第39話 雷刃震撃、刃に宿る雷
異世界の夜は静かだった。
蒼狼隊との戦いから戻り、
修行に明け暮れる日も今日で三日目。
拓海は庭の中央で刀を抜き、
胸の奥にある“焦り”を押し殺していた。
(間に合うのか……
雷刃震撃も、水の最後の奥義も……)
森の奥には、
あの魔紋獣より格上の“何か”がいる。
(みんな……まだ動けない……
俺が戻らなきゃ……)
だから、立ち止まる余裕なんて一秒もない。
◆ ◆ ◆
雷刃震撃──構造は単純、成功は至難
(この技は……構造は単純だ)
雷刃震撃の奥義書には
たった三行しか書かれていなかった。
「刃に雷を集めよ」
「刃先へ圧縮せよ」
「触れた瞬間に放て」
(ただこれだけ。
だけど……一歩でも間違うと……)
刀が焼ける。
自分の腕が焦げる。
最悪、感電して気を失う。
(簡単に見えて……
“正確さ”が要求される技だ……!!)
拓海は深く息を吐き、刀を構えた。
足裏から雷の気を引き上げ、
腕、肘、手首へと通していく。
ジ……ジジッ……!
微電流が刀全体に広がる。
(ここから……
刀身全体に散ってる電気を──
一点に“収束”する……)
刀は雷を纏わせるのではない。
雷を“刃先へ圧縮”するのだ。
(集中……
まっすぐ……
刃の“先端”だけに……)
刀身の雷が、
ジジジ……と端へ集まり始めた。
刃先が青白く光る。
(いける……!?)
その瞬間──
バチィッ!!!
「うわっ!!?」
衝撃で刀を落とした。
手がしびれる。
指が動かない。
(……制御……難しすぎる……
この出力じゃ腕ごと吹き飛ぶ……)
だが、諦める時間はない。
(あと数日……
いや……
もっと短いかもしれない)
森は待ってくれない。
魔紋獣たちも、蒼狼隊も。
◆ ◆ ◆
再挑戦──雷を“細く”、そして“深く”
(雷は強くするんじゃない……
“細くする”んだ……)
雷の気を糸のように細くし、
刃の“中心”だけに通す。
一本の神経を
刀の中に通すような感覚。
ジリ……ジリ……
刃先が再び光を帯びていく。
(いけ……
いけ……!!)
ターゲットに選んだ木の切り株へ向かって
刀をそっと触れさせた。
次の瞬間──
バシュッ!!!
切り株の表面が焦げ、
縦に細い裂け目が走った。
(……今の……!!
“撃った”……!
間違いなく……雷刃震撃の初撃……!!)
威力は弱い。
まだ斬れてはいない。
焦げただけだ。
でも──
(“触れた瞬間に放つ”
この感覚……掴んだ……!!)
◆ ◆ ◆
そして、迫る不安
雷刃震撃の余韻が消えると同時に、
胸の奥の不安も大きくなる。
(時間がない……
あの森の“奥”にいるあれは……
あの魔紋獣より……遥かに……)
理が、静かに警鐘を鳴らしている。
間に合うかどうかは、
拓海自身の成長次第だ。
(あと……水の一つ……
大水一閃……)
水刃三断とは質が違う、
白石家の“本物の奥義”。
(覚えたい……
絶対に覚えたい……!!)
拓海は拳を強く握った。
「……全部覚えて戻る。
必ず……!!」
雨雲の去った空に誓うように、
刀を静かに納める。
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