第二部38話── 蒼光の行方と、赤い影
【公国郊外・訓練場の翌日】
朝靄が薄く溶けていく頃。
タクはひとり、昨日刻まれた“蒼光の線”を眺めていた。
(……これが暴走の跡か)
線は微かに光を帯びて残っている。
(水と光……
静と動……
グラドさんは簡単そうに言ったけど、
やっぱ簡単じゃねぇな)
刀に触れながら息を整える。
そこへ──
「タク、おはよ。」
ソフィアがカーディガンのようにローブを羽織って歩いてきた。
「早いな。」
「昨日、あれだけ暴走してたら……
あんたが絶対ここに来ると思って。」
「……読まれてたか。」
「うん。」
ソフィアは微笑む。
「昨日より、刀の光が落ち着いてきてる。
“光の理”が、あんたの呼吸に馴染み始めてる証拠だよ。」
「……そうなのか?」
「うん。
タクはもう、“光の器”の片足が入ってる。
本当に珍しいことなんだから自覚して。」
タクは少しだけ照れたように視線をそらした。
(光なんて、俺に扱えるのか……?)
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【キャス──朝から元気】
「おにいちゃーーーん!!」
キャスが全力ダッシュで飛び込んでくる。
「うおおぉ!?跳ぶな跳ぶな!!」
キャスはタクの胸に着地し、そのまま抱きついた。
「ねぇ見て!キャスもう、この篭手すごい慣れたの!!」
そのままタクの肩に登って立つ。
「やめろォォ!?重心ぶっ壊すな!!」
ソフィアが吹き出す。
「……朝から元気ねぇほんと。」
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【そして──“赤い気配”】
その時だった。
風が揺れた。
キャスの尻尾が急に逆立つ。
「……お兄ちゃん。」
「どうしたキャス?」
「なんか……くる……
すっごい……“熱い匂い”……」
ソフィアの表情が一瞬で変わった。
「タク。
“赤の理”に近い……そんな気配。」
タクは背筋を伸ばす。
(赤石悠真……?
それとも……“赤の屍人”か?)
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【公国街道へ】
三人は即座に準備を整え、街道へ急ぐ。
街道の向こうから──
赤い光が幾重にも瞬いていた。
「攻撃魔法……?」
「いや……形が違う……」
近づくほど、その光は“炎”の性質をまとい、
その中心に──
ひとりの青年が立っていた。
燃えるような赤い瞳。
黒髪の奥に、赤の理が渦を巻く。
青年はタクを見て、わずかに目を見開いた。
「……やっぱり……
白石の匂い……だよな?」
その声は、どこか懐かしさを含んでいた。
キャス「お兄ちゃん……あの人……!」
ソフィア「……感じる。理の質が、あなたと同じ……でも“熱い”。」
タクの心臓が強く鳴った。
(間違いない……
あいつが──)
赤石 悠真
「久しぶりだな、タク。」
赤の理が揺れる青年は、
淡く、寂しい微笑みを浮かべていた。




