜だ……!!)
雷奥義は実戦級。
水の奥義も三断まで完成。
残すは──大水一閃。
(静も動も……
全部出し切って……
たどり着くしかない……!)
◆ ◆ ◆
“濁流”は外にはない──拓海の中にある
拓海は目を閉じ、刀を膝に置いた。
(川でも雨でも……外側のイメージじゃ作れない……
これは“俺自身の流れ”なんだ)
胸、腹、肩、足。
全身をめぐる気の循環に意識を集中させる。
ゆっくりと、それが“渦”へと変わっていく。
ド……ド……ド……
鼓動と気と理が、一本の太い流れになり──
(……来る……!!)
身体の中心に、大きな濁流が巻き起こった。
(外ではなく……内の流れ……
これが……大水一閃の核……!!)
◆ ◆ ◆
刃へ流し込む──“大河の影”が現れる
「……はぁぁぁっ……!!」
拓海は刀を構え、
内側の濁流をゆっくりと刃へ流し込む。
線にしない。
軌道を描かない。
ただ、“押し流す力”だけを刃に重ねる。
ゴォォォォ……ッ……!!
庭の空気が震えた。
木々が後ろへしなる。
砂利が少し転がる。
(押し流してる……
押してる……!)
刃先がわずかに光を帯び、
水でも雷でもない“第三の気”が生まれた。
(いける……!!
大水一閃の……“形”……!!)
しかし──
ガンッッ!!!
「っぐ……!!」
刃が空気に弾かれ、
拓海は地面に片膝をついた。
呼吸が荒い。
腕が痺れる。
(まだ……まだ足りない……!
この流れ……大きすぎて……
刀に乗せきれてない……!!)
◆ ◆ ◆
それでも──影ができた
拓海は倒れ込んだまま、
雪の混じる冷たい空気を吸い込んだ。
(でも……
“影”はできた……
押し流す力が……確かに刀に乗った……)
これは間違いなく前進。
如水流斬や三断とは全く別次元。
(あとは……
この濁流を……
たった“一閃”に収めるだけ……!!)
胸の奥で、何かが熱く燃える。
(静も動も……
線も流れも……
全部を……この一刀に……!!)
◆ ◆ ◆
最後の夜は、まだ終わらない
立ち上がり、拓海は刀を握り直す。
「……まだ終わらない……
まだ……できる……!!」
夜空に雪が舞い始めた。
その中で、拓海の目は
炎のように強く光っていた。




