第26話 激戦、魔紋獣と初の本気戦闘**
魔紋獣が突進してきた瞬間──
空気が爆ぜた。
グガアアアアッ!!!
(は、速……!!)
黒紋猪とは比べものにならない速度。
その巨体が、まるで矢のように一直線で迫る。
「ヴォルク!!」
ガイルの叫びと同時に──
「おらァッ!!」
ガギィィィン!!
ヴォルクの盾が真正面で受け止めた。
しかし──
「ぐっ……!!
こいつ……重さが違ぇ……!」
盾ごと後ろへ押される。
(ヴォルクさんが押されてる……!?)
魔紋獣がヴォルクの盾に爪を叩きつける。
バギン!!
金属がたわみ、地面にひびが走る。
「離れろ、ヴォルク!!」
ガイルが大剣を振り下ろす。
ドォン!!!
魔紋獣の肩に命中。
しかし──
「……硬ぇ……!」
「皮膚が魔力で強化されてます!」
リーナが叫ぶ。
(ガイルさんの大剣でも浅くしか入らない……
これが……魔物……)
◆ ◆ ◆
拓海、動く──“線”が明確に見える
拓海の視界には、
魔紋獣の“動きの流れ”がくっきり見えていた。
爪が振り上がる角度、
次に移る足、
突進の軌道。
(見える……
昨日より……もっとはっきり……!)
「ガイルさん、右後ろ!!
次はそっちに回る!!」
ズガガッッ!!
魔紋獣が地面を抉り、
指示通りに右後ろへ跳んだ。
「助かった!」
ガイルがすかさず距離を取る。
拓海は刀を構えた。
(気を流せ……
流れを捉えろ……
如水流斬……いく!!)
スッ……!!
拓海の身体は水のように滑り込み、
魔紋獣の脇腹へ斬撃を走らせる。
シャアッ!!
しかし──
「……くっ!!
浅い……!」
(重い……皮膚が……刀を吸われるみたいだ……!)
斬撃は“傷”にはなる。
だが深みに届かない。
「拓海、深追いするな!!」
ガイルが叫ぶ。
「はい!!」
◆ ◆ ◆
ヴォルクの反撃──獣人の本気
ヴォルクが息を荒くしながら前に出る。
「獣人〈ビースト〉の力……なめんなよ!!」
ガガガガガッ!!!
盾を連打し、
魔紋獣の攻撃をそらし続ける。
「ガイル!!今!!」
「任せろ!!」
ドォオオオン!!!
大剣の横薙ぎが魔紋獣の脚をかすめ、
ようやく膝を落とさせた。
(すご……
二人でやっと一瞬膝を落とせるレベル……?)
◆ ◆ ◆
リーナの矢──魔獣の動きを鈍らせる
「二人とも、離れて!」
リーナの声が響く。
バシュッ!!
バシュッ!!
バシュッ!!
三本の矢が魔紋獣の肩・脇腹・首元に突き刺さる。
「効いてる……!!」
「いいや、もっとよく見てください!」
リーナが強い口調で言った。
(……あれ……?)
矢は刺さっているが──
血が出ていない。
(血が出ない……?)
「魔力が血を“固めてる”んです!」
リーナが叫ぶ。
「つまり、こいつは──
“死ににくい”魔物!!」
◆ ◆ ◆
魔紋獣、覚醒──“紋”が広がる
魔紋獣の身体の黒い紋様が、
突如として広がり始めた。
ギィィィィィ……!!
「やばい、離れろ!!」
ガイルが叫ぶ。
(やばい……!!
線が……太くなって……
“危険”って言ってる……!!)
魔紋獣の皮膚が波打ち、
黒い紋様がまるで生き物のように蠢く。
「紋が……増えてる……!?」
拓海が叫ぶ。
「これはまずい……!!」
リーナが弓を後退させる。
「魔紋獣が“第二段階”に移行してるんだ!!」
ガイルが悟ったように言う。
ズガッ!!!
魔紋獣が大地を砕いた。
(ガイルさんとヴォルクさんでギリ押してたのに……
今のは……あれ以上……!!)
「拓海!!絶対にひとりで突っ込むな!!」
「……はい!!」
(でも……
線が……“俺の動き”も求めてる……
やれる……はず……)
◆ ◆ ◆
拓海の全力──如水流の“流心”を越えて
魔紋獣が縮地のように距離を詰めた。
グガアアアア!!!
ガイルが前に出る。
「正面は俺が受ける!!
ヴォルク、右!!
リーナ、援護!!」
三人が同時に動く。
拓海は刀を握りしめた。
(俺が……やれるのは……
如水流斬……ただひとつ……!)
(気を流せ……
流れろ……
水になれ……!)
視界の線が重なり、
一点を示した。
(あそこ……!!
あそこなら……届く!!)
如水流斬──
流心・一閃!!
シャアァァッ!!
拓海の斬撃は、
魔紋獣の動きと重なり、
黒い紋様の“隙間”を貫いた。
「ギャアアアア!!」
魔紋獣が大きく仰け反る。
「入ったか!?」
ガイルが叫ぶ。
「……まだ……!」
拓海は気づいた。
(斬れた……
でも……“浅い”……!!!)
「あと一撃じゃ死なねぇぞ!!」
ヴォルクが声を上げる。
◆ ◆ ◆
魔紋獣の反撃──圧倒的な暴威
魔紋獣が突如、狂ったように暴れた。
ドガガガガガ!!!
木々がなぎ倒され、
土が爆ぜ、
空気が震える。
「っ……!!」
ガイルでさえ体勢を崩す。
「くっそ、化け物め……!!」
(強すぎる……
本当に……化け物だ……!!)
◆ ◆ ◆
──そして、魔紋獣の“第三段階”が始まる
魔紋獣の黒紋が胸元へ集まり、
紋の中心が“開いた”。
(……え?
今……開いた……?)
中心は穴ではない。
口でもない。
黒い“魔力の眼”のようなもの。
「やばい……」
リーナが呟く。
「真の魔紋獣になるぞ……!!」
ガイルの声が震えた。
「全員、後ろへ!!
これは……“魔物”だ!!」
(魔物……!!
これが……この世界の本当の……)
魔紋獣の眼が、
ゆっくりと拓海たちを見据えた。
ギ……
ギィィ……
ギャアアアアア!!!
森が揺れた。




