第21話 気の流れ、その奥で"何か"が目を覚ます
午後の訓練場。
涼しい風が吹き抜け、地面の砂が小さく舞っていた。
蒼狼隊の三人が拓海を待っていた。
「来たな、新入り」
ガイルの声は低く、しかしどこか楽しそうだ。
「今日は様子見ではなく、本気の稽古です」
リーナが穏やかに言う。
「逃げんなよ?」
ヴォルクが牙を覗かせて笑った。
「逃げません!」
拓海は日本刀を両手で握った。
◆ ◆ ◆
ガイル、本気の一撃
「じゃあ──くるぞ!」
大剣が地を蹴り、
ガイルが一閃に距離を詰めた。
ドンッ!!!
(は、速いっ……!?)
重たい風圧が頬を打つ。
拓海は横へ跳び、ぎりぎりで避けた。
「ほう……避けたか」
ガイルが目を細める。
(これ……本当に死ぬやつじゃん……!!)
◆ ◆ ◆
如水流斬──川のように流れる斬り
(……やるしかない)
拓海は一度息を整え、刀を構えた。
白石古武術・水系初動技──
如水流斬
川のように抵抗を避け、
障害物ごと流れに取り込み、
目的地へ“下る”。
ス……ッ
拓海の身体はゆっくり前へ流れ、
シャッ!
木の枝を断ち切るような鋭い音が鳴った。
「ほう……昨日よりずいぶん良いな」
ガイルが大剣で軽く受け止める。
(いける……!
昨日の俺とは違う……)
◆ ◆ ◆
──その瞬間、視界が変わった
ガイルが踏み込み、
次の斬り下ろしを仕掛けた瞬間。
ふっ……と視界が変わる。
肩の角度。
腰のひねり。
足の向き。
重心の移動。
それらが一本の“流れ”として繋がり──
避けるべき位置が線となって浮き上がる。
(……え……
見える……?)
心臓が跳ねた。
視界が澄む。
頭が軽くなる。
世界の流れの“先”が分かる。
(これ……気じゃない……
もっと奥の……何か……)
身体は自動的に、川が枝を避けるように横へ滑った。
「なっ……!?」
ガイルの目が見開かれる。
◆ ◆ ◆
如水流斬──流心
拓海は大剣の横を流れるように抜け──
ス……ッ!
空気ごと切り裂くような一閃。
地面に薄く刻まれた斬跡を見て、
ヴォルクが低く唸った。
「おい……今の動き……
普通じゃねぇぞ?」
リーナが拓海をじっと見る。
「拓海さん……
さっきの、何を見ていましたか?」
「……わかりません。
でも……“流れの線”みたいなものが……
見えたような……」
「線……?」
リーナは小さく首をかしげる。
(そりゃそうだ……
“理”の力は地球人だけのもの……
この世界の人は知らない……)
拓海は祖父の言葉を思い出す。
──理が騒ぐ時がある。
その時は、必ず従え。
(じいちゃん……
これ……理ってやつなのか?)
胸が熱くなる。
◆ ◆ ◆
ガイルの評価
「よし……分かった」
ガイルは大剣を肩に担ぎ、
拓海を真っ直ぐ見た。
「拓海。
お前はもう見習いじゃねぇ。
“俺たちと動けるレベル”になってる」
「えっ……!」
「明日の調査任務──
一緒に来い。」
ガイルの声には迷いがなかった。
「……はい!!
お願いします!!」
◆ ◆ ◆
拓海の胸の奥で“何かが育つ”
(理……気……
俺の中で、“何か”が繋がっていく……)
怖さはある。
でも──
もっと強くなりたい。
もっと前に出たい。
もっと……世界を知りたい。
拓海の胸の奥で、
小さな火が確かに灯った。




