第38話 迅雷空歩、理と気と“世界”がつながる**
雨が上がり、庭にはまだ水気が漂っていた。
湿った空気の中、拓海は足裏の感覚を確かめながら立った。
(迅雷空歩──
ただ速いわけじゃない。
空気を纏い、圧縮し、
地面と“反発”する……)
これまで得た感覚を一つずつ整理する。
雷の摩擦。
空気の薄膜。
足裏のしびれ。
“線”の跳躍。
(全部一つに繋がってる……
けど、何かが足りない)
拓海は目を閉じ、深く息を吸った。
◆ ◆ ◆
“浮く”という核心
踏み込み。
気の集中。
皮膚から空気を取り込む。
ピリ……ッ
身体がわずかに浮く。
(やっぱり……これだ。
完全に浮くわけじゃない。
“半分だけ浮く”から……
地面との摩擦がほぼ消えるんだ)
雷の性質が、
大地とわずかに反発し、
空気が薄い膜になって支える。
(この薄膜を破らずに滑らせる……
そのためには……
“初動”を完全にコントロールしないと)
◆ ◆ ◆
空気圧縮──抵抗“ゼロ”の瞬間
拓海は手を伸ばし、
雨上がりの空気の粒に意識を合わせた。
(空気は、押せば押した分だけ、
逆向きの圧を返してくる。
でも、理があれば……
“返さない層”を作れる)
気を前方に薄く伸ばす。
ほんの数センチ先に、
透明な壁ができるような感覚。
(これが……
空気抵抗ゼロの“道”……)
足裏をその“抵抗ゼロ”の道に合わせ──
ドンッ!!
拓海の身体が滑るように前へ消えた。
(……いけた……
今のは……ほんとに……抵抗“ゼロ”だった)
風切り音が聞こえない。
足音もない。
ただ一瞬、
雨粒が横に散るだけ。
(でもまだ……不完全だな。
初動の気の流し方が雑だ)
◆ ◆ ◆
そして──地磁気
ふと、祖父の言葉が蘇る。
『雷は大地の理じゃ。
ならば大地と仲良うせい』
(大地……
地磁気……
もしかして、これも要素なんじゃ……)
拓海はしゃがみ込み、
足裏を地面へそっと置く。
呼吸ではなく、
気を脚から“下へ”流し込む。
(反発じゃない……
同調だ……!)
地面の向こう側にある“核”の脈動がわずかに響く。
地球の奥で揺らめく、遙かな息づかい。
(これ……
これをうまく利用すれば……
反発力を“借りられる”……!)
気を反転させる。
地磁気が足裏で“弾く”ように返ってきた。
バチッ……!!
「っ……!?」
思わず身体が浮いた。
(これだ……
地磁気の反発が“初動”を補助してくれる……!!)
◆ ◆ ◆
迅雷空歩──“本質”の理解
(つまり……
迅雷空歩は──)
① 半浮遊状態(雷による空気薄膜)
② 空気抵抗ゼロの直線(気で作る滑走路)
③ 地磁気の反発(初動を爆発的に押し出す)
④ 理の線を読む(最短最速の移動線)
この4つを“同時に維持する”技だった。
(難しすぎる……!!
でも……できる……!!)
拓海は息を整え、刀は抜かない。
雷の技だからこそ、身体一つで挑む。
「っ……行く!!」
ドンッ!!!
空気が割れた。
庭の端まで“瞬きより速く”移動し、
わずかに地面を蹴って停止する。
(……これが……迅雷空歩の……
“完成形の入り口”……!!)
視界はぶれない。
呼吸も整っている。
何より──
線の未来予測が以前より遥かにクリアだった。
(理と気……
やっと噛み合った……!)
◆ ◆ ◆
雷雲の音が、祝福のように鳴った
遠くで雷鳴が響く。
まるで拓海の成長を祝うように、
空が静かに唸った。
(次は……雷刃震撃……
雷を“斬り”に変える……!)
刀の柄に触れる手が震える。
怖さじゃない。
期待でもない。
“やっと進める”という高揚感だった。




