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1話 はじめに

第1話、よろしくお願いします。

 私はとある村に生まれた、ただの女の子だった。

 唯一違うところを挙げるなら、つい先程親に迷宮へと捨て置かれたことだろう。

 …だうしてこうなったんだぁぁ!

 話は数日前に遡る。

 

「ユーリ、こっちへおいで」

「はーい!」


 私は父に呼ばれて畑仕事の手伝いをしていた。

 普段から兄と父と一緒に畑仕事をしているから、知らず知らずのうちに、村の同年代の子達と比べて頭ひとつ分飛び抜けて力が強かった。

 そんなことは今は置いておいて、その兄のうちの1人が、魔物に襲撃されたのだ。

 その魔物は村の兵士たちの手によって処理されたが、兄は重症。

 当面の療養を余儀なくされてしまった。

 もちろんそれは、家族全員で働いて生計を立てている私たちにとっては大打撃。

 ここまでくればお分かりだろうが、末っ子かつ女の私は口減しで捨てられたのだ。


「だからってなんで私なのー!」


 まあ、家族の考えも分からなくはない。

 私がいるのといないのとじゃ天と地ほどの差がある。

 …この言葉を悪い意味で使うことになるとは思っていなかった。


「キュッ!」


 入り口付近で呆然と立ち尽くしていると、迷宮の奥の方から鼠の魔物、テラーラットがこちらにやってきた。

 その時、ぐう、とお腹のなる音がした。

 無論、私の音である。


「お、お肉?」


 そう判断した私は、自分でも驚くほど速かった。

 そこら辺に落ちている鋭く尖った手のひらサイズの石を拾い、向かってくる犬くらいの大きさの鼠の目を目掛けて突き立てる。


「きゅいあああ!」

「暴れる…な!」


 目から石を引き抜き、頭蓋に突き刺す。

 流石に固かったが、ゾブリ、とかなり奥の方まで突き刺さった。

 それでもまだ抵抗してきたので、その刺さった石を背中の方へと思い切り引き裂いた。

 テラーラットは『キュイ』と短く鳴いて、絶命。

 肉をドロップした。

 迷宮で発生する魔物は須く『ドロップ品』を落とす。

 肉だったり、牙だったり、あるいは魔力の籠った石、魔石だったり、多種多様なドロップ品が存在する。

 全て、村を訪れる冒険者から聞いた話だけど。

 とりあえず今はご飯だ。

 生きていく上で欠かせない、火起こしの魔法を使い、焚き火を作る。

 そこに、そこら辺で拾った棒で作った肉を吊り下げる道具をかける。

 これで準備は完了だ。

 私は、肉を火にかけ、焼き上がるのを待った。


 美味しい。

 味付けなんてしてないけど、それなりに美味しい。

 ダンジョンだと、解体する手間もかからないし、普段はお肉にありつけなかったから、もうここに捨ててくれてありがとう、そう思ってしまいそうだ。

 ハモハモと肉を食べていると、不思議な声が響いた。


『迷宮の魔物の捕食を確認。実績【 捕食者 】を達成。これにより、エクストラスキル、【 生存本能 】を獲得しました。武器【 石 】の使用を確認。石を石短剣(ロックナイフ)に進化…完了しました』


 エクストラスキル?生存本能?石短剣(ロックナイフ)

 なんだろ、それ。

 それに今の声も、知らない…いや、1度だけ聞いた覚えがある。

 ただそれだけで、どういうものなのか、わからない。

 

「ま、気にしてもしょうがないよね」


 親に捨てられたことなど、とうに気にならない。

 今は生き残る方法を考えるべきだ。

 私は、石短剣(ロックナイフ)なるものを携えて、迷宮の奥へと足を運んだ。




◇◇◇




 石短剣(ロックナイフ)は、かなり私に合った武器だった。

 切れ味は抜群で、取り回しも利く。

 重くなく軽くなく、ちょうど良い待ち心地だった。

 さて、私は村の近くに、迷宮があることは知っていたが、中がどうなっているかは知らなかった。

 故に、捨てられたのにも関わらず、知的好奇心マシマシで迷宮内部に足を踏み入れた訳だが、その選択をした過去の自分をぶん殴ってやりたい。


「多い!こいつらしつこいーっ!」


 私は、大量のデスバットに追いかけられていた。

 個々の大きさは大したことないのだが、いかんせん数が多すぎる。

 と、ここでまたしてもあの声が聞こえる。


『一定時間の逃走の成功を確認。実績【 一定生存 】を達成。これにより、エクストラスキル、【 気配察知 】及び【 隠密 】を獲得しました』


 何やらまたエクストラスキルとやらが増えたらしい。

 とりあえずどうにかしてこの場を切り抜けないと!

 そういえば、獲得したスキルに『隠密』ってあった筈。

 何はともあれ、使うしかないでしょ!

 私はわからないながらも、隠密発動、と念じる。

 すると、先程までの大量の羽音が嘘みたいに消え去ったのだ。

 その現象を受けて私のない頭で出した結論は、『私は透明人間になれた!』ということである。

 スキルの能力的にはなんら間違いではなかったのだが、この時の私にそれを知る術はなかった。

ここは、主人公のステータス欄にする予定。


【 名前 】ユーリ・ラナバーズ

【 年齢 】?

【 性別 】女

【 能力 】エクストラスキル:生存本能

      エクストラスキル:気配察知

      エクストラスキル:隠密

      魔法:火起こしの魔法

【 実績 】捕食者・一定生存

【 装備 】石短剣(ロックナイフ)

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