第二部39話── 赤石悠真、闇から戻った理由
【公国北部・小さな丘】
再会を果たした四人は、
夕暮れの丘に腰を下ろしていた。
空は赤紫に染まり、
海風がゆるく吹いている。
タクが真剣な目で悠真を見る。
「……悠真。」
「なんだよ。」
「お前──どうやって
“半闇落ち”から戻ったんだ?」
キャスも不安げに耳を伏せている。
「……だって……あれ……危ないやつ……」
ソフィアもタクに寄り添いながら、
悠真の答えを待った。
────────────────────────────
【悠真の告白──扉に帰ろうとした理由】
悠真は石を拾い、軽く海へ投げた。
水面に小さく輪が広がる。
「……あの時の俺な。」
「うん。」
「“闇に飲まれる前に、誰かに伝えなきゃ”って
焦ってたんだ。」
タクの喉が鳴る。
「誰に……?」
悠真「……父さんだよ。」
静かな空気が流れた。
「赤石家は昔から“扉”に関する記録を
何代も受け継いでる。
黒石家も白石家も同じだろ?
でも……俺は、まだ聞いてないことが多かった。」
悠真は拳を握る。
「だから……“扉に帰れば、何かわかる”……
そう思った。」
────────────────────────────
【闇から戻った瞬間】
「扉を目指して歩いた。
歩くほど……俺の中の“黒い何か”が
削れていく感覚があった。」
ソフィア「……それ、闇そのものじゃない……?」
悠真「多分な。」
「でな──」
悠真は自分の胸を軽く叩いた。
「扉の前に立った瞬間だ。
闇が全部、消えた。
まるで、吸い込まれるように。」
キャスが息を呑む。
「じゃあ……扉は……
闇を浄化するの……?」
悠真は首を振る。
「違ぇよ。
扉の近くにいると、
“理の安定”が戻るんだ。」
タク「理の……安定……」
悠真「闇落ちの正体、多分な──
扉から離れた時に、理が制御できなくなる。
濁って、膨張して、
その隙間に“闇が入り込む”。」
ソフィアが頷く。
「……理の乱れ……
それが闇の侵食を許す理由……?」
悠真「そういうことだと思う。」
────────────────────────────
【三家の共通点】
悠真はタクをまっすぐ見る。
「白石、赤石、黒石。
なぜ三家だけが“扉に選ばれたのか”。
少しだけ、わかった気がする。」
タク「なんでだ?」
悠真「三家は“理”の器がデカい。
でもその分──
扉から離れれば離れるほど、
理が暴れる危険も高い。」
「暴れる時……
心が弱っていたり、迷っていたりしたら……
“闇”に持っていかれる。」
キャスは小さく震えた。
「じゃあ……
黒石の人たちは……
怖かっただろうね……」
悠真「……ああ。」
タクは拳を固く握った。
(……初代も、そうだったのか……
扉から離れ……北へ向かい……
500年で“濃すぎる闇”に……)
────────────────────────────
【悠真からの“忠告”】
悠真はふいに立ち上がり、
タクの肩に手を置いた。
「いいか、拓海。」
「なんだよ。」
「お前も気をつけろ。」
タクの目が鋭く光る。
「……俺が闇落ちするって言いたいのか?」
悠真「する可能性はある。
三家の血なら……誰でもな。」
ソフィアはタクの腕を掴んだ。
「タク……!」
キャスもタクの手を握る。
「お兄ちゃん……落とさない……!」
悠真は、二人の様子を見て
ほんの少し安心したように笑う。
「……まぁ、お前のそばには
こんだけガードがいるから大丈夫だろ。」
タクは息をつき、悠真に頷いた。
「ありがとな。
お前が戻ってきてくれて、ほんとによかった。」
悠真「……あたりめぇだ。
俺は──赤石悠真だぞ。」
────────────────────────────
そして四人は、ひとつの結論に辿り着く。
初代黒石は、扉から最も遠い“北”に行った
だからこそ、500年の闇をまとった
理と闇の関係は、三家の宿命
そしてタクは思う。
(悠真が帰れたなら……
初代も……どこかに“救う道”が……)
物語は、
ここから“核心”へと一気に進んでいく。




