第31話 街の警戒、蒼狼隊の休養。そして拓海の決意**
魔紋獣の討伐から一日。
森から戻った街は、まるで戦場に戻ったかのようだった。
◆ ◆ ◆
街は“警戒都市”へ
街の門は封鎖され、見張り台には火が灯る。
「魔紋獣……森の奥に第二個体の可能性……」
「冒険者は原則、森への立入り禁止だ!」
「ギルドは緊急態勢、治療院は満床……!」
通りには武装した冒険者や衛兵が行き交い、
酒場は静まり返っていた。
(昨日……俺たちが倒したのは、
たった一体だけなんだ……
街が……こんなに……)
拓海は圧倒された。
◆ ◆ ◆
蒼狼隊は休養──それぞれの傷
ガイルは大剣の代わりに杖をつき、
リーナは腕に包帯、
ヴォルクはまだ脇腹の治療を受けていた。
「しばらくは……動けねぇな」
ヴォルクが苦笑する。
「ガイルさんの大剣も……あの状態じゃ……」
リーナが申し訳なさそうに呟く。
ガイルは拓海を見て言った。
「……拓海。
次、魔紋獣がまた出た時……
俺たちは前ほど動けねぇ。」
(……確かに……
あの戦いで……ほとんどの力を失った……)
ガイルは続けた。
「今のままじゃ……
お前も巻き添えで死ぬ。」
「……はい。」
「だからこそ、だ。」
ガイルは真っ直ぐな目で拓海を見る。
「お前は……
もっと強くなれ。
命を守るために、生き残るために。」
(もっと……
もっと強く……)
胸の奥が熱くなる。
◆ ◆ ◆
拓海の胸に芽生えた“ある感覚”
蒼狼隊の宿を出て、
夜の街を歩く拓海の視界に“線”が走った。
(……?)
理の線ではない。
もっと……柔らかく、静かな波。
(これ……扉の……呼び声……?)
胸の奥で、
白石家にある“扉”がゆっくりと共鳴する。
森の魔紋獣の強さ、
街の警戒状態、
蒼狼隊の怪我。
(このままじゃ……
また次に会った時、死ぬ……)
線はひとつの答えを示している。
──帰れ。
現実世界へ。
修行を積め。
(……そうか……)
◆ ◆ ◆
白石家へ戻る決意
宿に戻ると、ガイルが座っていた。
「……戻るんだな、拓海。」
「はい。
一度……家に戻って、鍛え直したいです。」
「そうするべきだ。
お前の力は“理”。
俺たちには扱えねぇ。」
ガイルは笑う。
「でも……帰ってこいよ。
お前がいないと……少し寂しいからな。」
「えっ……あ、はい!」
リーナが頬を赤くして手を振る。
「また……一緒に冒険しましょう。
拓海さん」
ヴォルクは豪快に笑った。
「次は俺より強くなってこい!
その方が、守り甲斐がある!」
(みんな……)
拓海は胸が熱くなった。
◆ ◆ ◆
扉が静かに待っていた
拓海が街外れまで歩き、
家の玄関へ通じる“見えない道”に足を踏み入れる。
(帰る……
じいちゃんの家へ……)
扉は静かに立っていた。
ゆらぎも音もない。
ただ──
“戻ってこい”
と優しく誘うように存在している。
「ただいま……」
拓海は息を吸い、
扉をくぐった。
◆ ◆ ◆
現実世界──白石家
冬の風と、畳の匂い。
(帰ってきた……
ここで……鍛える……!)
祖父の道場へ向かうと、
竹刀、木刀、日本刀……
そして祖父が残した修行記録。
(そうだ……
ここから……全部やり直す。)
拓海の胸に、
覚悟が固まった。
“魔紋獣に勝つための修行篇”が、今始まる。




