13話 迷宮の最後
久々の投稿になります。
もし待ってくれていた方がいたならすみません
アスタの言った通り、ゾンビやらスケルトンやらは、『昼の夢』による始原光魔法で、後にチリも残さずに消え去っていった。
それが新感覚で、随分と気持ちがいい。
というか、今更だけれど、どうしても私は迷宮攻略なんてしているんだろう?
「戦闘中に考え事はいけませんよ、ユーリ」
むむむと悩む素振りを見とめたアスタが、私を窘めてくる。
「わかったよ、アスタ。万物を照らす神の閃光!」
また、向かってきた骸骨の魔物を跡形もなく消し去る。
けれども、やはり、気になるものは気になるので、結局理由もわからない迷宮攻略の動機を探すのだ。
まあ、最終考えても答えが出てこなかったから、頭から追い出した。
理由なんて、後からいくらでもつければいい、そう考えたからでもあった。
「そろそろご飯にしましょう」
3階に潜ってしばらく経った頃、アスタがそう提案してきた。
確かに、この階層に来てから、何も口にしていなかった。
人体というのは不思議なもので、食事に意識を向けた途端にお腹が鳴り始めた。
「そうだね、なんかいいものある?」
「迷宮豚頭族の肉なら大量にありますね」
「じゃあそれ焼こっか」
「はい。じゃあ、1番柔らかい部位を焼くとしましょう」
私とアスタは、腹の虫が鳴き止むまで、柔豚のシンプル焚き火焼きを堪能した。
結局、その日はそこで眠った。
アスタの闇結界は万能で、外からの近くを絶対にカットするというものだった。
正直羨ましい。
私もいつか使えるようになるといいな。
さて、出てくる魔物も依然としてスケルトンやゾンビしかいなかったので、ボス部屋までの話はやめておく。
昼の夢でひたすらアンデッドを消し炭にする話なんて誰も興味ないだろうし。
このフロアのボスは、というより、この迷宮のラスボスは、真っ黒な鱗で全身を覆ったドラゴンだった。
大きさは、多分、貴族様が住むお屋敷と同じくらい。
相当な大きさのそれは、私たちを冷えた目で見下げていた。
「こんなトカゲ、私が通った時にはいなかったんですがねぇ」
「アスタなら、勝てる?」
「余裕でしょう」
「じゃあ、私が戦うね」
「どうぞ。危なくなれば加勢いたします」
こんなおっきな獲物、楽しまないほうが損だ。
アスタと2人でやると、その楽しさが半減しちゃう。
…いけない。
迷宮に入ってから戦うことしかしてなかったから、戦闘が娯楽になってる。
まあ、そのスタンスはこの迷宮で生き残っていく上では必要かもしれない。
「コラーダ」
私は、魔剣コラーダを呼び出す。
というより、変形させて腕輪にしたものを剣に戻したというほうが正しい。
「私の新しい武器の実験体になってね」
私は、コラーダを、鈍く銀色に輝く鎌に変化させた。
鎌刃の切先が地面を穿ち、蜘蛛の巣状の亀裂が走る。
魔鎌コラーダ。
それがこの武器の名前だ。
剣を鎌に変えただけの、安直な名前だけれども。
『GRRR…』
私が戦う意思を示してみせると、黒い竜は、低く唸って、のそりと体を持ち上げた。
その全身から放たれる重圧が、私の骨を軋ませる。
そして、そのプレッシャーに耐えるために、この体の底から湧き上がってくる確かな意思を持った熱。
たまらない、たまらないよ。
私は、コラーダを地面から抜き、スッと竜に向けた。
「さあ、一緒に踊ろう!」
私は、一息に、黒竜に向かって飛んだ。
私は、いつものように、『知恵者』を発動させる。
エクストラスキル7個分の能力が詰まったこの固有スキルは、はっきり言って強い。
実際、思考加速や能力増強を駆使することで、音を置き去りにするほどの黒竜の攻撃を躱し、防ぐことができていた。
コラーダを通じて伝わってくる確かな衝撃が、私の闘争本能を掻き立てる。
「じゃあ、今度はこっちから…!」
私は、2階層のボスを破った時に手に入れた、破盾者を使う。
これは、私の持つ知恵者とは違い、純粋な固有スキルだ。
つまり、エクストラスキルの寄せ集めではないと言うことである。
効果はなんとなくわかる。
私の攻撃に対する防御が、意味をなさなくなるのだろう。
それが、ガードしていなくて、外皮の硬度に頼った防御であったとしても。
「せいっ!」
一瞬の隙をつき、私は、黒竜の懐に潜り込んで、コラーダを薙ぐ。
ブォンと、重く空気を切る音が鳴り、一切の手応えなく、黒竜の脇腹を一文字に切り裂いた。
『GUROAAAAAAA!!!』
痛みに悶え黒竜は絶叫する。
その巨体は、狭い空間で踊り狂い周囲の柱を崩し、壁を割り、天井を裂いた。
このフロアでボスとするにはいささかサイズ感が間違っているのでは、と思う。
「ま、それが手を緩める理由にはならないけど!」
悶える黒竜は隙だらけだ。
私は、うまく黒竜のジタバタを躱して、次々に切り裂いていく。
巨体故か、切るたびに溢れ出す血の量が尋常じゃない。
黒竜が、動くのもやっとになるくらいまで切りつけた時には、コラーダには血に塗れていない部分はなく、私も、真っ赤に染まり上がっていた。
「強そうだったけど、アスタより弱いかな?」
あれだけの重圧を放っておきながら、あっさりしたものだ。
私は、ざくりと首を刈り取った。
「お見事です、ユーリ」
「あ、アスタ〜、勝ったよ!」
「ええ、お疲れ様でした」
ちょうどその時、重たい音を立てて、扉が開いた。
この先に何があるのだろう。
私とアスタは、その扉に向け歩いていく。
黒竜を屠って上機嫌だった私は、アスタが苦い顔をしているのに気が付かなかった。




