僕が欲しいもの
「ん〜ん〜。いいね。君達いいよ。こいつなんかより全然いいや」
町田先生らしきなにかはナイフを持つ手で地面に倒れた少年を指し示す。
「こいつはね、なんだっけ。そうだそうだ。何か土を操るスキルだったかな?まぁこいつでいいやと思って誘拐しようと思ったんだけど」
誘拐というワードを使っている時点でもう只者ではない。そしてこいつが何故かヒナタ達に興味を示しているのもなんだか嫌だと久東は思う。
「お前、誰かから依頼されているのか?スキル所持者を誘拐してこいって」
「うん、そうだよ。僕たちはそうやって生きているんだ」
「僕たちだと?誘拐してる奴が他にもいるのか?」
「そんなこと言ってないじゃん。僕たちみたいな強いスキルホルダーが依頼を受けてお金を貰う、そんな組織があるんだよ?聞いたことない?あれ?まだまだ僕たち知名度ない?もしかして?かなしーなー」
ペラペラとよく話してくれるおかげでボンヤリながらこいつの位置付けが分かってきた。誰かから依頼されてスキル所持者を誘拐している。そいつのはそんな犯罪を秘密裏に裏で行う組織の一味って事だろう。
「何でってスキル所持者を誘拐するんだ。そんなことしたら……」
「そんなことしたらダメって言いたいの?みんなやってるじゃん、そんな事。知らない?世界情勢。お国のために人を殺したら英雄なんだよ?人を誘拐するくらい可愛いものじゃんか」
久東はその反論に何も言い返す事は出来なかった。狂っているのだ、今。この現在が狂っているのだ。
「まぁ、予想するに。誘拐の理由はさ、実験だよね。スキル所持者の。各国やっきになってやってるからね。スキル研究。いくらでもサンプルは欲しいんだと思うよ」
「じゃあ、ヒナタ達、こいつらいらないな。こいつらは戦闘に向いてないスキル、無所属だ」
久東はなんとかこの人物からヒナタ達の興味を晒せたかった。何故か分からないが、この人物はヒナタ達に興味を示している。
「あー。やっぱ遅れてるね。この国のスキル学は。六代スキルも大切だけど、ある国ではね、もう次のステップに行ってるんだ」
「次のステップだと?」
ヒナタ達に後ろへ下がっておくように手を払い指示をする久東。こいつはもういつ襲ってきてもおかしくはない。
「次のステップはね、無所属さ。六代スキルの可能性は確かに高い。でも限界も見え始めたのさ。次のステップは無所属。無所属にこそ宝の原石が眠っていると考える国が出てきたんだ」
久東は傷を負った肩をさすりながら思う。こいつが悪なのか、そうでないのか。火野のようなはっきりとした憎しみも彼からは感じる事が出来ない。
「それ…もしかして……」
くるみが少し離れたところから呟いた。
「あれ?あの女は気づいたのか。そう、僕の依頼主は【国】だよ。僕はある国からスキル所持者を誘拐してきてくれって頼まれてるんだ」
久東は未知なこの人物に今のヒナタが勝てることに賭けるしかないのか、と思い始めた。おそらくこいつはもう……ヒナタのことを……
「僕はね、生まれつきスキルの潜在能力みたいなのがぼんやりと見えるんだ……特に君……君を持って帰ったら依頼主は喜ぶだろうなぁ」
ナイフの先の延長線上に立っていた人物はヒナタ……
ではなく、カレンであった。
「君たちの中で、君が1番すごいね。僕は君を持って帰ることにするよ」
カレンはゾッとして両肩を震える手つきでつかみその場に座り込む。
ヒナタじゃなくて、カレンだと??
久東はこの人物に何が見えているのか、全くわからなくない。
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