第25話 森の心臓部で、初めて目にする“魔の片鱗"
森の奥へ踏み込むにつれ、
空気はさらに重く、湿っていった。
まるで──
森そのものが呼吸を止めているような静けさ。
「……ガイルさん」
拓海が小声で呼ぶ。
「どうした」
「この奥……線が……
ずっと同じ方向を……」
拓海が見ている“未来の流れ”。
それは一本の細い糸のように伸び、
森のさらに奥へ奥へと続いていた。
「新入りが線を見る方向は、だいたい当たる。
進むぞ」
ガイルが短く言う。
「……あまり、入りたくありませんね」
リーナが弓を構えたまま言う。
「同感だ……この匂い……」
ヴォルクの鼻がひくつく。
「魔物特有の腐敗じゃねぇ……
もっと……“人間の死臭に似てる”」
(……人間……?)
拓海の背筋が冷えた。
◆ ◆ ◆
森が“血の色”に染まり始める
進むほどに、地面に黒い染みが増えた。
「……血?」
拓海が呟く。
「魔力に焦がされた血痕だ」
ガイルがしゃがみ込む。
「普通の血はこんな黒くならない。
魔力が“腐食”している証拠だ」
(魔力が……腐食……)
黒紋猪の体が焼けていた理由が、
少し分かった。
──この森には、“腐る力”がある。
◆ ◆ ◆
異変の中心部──空気が変わる
やがて、森の木が不自然に“裂けている”場所へ出 た。
「……これ、何で裂けてるんですか?」
拓海が問う。
「魔物の力……だと思う」
リーナが木肌を触る。
「切断じゃない……
引き裂かれたような……」
さらに一歩進むと──
ザリ……
足元の落ち葉が、
まるで肉を踏むような柔らかさだった。
(なんだ……?)
拓海が足元を見ると──
落ち葉に混じって 半透明の膜 のようなものが散って いる。
「……皮膚、じゃな……いよな?」
ガイルの声が低い。
「皮膚じゃありません。
魔力の膜……結界が“破れた跡”です」
リーナが瞳を細める。
「誰かが……これを張ってた……?」
ヴォルクが周囲を見回す。
「いや……これは“張ろうとしたけど破れた”膜だ」
ガイルが続ける。
(膜が……破れた……?
何が出てきたの……?)
◆ ◆ ◆
──そして、“それ”はそこにいた
その時、
拓海の視界にクッキリと“線”が走った。
(……やばい……
何かが……すぐそこにいる!!)
「ガイルさん、来ます!!」
ガイルが即座に大剣を構える。
ヴォルクが盾を前に出し、
リーナが弓を引き絞る。
ザ……ザリ……ザ……
地面を這う音が近づく。
(これ……黒紋猪とは……違う……!)
音が止まった。
次の瞬間──
木の陰から、“それ”が顔を出した。
◆ ◆ ◆
魔物──“黒紋猪の成れの果て”
現れたのは黒紋猪に似た生き物。
だが──
もはや“猪”とは呼べない。
体の半分以上が、黒い紋様に飲まれていた。
皮膚が波打ち、
紋様が蠢き、
まるで“生きた泥”が動いているよう。
「……嘘……」
リーナが息を呑む。
「こいつ……黒紋猪じゃねぇ。
“魔紋獣”だ……!」
ガイルが低く叫ぶ。
(魔紋獣……?)
魔力汚染ではなく──
魔力そのものが“生物を乗っ取った姿”。
目は白く濁り、
爪は鋭く、
そして皮膚は腐ったように裂けていた。
ギ……ギィ……ギ……
声とも呻きともつかない音。
(こんな……化け物が……)
拓海の喉が鳴った。
(こわ……
足……震えてる……
でも……線は……見える……)
線は“避けろ”と言っている。
“戦え”とも言っている。
「拓海……」
ガイルが横目で言った。
「怖いなら後ろにいろ。
だが──前に出るなら、覚悟を決めろ」
◆ ◆ ◆
戦闘開始の瞬間
魔紋獣がゆっくりと頭を下げる。
獣人のヴォルクが低く唸る。
「来るぞ──!!」
グガァァァァァッ!!!
魔紋獣が爆発的な速度で突進してきた。
(来た──!!)
拓海の視界には、
すでに“線”が走っていた。
次の一撃を……示している。
いつも読んで頂きありがとうございます。
今後も頑張りますので、応援よろしくの願いします。
コメント、感想。なんでも聞かせてください。
皆様の言葉を糧にして成長したいと思います。




