第二のスキル Paste
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「それじゃあヒナタ、今度は俺の心の中で思ってる事をコピーしてみて」
「うん、分かったよ。おじさん」
俺とヒナタは2メートルほど離れ、お互いに手のひらを差し出すように向かい合った。側から見たら宇宙人同士が交信していると思われそうだ。
俺は心の中でこう思う「おじさんじゃなくて、久東凛だよ」
「……ヒナタ。コピーして」
「……へい。……【コピー】」
「……じゃあ、ペーストして」
「……へい。……【ペースト】」
「……どう?何か伝わった」
「……特に何も変わらないかな・・」
「……うん。…」
「プククククッ」
ヒナタは思わず吹き出した。この状況が不思議すぎたのだろう。笑ってくれて良かった。落ち込まれるより全然いい。
しかし、失敗した。何でだろう?ペーストするというのがコピー成功の条件じゃなかったのか?
久東は再び考える。なぜステータスのコピーに失敗したのか。やはり抽象的なもののコピーは出来ないスキルなのか?
ふと地面に目を向けるとさっきの小石が3つに増えていた。という事はつまり俺の思考を【コピー】することに失敗して、前回コピーされた小石がそのままもう一度【ペースト】されたということだ。
つまり、今回は【コピー】に失敗しているということになる。
「ねぇ、おじさん。もういいよ。ヒナタ、そろそろ帰らないと孤児院のおじさんに怒られちゃう」
「あぁ、ごめんごめん。もうそんな時間なのか」
気づけばあたりは夕焼けに焦されて、赤く染め上がっていた。水面に映る2人の影を赤い光が優しく伸ばす。
「ヒナタね。今日最悪な一日かと思ったけど、とっても楽しかったよ。だから、落ち込まないで!コピーの仕方分かっただけでヒナタ大進歩だよ!」
こんな小さい子にまで、気を使われて何をしてるんだ。俺は。やはり俺は頭が悪い。この子のスキルの使い方一つわかりゃしないんだ。ホント申し訳無い。
「他の先生とか学者さんはメジャーなスキルの研究に忙しいからね。コピーもペーストも誰も分かんないの。使い方。だからしょうがないよ。でも、これからは泥団子とか綺麗な小石とか美玲ちゃんの綺麗なカスタネットとか、たくさんコピーできるんだもん。ヒナタ嬉しい!」
……小石、泥団子。……そうか!分かったかもしれない。コピーの条件が。
「おい、ヒナタ。今までコピーするものは【必ず手で触れてなかった】か?」
「え?どういう事?」
「小石とかカスタネットとか。ヒナタがコピーしてるものは全部ヒナタが触れてるものなんだ。さっき俺の思考をコピーした時も俺は【君の頭を撫でていた】。つまり、ヒナタはコピーする対象元と物理的に接触してる状態でコピーする必要があるんだ」
「難しくてよくわかんない」
「触ってるものなら、何でもコピー出来る凄いスキルって事だ!」
「え?よく分かんないけど、すごいのね!!イェーイ!ヒナタのスキル、本当は凄いのね!!」
「よしっ!早速やってみよう!」
ヒナタと俺は手を繋いだ。ヒナタの手は小さかったけど、暖かかった。
カア〜カア〜と、どこかで烏が泣いている。
ヒナタに帰ってもらおうか、そう思っていた矢先の出来事であった。
「コピー……そして、ペースト……」
「よし!それじゃ一回公民館の機械でステータス値が変わっているか見に行こう!」
二人は公民館に急いだ。河原から歩いて五分ほどの所にある。その証明写真をとるような電話ボックス型の機会に入れば、数分でリアルタイムのステータスを確認することが出来る。
数分後、ヒナタはそこから出てきた。
「上がってるよ!おじさん!」
診断結果の紙を片手にヒナタが走ってきた。それをすぐさま見る久東。
■如月ヒナタのステータス
学生 Lv3
HP 30/30
攻撃力 16
防御力 16
速攻性 16
命中力 16
知力 5
創造性 5
【スキル】
名称 : コピー
属性 : 無所属
Rank : D
知力や創造性は変わっていなかったが他のステータス値は久東の分プラスされていた。
脳に関わる部分だけはさすがに変わらないのだろうか?
「俺のステータスが小さいからあんまり変わんないかもだけど、合ってるぞ!ヒナタ!」
ヒナタはステータスのコピーに成功した。
ここから加速度的に久東の実験は進んでいくことになる。
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【ヒナタの戦果】
・コピーの仕方、完全理解
・おじさんのステータス
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