4話 2階
第4話、よろしくお願いします。
かなり趣味が悪い。
そこかしこに血糊やら人骨やらが転がっている。
それに、迷宮鬼族と同レベルの気配が至るところから…
ゾッとするわぁ。
私が今いる2フロア目は相当厄介な場所らしい。
常に気を張り詰めているから、集中力の消耗が激しい。
戦闘もしていないのに、もうヘトヘトである。
「きゅあああああっ!」
「うわぁっ!」
と、私の気配察知を掻い潜って、テラーラットよりも強力な魔物、フィアーラットが襲いかかってきた。
だが、これくらいなら問題はない。
私が大鬼族を斃した時に思いついた必殺技でイチコロである。
「脅かさないでよ!六芒暗獄滅壊斬!!」
六芒星を形取った斬撃を浴びせる。
なかなかに恰好良いのではなかろうか?
もちろん、『万物を呑む闇の深淵』と『万物を侵す猛毒』が付与された6本の斬撃を鼠如きに耐えられるわけがない。
その鼠は、私の晩御飯となったよ。
コカトリスと同じくらい美味しかったなぁ。
そこからは、時々襲ってくる鼠やら迷宮鬼族やらを屠りながら、体感6日程迷宮の奥へと突き進んでいった。
そして、第1フロア同様、ひらけた部屋へと繋がった。
「またここ?もう疲れるんですけど…」
中から漏れてくる気配は、第1フロアのそれを遥かに上回っていた。
確かに、ユーリもここ数日、『生存者』の権能、『生存本能』の権能でかなり強くなっていた。
それでもこれは危険だ、そういう警告を本能が鳴らしていた。
「でも、いくしかないよね。なんで攻略してるのかは知らないけど」
なぜ攻略をしているのか分からない、そう疑問を抱いたのだが、それはすぐさま頭から振り払った。
今は攻略すべき敵のことを考えよう。
そう思い、部屋に足を踏み入れる。
そこには、ウネウネと動く金属のようなもので作られた、ゴーレムとでも呼ぶべき代物が構えていた。
鑑定してみる他ない、そう判断した私は、ゴーレムをじっと見つめる。
【迷宮の守護者】
流体魔鋼製の『ムェルテの迷宮』第2フロアを守護する第1ゴーレム。
迷宮では上の中にあたる。
ただし、第2フロア最終ボスの、『迷宮の城壁者』の半分の強さしかない。
あらゆる物理攻撃を弱体化し、状態異常を受け付けない。
恐ろしい。
こいつもそうだが、こいつよりももっと強い奴がいることが恐ろしい。
それに、生物じゃない以上、毒の効果は見込めないし、流体魔鋼なる金属でできているなら、斬撃の効果も薄いだろう。
つまり、私の対抗手段は、剣に付与された闇魔法、『万物を呑む闇の深淵』しか残されていないということになる。
辛いなんてもんじゃないね、こりゃ。
そう心の中でボヤきながら、迷宮の宝剣を構える。
次の瞬間、迷宮の守護者の腕が伸び、私に襲いかかってきた。
咄嗟に剣で身を守る私。
なんとか防ぎ切ったものの、これが圧倒的に不利な戦いであるのは明白だった。
幾度となく、重く速く、鋭い攻撃を受けているうちに、徐々に私に届き始めた。
痛い。
服が切れ、血が滲む。
再生で修復がなされるが、それでも追いつかないほどの猛攻。
ふいに、みしり、と迷宮の宝剣が嫌な音を立てた。
チラッと見てみると、剣がボロボロに溶けているのが見えた。
思わず、ゾッとする。
あの金属には侵蝕性があるのだ、そう悟った瞬間に、鳥肌がたった。
まともに食らえば再生することもできずに、ボロボロの雑巾みたいになるだろう。
冗談じゃない。
「くっそぉ…まずいよ…」
「ギギギギ…」
大きく深呼吸をし、思考加速を施した上で鑑定によって弱点を見極める。
ふむふむなるほど、【熱に弱い】、ね。
じゃあ一か八かやるしかない。
私はポケットに入れたまんまだった炎の魔石(大)を取り出して剣に近づける。
「頼むよ、君にかかってるからね、迷宮の宝剣…」
そして、例の如く、あの声が響いた。
『【炎の魔石】及び【迷宮の宝剣】の融合変化申請を確認。申請を受諾。これにより、剣の損傷をリセットします。加えて、炎最上位魔法、【万物を滅す紅蓮の業火】を斬撃に付与します』
思った通り、炎系の能力が付与されたようだ。
コレで勝つる!
そういえば、『弑逆者』ってどんな効果なんだろ?
ちょっと試してみようかな。
そうして、私は『弑逆者』を発動させたのだった。
【 名前 】ユーリ・ラナバーズ
【 年齢 】?
【 性別 】女
【 能力 】固有スキル:生存者
権能:生存本能・気配察知・隠密・鑑定
極限回避・思考加速
固有スキル:弑逆者
権能:?
魔法:火起こしの魔法
【 実績 】捕食者・一定生存・知的好奇心・危機管理
迷宮の洗礼③・鬼殺し・時は金なり
【 耐性 】苦痛無効・毒無効
【 装備 】迷宮の宝剣
技とかそう言うのは基本スペイン語を基にしています