第二部49話── “初代”の影、その声は何を望むのか
【黒霧の奥──蒼光が消えた空間】
蒼光の柱が霧谷の中心を貫き、
無限増殖ベビーモスは蒸発するように消えた。
静寂。
ただ、冷たい風だけが残る。
「……はぁ……はぁ……タク兄ちゃん……すご……」
「キャス……大丈夫か、まだ立てるか?」
「うん……ちょっとふらふらするけど……平気……」
悠真も膝をつきながら息を整えていた。
「お前の“蒼光水”、あれ反則だろ……。
でも……助かった……マジで……」
ソフィアも額の汗を拭う。
「ふぅ……身体がまだ震えてる……。
あんな増殖……光がなきゃ絶対無理だったわ。」
四人全員が明確に感じていた。
──これは、普通の敵じゃない。
──“仕掛け”だ。
──誰かの意図だ。
⸻
【黒霧の奥底──声】
その時だった。
霧谷の闇の奥から、
ズ……ッ……
と、深淵を削るような気配が近づいてきた。
キャスの耳がピンと立つ。
「……来る……!
この感じ……前にも……!」
ソフィアが一歩前に出る。
「タク……構えて。
これ、“あの時”と同じ……黒石初代の……」
悠真も刀を構えた。
「霧の濃さ……圧……
これは……本物が近い。」
すると──
霧の中に、ゆっくりと“黒い輪郭”が歩み出た。
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【黒石 清九郎 盛隆──“姿はないが、声は確実にそこにいる”】
形は曖昧。
人影のようで、煙のようで、底が見えない。
しかし、その声だけは異様に鮮明だった。
『……ほう。
やはり来たか……白石の小童。』
タク(……やっぱり、初代……!)
ソフィアが低く声を吐く。
「……また出てきたわね、初代。
ここで何をしてるの?」
黒石初代
『……五百年。
白石の“理”は変わらぬのう。』
悠真(ぞくりと震えながら)
「……タク、こいつ……以前の“屍人”とは別次元だ……」
キャスはタクの背中に隠れながら震えた。
「お兄ちゃん……コワい……声が刺さる……」
タクは一歩前へ出た。
「……俺たちを試してたのか?
さっきのベビーモスも……」
黒石初代
『試したのは“理”よ。
光を得てなお……折れぬかどうか。』
(……試されてる……!)
⸻
【核心へ──初代に問う】
タクは恐怖を押し殺し、質問を返した。
「……さっき言っていた“選ばれた者”。
それはどういう意味だ?」
黒石初代
『教えてやってもよいが……
──まだ“時期ではない”。』
ソフィア「またそれ……!」
悠真「核心を避けてる……」
タクは瞳を細め、踏み込む。
「じゃあ一つ……
──歴代の、それも“初代”の話か?」
黒石初代は静かに笑った。
黒石初代
『ふむ。
“初代”とは便利な言葉よ。
だが真実は──
白石・赤石・黒石……すべて“扉の血統”。
理に選ばれし者たちの物語よ。』
タク「……扉に選ばれた……?」
ソフィア「どういう……意味?」
黒石初代
『今はまだ知らずともよい。
いずれ、嫌でも知ることになる。』
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【しかし──最後に“決定的な言葉”を残す】
黒石初代
『白石よ。
お主はいずれ──扉の“終焉”に立つ者。』
タク「……終焉?」
黒石初代
『わしは、終焉の地で待っておる。
白石の理よ……
五百年経とうとも、変わらぬかどうか。』
霧が消え、影も声もすべて霧散した。
⸻
【残された四人──沈黙】
しばらく誰もしゃべれなかった。
キャス「……お、兄ちゃん……
アレ……なんなの……?」
タク「……わからねぇ。
けど……“試されてる”のは間違いない。」
悠真「五百年……扉の血統……
終焉の地……全部が繋がってる……」
ソフィアも腕を抱く。
「……この旅、簡単じゃなくなるよ。」
タクはゆっくり二人と一匹の仲間を見た。
「でも……行くしかない。
こいつらのせいで世界が壊れるなんて、絶対嫌だ。」
キャス「うん……!」
悠真「当然だ。」
ソフィア「最後まで付き合うよ。」
四人は同時に“前”を向く。
黒石初代が残した言葉──
『終焉の地で待っておる』
そこへ向かう旅が、静かに動き出していた。




