17話 やべぇやつに目をつけられた
短め
「ストーップ!」
私が、この2人をどう抑えようか考えていると、大声でそう叫ぶ男がいた。
私とは反対側にいたその男は、アスタと戦っていた女の服と似たようなデザインの服を着ている。
お仲間だろう。
「あ?イーザル、文句あるわけ?」
「ありますよ!あれほど街中で暴れるなと言ったのに!」
「ごめんごめん、コイツが強くってさ」
「ごめんじゃありません!」
お母さんかな?
そんなやりとりが交わされる中で、アスタは、肩をぱんぱんと払いながら、こちらに戻ってきた。
その顔には、『ざまあみろ』と言う表情が浮かんでいる。
「あの手の輩は非常に面倒ですね。殺してしまおうかと思いましたよ」
その気持ちは、分からんでもない。
いくら戦闘が好きだと言っても、場所は弁えるべきなのだ。
それを言うならアスタもだけど、戦いの衝撃波を極力逃すようにしていたから、あまりとやかくは言わないでおくことにした。
「ま、アスタもあんまり熱くならないでね」
「善処します」
「じゃあ、ケバブ買って帰ろ」
「はい」
そうして、何事もなかったかのように、人がはけてしまったケバブ屋台に歩を進めたのだが、さっきのイーザル、というやつが声をかけてきた。
「この度は、私の上司が面倒をかけて申し訳ありません…」
右手には、女の襟首が握られている。
この男ならしっかり手綱を握ってくれるだろう、そう直感で感じた。
手のかかる問題児をしっかりと御すことの出来る凄腕お母さんみたいな雰囲気が漂っていたし。
「おい、ガキ!お前のせいで楽しい時間が台無しじゃねぇかっ!」
「黙ってください!あなたねぇ、街の被害わかってるんです?ただでさえ金に無頓着すぎて万年金欠のあんたじゃ到底払えない額の損害ですよ、これ!」
「えー、でも、どうせ国が補填してくれんだろ?」
「んなわけ!」
ボカっと、男が結構な力で女の頭を殴りつけた。
いくらあの女が強いとはいえ容赦なく殴れるとは…恐れ入った。
というか、なんで私はこの女の不興を買ってるんだ?
私なんかしたっけか。
ずっとアスタとこの女の戦いを見てるだけだったんだが…
あ、それが邪魔だったとかかな?
じゃあ謝っとこ。
「ええと…戦いの邪魔してごめんね?」
「ッ!ユーリが謝ることじゃありませんよ!」
「え?でも戦いの邪魔しちゃったなら謝っとかないと」
「こんなゴミに謝らなくても結構です。ほら、ケバブ買って帰りますよ」
あ、そうだ、ケバブだ!
私、ケバブ食べたかったんだ。
…あ、屋台吹き飛んでら。
店主のおっちゃん、呆然としてるなぁ。
でも肉は生きてるっぽいね。
なら問題なしだ。
「おじさん、ケバブ2人前ください」
「うぇっ!は、はいよ…」
おっちゃんは、心ここに在らずといった感じで肉を削ぎ、袋に詰めて渡してくれた。
衝撃波で完全に冷めきってはいたものの、しっかりと美味しかったので、私は満足だ。
まあ、最後の最後まで割と恨みがましい目つきであの女に見られていたのだが。




