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3話 夢のあとで

第3話、よろしくお願いします。

「カティアを連れて逃げなさい!」

「ですが、奥様…」

「いいから早く逃げるのです!でないと、手遅れに…」

「ぐわああああっ!」

「ひっ、やっやめ」


 薄暗い部屋の中に美しい女の人と、執事然な人がいる。

 外から聞こえる悲鳴からして、何やら大変なことになっているようだが、詳しくは分からない。

 その時、1人の男が部屋の中に入ってきた。

 

「なっ、あなた…」

「がははは!コイツは大したことなかったぜぇ?」


 侵入してきた大男は、手に持っていたものを投げ捨てる。

 それは、かろうじて人の姿を保つ何かだった。

 女の人は青ざめている。

 それを見て執事が決断した。


「必ずや、生き延びて見せます」

「ええ、頼んだわよ」


 その部屋から遠のいていく中、あの人の悲鳴が聞こえる。

 視界の端には、その人が滅多刺しにされて、体の至る所から血を吹き出す光景が見えた。



 

 んはぁっ!

 ゆ、夢かぁ〜…

 なんだか嫌な夢だったな。

 目を擦りつつ、私は体を起こす。

 さっきの夢のせいで、ちょっとこの状況が怖い。

 取り敢えず気配察知。

 ま、当然だが、気配察知には、何も引っかかることはなかった。


「…お腹すいたなぁ」


 ぐぅ、と鳴る腹をさすりながら、魔物の気配を範囲を広げた気配察知で探る。

 が、目ぼしい気配は見当たらない。

 仕方ない、そう思い、来た方向と反対側へと足を進めた。


 道中、テラーラットが3匹ほど駆け回っていたので、捕まえてローストにして食べた。

 初日に食べた時と同じで、味は鳥に似ていて美味しい。

 ただ、弾力が強すぎるんだよなぁ…

 あの時は美味しかったけど、コカトリスを食べてしまった今じゃ、いかんせん物足りなさがなぁ…

 モッシャモッシャ、と、硬い肉を噛み潰しながら思い出す。

 そういや、あの毒の魔石とやらを拾ってから魔物を見なくなったような。

 それこそ、毒に耐性のある迷宮百足(ムェルテムカデ)くらいしかここに来るまでに見かけていない。

 もしかして、と思い、魔石を詳しく(見る時間が伸びるにつれ鑑定がより詳しくなる)鑑定してみる。


【 毒の魔石(中) 】

周囲に毒素を振り撒く魔石。

毒に耐性のない魔物を寄せ付けない、中程度のお守りとなる。

武器に付与可能。


 なるほどコレのせいか。

 生活が厳しくなってかなわん。

 …武器に付与可能?

 その文字を見て、私は握った『迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)』を見つめる。

 周囲に毒素を振り撒かないのであれば、融合させるのもアリでは?

 いやいや、でも振り撒かなくなると言う確証はひとつもないわけだし…

 ちょっとしたジレンマに陥る私。

 まあ、そんなのが発生したら私の頭はパンクするわけで…


「もうめんどくさい!融合させちゃお!」


 と、投げやりな気分で魔石を『迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)』に近づけた。

 すると、魔石は紫の粒子となって剣に吸い込まれていった。

 そして、恒例のあの声による報告が行われた。


『【 迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ) 】と【 毒の魔石 】の融合を確認。これにより、斬撃に、毒最上位魔法【 万物を侵す猛毒(デッドリーポイズン・インベイド) 】が付与されます』


 なかなか物騒になったじゃないか、オイ。

 武器の改造マニアじゃないんだけどな、私。

 ふと『迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)』を見ると、刄の部分が綺麗な紫色に染まっていた。

 だが、毒素は振り撒いていないようだ。

 コレならご飯に困ることもないだろう。

 その事実だけで、私はご機嫌だ。

 るんるんで迷宮の奥へと進んでいった。




◇◇◇




 かなり進んでいった先に、大きい部屋が出現した。

 中には途轍もなく大きな気配がひとつ鎮座している。

 それなりに力のある魔物のようだ。

 その力の程は、迷宮鬼族ムエルテオーガと同程度あるいは少し勝るくらいである。

 大丈夫、今の私なら勝てる!

 ...多分。

 あやふやな自信を抱え、私はその部屋に足を踏み入れた。


 そこには、迷宮鬼族(ムェルテオーガ)と似ているが、体が大きい魔物がいた。

 分からなければ即鑑定。

 これ、迷宮での常識ね。


【 大鬼族(オーガ) 】

鬼族の進化系。

その力は凄まじく、岩をも砕く。

ただし、頭は鈍いため単調な攻撃しかできない。


 ふむふむなるほど。

 つまり私の敵ではないということだ!

 私もここに来てから、戦闘にも慣れたし、強力なスキルだってある。

 それなのに頭が鈍くて、力だけが強い奴に負けるなんて、ないない。

 まあ、命の取り合いをするわけだし、油断をすると、馬鹿力の攻撃をモロに食らうことになりかねない。

 そうならないためにも、真面目にやってやろうじゃないの!

 私は『迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)』を構え、戦闘モードに切り替えた。


 戦闘は、圧勝。

 私の華麗なる剣裁きの前に、大鬼族(オーガ)は為す術なく滅んでいったよ。

 最後なんて、一瞬のうちに首と四肢を切り捨てた後に心臓をひと突き。

 私の剣の才能にびっくりしちゃうわぁ。


『1フロアめのボス、大鬼族(オーガ)の撃破を確認。実績、【 鬼殺し 】を達成。これにより、固有スキル【 弑逆者 】を獲得しました。ついで、短時間でのボス撃破を確認。実績、【 時は金なり 】を達成。これにより、【 生存者(サバイバー) 】に含まれる【 思考加速 】の効果が増幅しました』


 びっくりした!

 ドロップ品を拾っていると、いきなりあの声が響くもんだから、腰を抜かしてしまった。

 と、『弑逆者』とな?

 固有スキルっていうくらいだから、強いのかな?

 これは冒険者に聞いたことなのだが、この世界に存在する『スキル』には、大きく分けて3つの種類があるらしい。

 先ずは、誰でも簡単に取得できる『コモンスキル』。

 次に、コモンスキルを一定レベルまで突き詰めることで獲得できる強力なスキル、『エクストラスキル』。

 私の場合は、コモンスキルを得るより先に、聞いたこともない『実績』とやらの達成で、エクストラスキルを得ていた。

 そして最後に、世界でその人しか持たないスキルの『固有スキル』。

 固有スキルは、似通ったエクストラスキルが統合されたり、自身が危機的状況に陥った際に獲得できる、スキルの頂点とも呼べる存在である。

 今回獲得したのは、固有スキル、『弑逆者』と呼ばれるもの。

 正直言って、効果もわからない、得体の知れないスキルである。


「まあ、魔物に出会した時に試せばいいよね」


 そう呟き、ドロップ品の『炎の魔石(大)』を剣に融合させつつ、ボス部屋の最奥に出現した階段を降りていく。

 その時、気配察知を掻い潜り、私を見張る影があった。

 だが、この時の私にそれを知る由はなかったのだった。

【 名前 】ユーリ・ラナバーズ

【 年齢 】?

【 性別 】女

【 能力 】固有スキル:生存者(サバイバー)

      権能:生存本能・気配察知・隠密・鑑定 

       極限回避・思考加速

      固有スキル:弑逆者

      権能:?

      魔法:火起こしの魔法

【 実績 】捕食者・一定生存・知的好奇心・危機管理

      迷宮の洗礼③・鬼殺し・時は金なり

【 耐性 】苦痛無効・毒無効

【 装備 】迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)

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