第二部53話── 黒石初代、動く。三国を揺るがす“黒き光”
【公国・港跡──勝利直後の異変】
黒炎核を砕き、静寂が戻った港。
風が吹き、潮の匂いがようやく戻ってくる。
しかし──タクの耳に、
“かすかに世界が震える音”が届いた。
タク
(……何だ、この音……?
地響きでも、風でもない……
もっと……芯の音だ……)
悠真が眉をひそめる。
悠真
「タク、聞こえるか?
世界の“下”から鳴ってるような……」
ソフィアも空を仰いだ。
ソフィア
「……これ、“魔力”じゃない。
理そのものが揺れてる。
こんなの、普通じゃありえない。」
団長は即座に剣を抜いた。
団長
「全員構えろ。
まだ何か来る……!!」
キャスは怯えながら、タクの腕を掴む。
キャス
「お兄ちゃん……こわい……
さっきの黒いのより……もっと……こわいの来る……」
タクがキャスの頭を押さえる。
タク
「大丈夫だ。
絶対守る。」
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【北方──“終焉の地”】
場所は変わり、
大陸最北の雪山と深い闇に覆われた“終焉領”。
その中心に──古い石の台座が一つ。
黒炎が渦巻き、
その中央からひとりの男が姿を現した。
黒石 清九郎 盛隆(くろいし せいくろう もりたか)
黒髪。
黒い着物。
しかし皮膚の半分は闇に侵食され、
瞳は紅黒く濁っている。
だが──“意志”はある。
闇に喰われながらも、理を保った“喋る屍人”。
清九郎
「……五百年。
長かったのう。」
足元の土が崩れ、
周囲の闇が呼応するように震える。
清九郎
「白石の理よ。
再び目覚めたか……
流石は源蔵の孫よ。」
彼の視線が、“遠く公国の方向”へ向く。
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【黒石初代──“黒の号令”】
清九郎は片腕をゆっくり上げる。
その周囲に、
黒い影──“上位屍人”たちが跪いた。
彼らは言葉を発さず、
ただ従うためだけに存在している。
清九郎
「行け。」
その一言で──
屍人たちの体が黒炎に包まれ、
北から南へ向けて“高速で転移”していく。
向かう先は三ヶ国。
① 帝国フリザリナ
② ラインハルト公国
③ 獣王国
清九郎
「世界に告げる時が来たのよ。
五百年ぶりの“闇の手入れ”をな。」
闇が再び台座に集まり、
空気がひずむ。
清九郎
「白石拓海よ。
わしはここにおる。
──終焉の地で、待っておるぞ。」
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【同時刻──獣王国の国境】
獣王国の森の入り口。
闇を纏った“影”が地に落ちる。
地面が一度ふるえ、
黒い霧が一気に森中へ拡がった。
獣人戦士
「な……なんだ!?黒い霧……ぎゃっ!!」
霧を吸った兵士が、
その場で黒炎に呑まれ、屍人化する。
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【同時刻──帝国フリザリナ】
帝都の上空。
黒炎の柱が空を裂くように走る。
帝国魔術師
「魔力障壁が破られた!?
何者だ!!?」
そこに降り立つ“黒い影”。
帝国兵
「ぎゃああああああ!!!」
一瞬で十名が黒炎に包まれ、
そのうち三名が“屍人化”した。
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【そして──公国ラインハルト】
公国の上空にも、
黒い炎の線がゆらりと現れる。
団長
「……来たか。
公国も“選ばれた”というわけだな。」
ソフィア
「タク、悠真、キャス……
気を抜いちゃダメ。
“初代の号令”が届いた証よ。」
タク
(……初代……!
何を始める気だ……!)
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【決意──五人の覚悟】
悠真が静かに刀を握り直す。
悠真
「タク。
ここからはもう……
“黒炎核”どころの話じゃないぞ。」
キャスも震える身体を押さえつけながら叫ぶ。
キャス
「でも……私……逃げない。
みんなと一緒に前に行く!!」
ソフィアも頷く。
ソフィア
「タク、“理”を持つあなたが動くなら、
私たちは絶対支える。」
団長が前に立つ。
団長
「公国は……いや、この大陸全土は、
お前たちの肩にかかっている。
頼んだぞ、“四人と一人”の英雄たち。」
タクはゆっくり刀を鞘に収めた。
タク
「行こう。
黒石初代が本気で動いたのなら──
ここからが本番だ。」
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【エピローグ──初代の呟き】
終焉の地。
吹雪の中、清九郎は独り、空を見上げた。
清九郎
「さあ……白石拓海。
お主の蒼光が、どれほど闇を照らせるか──
この五百年、楽しみにしておったぞ。」
闇が、笑った。
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まだまだ続きます。




