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2話 1日の終わりまで

第2話、よろしくお願いします。

 ハフッ、ハフッ、うまぁ…

 私は、奥に進んだところに生息していた、『コカトリス』という魔物を丸焼きにして食べていた。

 見た目は鶏。

 中身は鶏なんかよりも美味しい。

 そういえば、さっきまじまじとコカトリスを見ていたら、『魔物の観察行動を確認。実績、【 知的好奇心 】を達成。これにより、エクストラスキル【 鑑定 】を獲得しました』と、あの声が告げていた。

 鑑定…ってなに?というのが私の素直な感想である。

 分からないことは放置するに限る。

 もも肉を食べ終えて、少し休んでいると、迷宮の奥から嫌な気配が漂ってきた。

 石短剣(ロックナイフ)を手に取り、臨戦体制を整える。

 今になって思うが、あの時の私、よくやったと思うよ、ホント。

 目を細め、意識を集中させる。


「ぐがぁ!」

「わっ」


 雄叫びと共に、私と同じくらいの大きさの棍棒が、振り下ろされた。

 闇から、ヌッと姿を現したのは、私の3倍はあろうかと思える大男。


【 迷宮鬼族(ムェルテオーガ) 】

『ムェルテの迷宮』にて突然変異を起こした鬼族(オーガ)

通常の鬼族(オーガ)に比べると小柄だが、内に秘めたるパワーは鬼族(オーガ)のそれを上回る。

『ムェルテの迷宮』内では中位の存在にあたる。


 なんか出た。

 これが『鑑定』なのかな?

 私のポンコツ演算では、一定時間見れば発動するという結論が導き出された。

 ドゴッーー

 

「きゃあっ!」


 突如、鬼族(オーガ)左のパンチが私を捉え、大きく吹き飛ばした。

 碌な防御もできなかった私は、無様にもゴロゴロと転がり、止まる。

 呼吸ができない。

 これが『恐怖』か。

 そう認識すると、またしてもあの声が聞こえてきた。


『相対する敵の実力を見抜き、正しい恐怖を抱いたことを確認。実績【 危機管理 】を達成。これにより、エクストラスキル【 極限回避 】及び【 思考加速 】を獲得しました。また、スキルの条件を満たした為、エクストラスキル6つを統合、固有スキル【 生存者(サバイバー) 】を獲得しました。これにより、【 生存者(サバイバー) 】に含まれる権能の効果が増幅強化されました』


 何やらくどくどと長ったらしい説明があったのち、私の中のモヤモヤがひとつに纏まる感覚を覚えた。

 あのモヤモヤが、エクストラスキルなるものなのだろうか?

 そのひとつに纏まったものは、今までモヤモヤとしていたものと違い、明確に形を作っているように思えた。

 丸く、ところどころに突起がある。

 その突起は、小さいものが3つ、大きいものが3つであった。

 それの形を正しく把握すると、私は、固有スキル『生存者(サバイバー)』を理解した。


「もう、負けないもんね」


 固有スキル。

 それは、その人しか持たない、世界にひとつ(オンリーワン)の強力なスキル。

 私は、『生存者(サバイバー)』を本能で完全にコントロールし、発動する。


「思考加速」


 数百倍に引き延ばされた時間の中で、オーガを観察する。


(こいつ、力が強いくせに、速い…でも、弱点がないわけじゃない。狙うべきは…関節)


 石短剣(ロックナイフ)をキツく握りしめ、地を蹴る。

 接近中もオーガは攻撃してきたが、その全てを『極限回避』で躱わす。

 さっきのオーガの攻撃で、『生存本能』の効果が発動し、極限状態に陥った私の能力は底上げされていた。

 傷も強化された『生存本能』の新効果、再生の権能で塞がっている。

 完全回復した私の前に、もはや迷宮鬼族(ムェルテオーガ)なぞ敵ではない!


「いっけぇ!」


スパンーー


 ひと呼吸の間に、迷宮鬼族(ムェルテオーガ)の踵のところの腱と膝裏を断ち切った。

 それを受けて力無く倒れ込む迷宮鬼族(ムェルテオーガ)

 それでも腕の力だけで立ちあがろうとしたから、肘も切ってあげた。

 モゾモゾと芋虫の如き動きしかできなくなった迷宮鬼族(ムェルテオーガ)は、恐るるに足りない。

 石短剣(ロックナイフ)でうなじを削いで、私の勝利が確定したのだった。


「なんとか勝てたぁ〜」


 私は壁にもたれかかり、そのまま床にへたり込む。

 斃した迷宮鬼族(ムェルテオーガ)が光の粒子となって消えていく。

 跡には、『迷宮の短剣(ムェルテソード)』と呼ばれる短剣(ショートソード)がドロップしていた。

 鑑定結果はこんな感じ。


【 迷宮の短剣(ムェルテソード) 】

稀に迷宮鬼族(ムェルテオーガ)からドロップする短剣(ショートソード)

その名の通り、『ムェルテの迷宮』でのみドロップする。

他の武器と融合させることでさらに強力な武器へと変化する。


 なかなか面白そうな武器だ。

 試しに私の持ってる石短剣(ロックナイフ)と融合させてみよう。

 …どうやるのかはわかんないけど。

 とりあえず重ねてみよう!

 やり方がわからないなら探せばいいじゃない!

 そう思い、手に持っていた石短剣(ロックナイフ)を『迷宮の短剣(ムェルテソード)』に重ねる。

 すると、『武器の融合の申請を確認。【 迷宮の短剣(ムェルテソード) 】及び【 石短剣(ロックナイフ) 】の融合を開始。成功しました。これにより、【 迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ) 】に融合変化しました』と声が響き、2本の剣が1本に融合された。

 というか、宝剣ってなによ。

 私が素材にしたの、石なんですけど。

 と、とりあえず鑑定。


【 迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ) 】

精製前の中型魔石からできた石短剣(ロックナイフ)と『迷宮の短剣(ムェルテソード)』を融合させた片手剣。

これには、闇の属性が付与されていて、斬撃が最強の暗黒魔法、『万物を呑む闇の深淵(アビス・デ・トラガ)』を纏うようになる。


 なんだかとても凄いということは分かった。

 いや、それしか分からなかった。

 ま、まあいいか。

 どうせ使うんなら強い方がいいし。

 そんなことを思いつつ、私は剣を拾う。

 新しい剣、『迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)』は、石短剣(ロックナイフ)よりも私の手に馴染んだ。

 リーチも伸びてるし、これなら今まで以上に戦うことができそう。

 私はその宝剣を手に携えて、迷宮の奥へと進んでいった。




◇◇◇




 奥に進むにつれて道の構造が複雑になっていった。

 もちろん、角待ちをしていた卑怯な魔物も潜んでいる。

 ほんとに、『気配察知』がなかったら今頃死んでると思う。

 いや、ホントに。

 それに、それなりに奥の方に行ったからか、中の下位の強さの魔物がチラホラと見えるようになってきた。

 まあ、そのどれもが、中の上である迷宮鬼族(ムェルテオーガ)には及ばなかったんだけれど。

 つまり、この迷宮には私の敵は存在しない!

 …そう思っていた時期が私にもありました。

 私の前で威嚇行動を取っているのは、迷宮百足(ムェルテムカデ)という、精々中の下の魔物だ。

 こいつ、迷宮鬼族(ムェルテオーガ)よりも弱い癖して、足がやたら速い。

 攻撃自体は『気配察知』で、なんとか受けているけど、毒を吐いてくるのが厄介極まりない。

 一応は斬撃に纏われる『万物を呑む闇の深淵(アビス・デ・トラガ)』中和しているけど、全て防ぎきれているわけじゃない。


「くる…しい……」


 もう立っているのがやっとだ。

 そして、ムカデの攻撃に対して、一瞬対応が遅れてしまった。


「うああ…」


 ムカデに巻きつかれ、思い切り締め付けられる。

 その上、首筋に噛みつかれ、直に体内へ毒を注入される。

 その痛みは想像を絶した。


「たす…け……て………」


 こんなのが最期か…

 意識を手放しかけたその時、またもあの声が聞こえてきた。


『短時間で多量の毒の摂取と苦痛の体感を確認。実績【 迷宮の洗礼③ 】を達成。これにより、【 苦痛無効 】及び、【 毒無効 】を獲得しました』


 そして、たちどころに痛みと毒が引いていく。

 意識も明瞭としてきた。

 後は簡単なお仕事である。


「さっきはよくもやってくれたわね!これ、お返、し!」


 手首を跳ね上げてムカデの胴を切る。

 それにより、ムカデが私から離れた。


「さあ、とどめだよ!えーいっ!」


 完全にこちらのペース(一発逆転だからそんなものはない)に落とし込んだ私は、そのままムカデを頭から縦に切り裂いた。

 ムカデはそれで死んで、ドロップ品を落とした。

 ドロップ品は、毒の魔石。

 …何に使うかも分からないので、正直いらない。

 何はともあれ、ご都合耐性を獲得できてよかったよ、ホント。

 流石に疲れた。

 今日は休もう。

 私は、気配察知をビンビンにして眠りについた。

【 名前 】ユーリ・ラナバーズ

【 年齢 】?

【 性別 】女

【 能力 】固有スキル:生存者(サバイバー)

      権能:生存本能・気配察知・隠密・鑑定 

       極限回避・思考加速

      魔法:火起こしの魔法

【 実績 】捕食者・一定生存・知的好奇心・危機管理

      迷宮の洗礼③

【 耐性 】苦痛無効・毒無効

【 装備 】迷宮の宝剣(エスパダ・デル・テソロ)


 一気に進んだね


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