10話 アスタとご飯
まったりパート、お楽しみに
アスタは色んな話をしてくれた。
ちょっとした雑学から、なんでそんなこと知ってるの?と思わず叫びたくなるようなものまで様々だ。
「ふぅん、じゃあ、この迷宮は元々屋敷だったの?」
「そうなのですよ、ユーリ。あれは確か、200年ほど前のことでしたね」
クスリと笑みをこぼしながら、私に答えを返してくる。
その笑顔はどこか懐かしい感じがした。
「そういえば、なんで私なんかに従うつもりになったの?」
ふと頭をよぎった疑問を率直にアスタへとぶつける。
アスタは“三魔帝”というくらいだし、かなり高位の存在だと思ったのだ。
そんな存在が私に従うなんて、何か絶対裏があるに違いない。
「それは、簡単な事です。ユーリが知恵者を持つ限り、私はユーリに勝てないからです。それに、私は貴女を気に入っているんですよ」
柔和な笑顔を浮かべそう答えるアスタ。
とても悪魔とは思えない安心感のある笑顔だ。
それを見ていると、裏があるだろうという考えがバカらしくなってきた。
「ふーん…ねぇ、私って、そんなに強い?」
「ええ、それはとても。私の知る限り、他の三魔帝を含んだ悪魔にも、ユーリレベルの猛者はいませんよ」
「…アスタって、本当に国を滅ぼしたことがあるの?そうは思えないんだけど」
「少々勘違いをしているお馬鹿さんがいましたからねぇ。勘違いを正してやったまでです」
腐っても悪魔、ということだろう。
私は、手に持っていた迷宮豚頭の肉を口に放り込んだ。
やはり、1人で食べるよりも誰かと食べる方が美味しく感じる。
アスタも焼いた肉をどこから取り出したかわからないナイフとフォークで、綺麗に切って食べている。
学も教養もない私から見ても、その所作は上品だと感じられた。
「アスタって、なんか悪魔じゃないみたい」
これは私の偽らざる本音であった。
「嬉しいことを言ってくれますね、ユーリは。これだからウィーナの系譜は大好きなのです」
訳のわからないことを言ってにっこりと笑うアスタ。
ウィーナの系譜とはなんぞや?
今の言い方だと、私の先祖にウィーナっていう人がいたことになるけど、そんな人、親からも聞いたことがないしなぁ…
単に言わなかっただけかもしれないけど。
「ほら、早く食べないとせっかくのお肉が冷めてしまいますよ」
「そうだね、ありがと」
黙りこくった私を見かねてか、そう促してくるアスタ。
なんだかお母さんみたい。
アスタと一緒だととても強い安心感がある。
おっと、のんびりしてる暇はないようだ。
かなり上位の気配後近づいてくる。
「ここは私に任せてください、ユーリ」
「お願いするよ」
「フフフ、感謝しますよ」
迷宮の奥から姿を現したのは、これだ。
【 地龍 】
原始の三大竜より派生した、上位龍族。
ただし、上位と言っても原始の力は隔絶しており、これより上位の龍王族とならないと、原始の三大竜とまともな勝負も不可能。
肉はとても美味である。
どうやら美味しいらしい。
これはアスタには勝ってもらわないと困る。
「アスターっ!ソイツ美味しいらしいから、チャチャっとやっつけちゃって!」
「お任せを、ユーリ」
アスタは右腕を地龍に翳し、切取者を発動させる。
切取者は、空間を切り取って隔離し、その空間を意のままに操ることができる強力なスキルだ。
自分と同格、もしくは格上に対しての発動だと完全に効果を発揮できないが、格下への発動ともなると、制約などないに等しい。
この空間に囚われた者は、抵抗もできずに捻り潰されたり、引きちぎられたり、兎に角、抵抗もできずに死ぬのがオチだ。
とはアスタの話。
見るからに、地龍よりもアスタの方が強い。
となると、もう抵抗する術は地龍には残されていなさそうだ。
次の刹那には、地龍はブチっと潰れてしまっていた。
「終わりましたよ、ユーリ。おや、肉がドロップしてますね」
「そう、それ!早く食べよ!」
「………………ええ、頂きましょう。こう見えて私、美食家なのですよ」
「それ今言う必要あった?」
「フフフ、ありませんでしたか?私は美食家故、調味料を常に持ち歩いている、と言いたかったのですが…」
「分かるかそんなもん!」
少し間が空いた気がするが、多分気のせいだ。
他愛のない会話をしつつ、ドロップした肉塊を手のひら大にスライスしていく。
ちなみに、余った肉塊はアスタの切取者の権能、異空間収納の能力で保管してもらった。
「おおっ、これはとても美味ですね!」
「美食家さんのお墨付き、いただきました!じゃあ私も!」
私は、ドラゴンを塩胡椒で焼いただけのシンプルなステーキにかぶりつく。
これは…とてもうまい。
それしか語彙が出なくなるほどには美味しい。
それから強めの眠気に襲われて、私は眠ってしまった。
ここに書くのが若干めんどくなったから数回に1回の割合でします




