日常
「いやぁ、すいませんね。いきなり押しかけたのに入れてもらっちゃって」
久東は正座の格好で園児たちの制服を畳む。小さな薄い青い服がだんだんと積み重なっていく。
「いえいえ、こちらこそ来ていただいて嬉しいですよ。いきなりの台風じゃからの。困ったときはいつでも来てください」
久東は今、孤児院わかばのいえに来ていた。一次試験が終わりしばらくの間、河原でだらだら過ごすか図書館で勉強しているかの2択であったが、今晩台風が来るとのことで、わかばのいえに泊めてもらえることになったのだ。
「ヒナタの奴も喜んでいました。一次試験突破したーってね。嬉しそうに報告してくれましたよ」
園長は机に座り帳簿をつけている。丸いメガネが時折ずれ落ちてくるのを中指の腹で戻す。
「いや、ホントヒナタは頑張りましたよ」
園長が記帳を止め、テレビを食い入るように見る。
「いやあ、世界会議ですか。お偉さんたちが集まって何をはなしてるんですかね?」
久東はそう園長に話しかけた。
「そうですな。偉い人が話し合って仲良くしてくれるのが一番なんじゃがなぁ。なかなかそう上手くいかないもんじゃな」
世界会議のニュースが終わり園長は再び記帳に戻った。
園児の洗濯物をたたみ終えた久東は積み木で遊んでいるヒナタのもとに向かった。
「おい!ヒナタ、何してるんだ?」
「今ね、嫁姑ごっこしてたの。旦那の帰りが遅いって怒る奥さんがチーちゃん、旦那の好きにさせてあげなよ仕事で疲れてるだからってのが私、旦那が土田くん」
「……随分と具体的なシチュエーションでやるんだな」
ヒナタはあいかわらず普通の園児として遊んでいたのであった。
「……で、ヒナタ。二次試験のお知らせはまだ来てないのか?」
「え?とっくに来てるよ」
「え?」
「え?」
とっくに来ている??
「おい!早く言わないか!そんな大事なことは」
「忘れてました」
ヒナタはおままごとを急遽抜け、鞄の元へ走っていった。
「ええと。ううんと。確か町田先生から説明があって。ええと」
ヒナタが懸命にカバンの中を漁る。松ぼっくりやドングリなど全く関係のないものが続々と出てくる。
「あっ!!あった!」
ヒナタがクシャクシャの紙を片手に走ってきた。
「これ!二次試験の案内だよー」
久東は紙を手に取り内容に目を通す。
『二次試験の案内 如月ヒナタ殿
如月ヒナタ様、一次試験の合格おめでとうございます。さっそくですが二次試験の案内を差し上げます。二次試験は実際のダンジョンで行っていただきます。
【ダンジョン大陸】での試験になります。ダンジョン大陸内のある国に行っていただきます。如月ヒナタ様はギデオンへ行ってもらいます。試験内容についての詳細はそこで現地のものから発表となります。
なお、今回の試験はチームを組んでもらいます。チームワーク、統率力も判断材料となるためです。如月ヒナタ様は最低でも2人以上、同行者を選んでください。期限は一週間後になります。
以上 』
というわけでダンジョン大陸に行きます
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