第二部61話── 黒石の“影”、理の向こうより
【霧谷・黒裂の前】
黒将が砕け散った直後。
霧谷には、戦いの終わりではなく──
“静かな絶望”が広がった。
風が止み、音が消える。
タク
「……終わった、のか……?」
悠真
「いや……空気が……変だ……
息が……重い……」
ソフィア
「……これ……理の圧……
誰かが……“外側から”干渉してる……!」
キャス
「お兄ちゃん……足……震える……
怖くないのに……勝手に……」
四人とも分かっていた。
これは“恐怖”じゃない。
ただ、身体が本能で反応しているだけ。
──上位の理に触れた時に起きる、原始的な反射だ。
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【黒裂──呼吸を始める】
黒い裂け目が、脈打つように揺れた。
吸い込み、吐き出す。
呼吸するように。
異界の“何か”が、
こちら側へ入り込もうとしている。
ソフィア
「……このまま開いたら……やばい……!
向こうの“位相”が侵食し始めてる……!」
悠真
「初代の……干渉……だな……」
タク
「来る……」
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【黒石初代の“影”が揺らぐ】
黒裂の奥が、深い闇に溶ける。
その闇は形を持ってはいない。
だが──
影の“濃さ”だけが異常だった。
見えない。
でも、確実に“そこにいる”。
タク(……姿は見えねぇ……
でも……視線が……刺さってる……!)
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【初代の“影の声”が届く】
霧谷の空気そのものが震え、
声が染み込むように四人の耳へ届く。
【……シ……ラ……イ……シ……か……
……ほぅ……よく……来た……な……
ア……カ……イ……シ……
…………たの……し……め……る……】
ソフィア
「音が……欠けてる……
向こう側から……無理に……押し込んでる……!」
悠真
「……たの……し……?
どういう意味だよ……クソ初代……!」
キャス
「お兄ちゃん……あれ……“聞いてる”……」
タク
「……ああ。
影だけでこれって……
本体だとどうなるんだ……」
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【黒将の残骸が“影に反応する”】
地に散った黒核が、
黒裂の奥の揺らぎに呼応して脈動する。
ソフィア
「核が……初代に……“繋がってる”……!」
悠真
「やっぱり……黒将は“あっち側”の人形だったんだ……!」
タク
「いや……違う。
核に……初代の理を流し込んでるんだ……!」
キャス
「影が……動いてる……!」
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【黒影の刃──霧谷そのものが裂ける】
黒将の残骸から、
黒い線が一条、すっと伸び──
ザシュ。
霧谷の空間が“音もなく”裂けた。
ソフィア
「……っ……!!
今の……空間そのものが……斬られた……!」
悠真
「これが……黒石初代の“理の刃”……!」
キャス
「お兄ちゃん!!動かないで!!」
タク(……見えてない……
感じて“斬ってる”んだ……
これが……初代……!!)
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【タク──影へ一歩踏み出す】
タクは前へ出た。
タク
「俺が行く。
ここは……俺が受ける。」
ソフィア
「タク!!無茶!!」
悠真
「相手は初代の影だぞ!!」
キャス
「お兄ちゃん……!」
タク
「影だけだ。
──本体じゃない。」
自分に言い聞かせるように、
黒裂へ向き直る。
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【初代の“呼びかけ”】
【……シ……ロ……
……ア……カ……
…………聞こえる……か……
こ……れ……る……か……?
……わ……し……を……
…………北……で……ま……つ……】
霧谷の黒霧が、ざわ、と揺れる。
ソフィア
「……北……!?
終焉の……地……!」
悠真
「次は……“北へ来い”ってことかよ……!」
キャス
「お兄ちゃん……呼ばれてる……」
タク
(……待ってる……?
何で……俺を……)
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【影が初撃を放つ】
黒裂の奥の闇が、わずかに動いた。
核に黒影が流れ込み──
一条の黒がタクへ襲いかかる。
ソフィア
「来る!!」
悠真
「構えろタク!!」
キャス
「お兄ちゃああん!!」
タク
「──受ける!!!」
蒼光が走り、
黒の奔流と衝突する。
ドゴォォォォォンッ!!
霧谷が震え、
影と蒼光の衝突が地響きを生んだ。
──影越しとは思えぬ殺意。
だがタクも、もう逃げなかった。
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