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第27話 切り札と奥義、腐敗息の絶望

 魔紋獣の胸に生まれた“黒い眼”が開ききる。


ギィィィィ……!!


 森が震え、

木の葉がざわざわと逆巻いた。


(やば……

 これ……今までの魔獣とは……違う……!!)


「全員構えろ!!」

ガイルが吠える。



ガイルの切り札──“山断ちの構え”


 ガイルが大剣を逆手に持ち直した。


「拓海、見とけ。

 これは俺が最後の手段にする時の構えだ」


 大地が震えるほどの“気”がガイルに集まる。


(……すごい……

 空気の濃さが違う……

 これが……Bランクの本気……!!)


 ガイルは低く踏み込み──


“山断ち(やまだち)”


 地面に凄まじい亀裂が走った。


「おおおおォォッッ!!」


ドガァァァン!!!


 大剣が魔紋獣の右肩を吹き飛ばすほどの衝撃を叩き込む。


だが──


「……足りねぇのかよ……」


 魔紋獣は膝をついただけで、まだ立ち上がる。


(ガイルさんの“切り札”が……効かない!?)



リーナの火炎矢──炎のエルフ魔法


「ガイルさん、下がってください!!

 この距離なら……やれます!!」


 リーナが弓に“火の魔法”を纏わせた。


エルフ魔法──

火矢かえん


「燃え尽きなさい!!」


バシュッ!!!

 バシュシュゥゥゥ!!!


 燃え盛る矢が三本、

魔紋獣の胸と首に突き刺さった。


ギィアアアアアア!!!


 黒い紋様が焦げ、

腐敗した皮膚が焼き裂ける。


「よし……!

 効いてる!!」

拓海が叫ぶ。


「まだ!!」


 リーナは次の矢にさらに火力を乗せる。


火炎強射かえんきょうしゃ”!!


ドォン!!!


 火柱が魔紋獣を包む。


(すげ……

 リーナさん、こんな火力出せるの!?)


 


     ◆ ◆ ◆


ヴォルクの突進──獣人の本能


「今だッッ!!」


 ヴォルクが盾を構え、

獣人の脚力で一気に距離を詰める。


バギィィィン!!!


 盾が魔紋獣の胸に直撃し、

動きを一瞬止めた。


「ガイル!!決めろ!!!」


「いくぞッッ!!」


ガイルの大剣が再び光る。


(みんな……本気だ……

 俺も……!!俺だって……!!)


 


     ◆ ◆ ◆


拓海、奥義覚醒──“如水流奥義・流刃”


 拓海の視界に強烈な“線”が走る。


(……来た……!!

 これ……今までの流れじゃない……

 もっと深い……“流れ”だ……!!)


 気が全身を駆け巡る。

 血の流れすらも“川”みたいに感じる。


(避けるんじゃない……

 流れるんじゃない……

 “流しながら斬る”んだ……!)


 刀を握る指が熱くなる。


如水流──

 奥義・流刃りゅうじん!!


シャアアアアアッ!!!


 拓海の身体が一瞬消えたように見え、

残像が走る。


 刀が魔紋獣の胸を斜めに深く切り裂いた。


「ギャアアアアアアァッ!!!」


 黒い血が噴き出し、

魔紋獣の紋が乱れる。


「拓海……お前……!!」

ガイルが驚愕する。


「すげぇ……!!」

ヴォルクが吠える。


(やった……!!

 奥義……通じた……!!)


 


     ◆ ◆ ◆


──その時、魔紋獣の“腐敗息”が噴き出した


 魔紋獣の黒い眼がギラッと光り、


口とは違う場所──

胸の紋から“黒い霧”が噴き出した。


ボゥゥゥゥ……!!


「全員下がれ!!

 そいつの腐敗息だ!!!」

ガイルが叫ぶ。


「ま、まずい……!!」

リーナが顔を覆う。


ヴォルクは息を止めて後退する。


拓海は霧に触れた瞬間、

皮膚がチリリと焼けるように痛んだ。


「ッッ…………!!

 なにこれ……毒……じゃない……

 “腐る”……!!」


 触れた草が一瞬で黒く枯れる。


「拓海、絶対吸うな!!

 これは“生物を腐らせる息”だ!!」


「ぐっ……!!」


 息を止めながら後ろに跳ぶ。


(奥義を使って距離を詰めた瞬間……

 逆に危険距離に……!!)


 


     ◆ ◆ ◆


魔紋獣、完全覚醒──“黒紋の暴風”


 魔紋獣の全身の黒紋が光り、

同時に暴風のように霧が噴き出す。


「くそ……!!

 近づけねぇ……!!」


「ガイルさんの“山断ち”すら届かない……!」


「リーナの火炎矢も……霧で弱まる……!」


 蒼狼隊が押し返される。


(息が……できない……

 ここからじゃ、何もできない……)


拓海の視界には、

それでも薄い“線”が走っていた。


(線が……示してる……

 でも……近づけば腐る……

 どうすれば……!!)


魔紋獣が霧を吸い込み、

次の攻撃のために身体を蠢かせる。


ギ……ギギィィ……


「まずい……!!

 来るぞ!!!」


──黒紋暴風吐こくもんぼうふうと!!


魔紋獣が大気を震わせた。


 


いつもお読みいただきありがとうございます。

少しづつ、読んでいただいてる人が増えてきて、嬉しく思います。

今後とも、応援よろしくお願いします。

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