らしき何か
久東達一行はダンジョンの入り口付近にいるだろう先生を探して走り続ける。
「そろそろ着いたんじゃない?入り口付近」
カレンが両手を膝に置き、ゼエゼエと息を切らす。その時、だった。ジンが帰ってきた。
「おまんらの言う通り、カレンのプレート大量にばら撒いてきたったで。これが成功したらええな」
「おぉ、ありがとう。ジン、おつかさん」
ジンは今、ヒナタのリュック自身に付与されていた。
「あんた、いつのまに帰ってきたのよ」
「わしはくるみが「おかえり」って言うか自分で「ただいま」って言うか、どっちかしたらくるみの元に帰ってこれるんや」
「それで一仕事終えて帰ってきたんだ。便利ねー。あんた達」
くるみが言わなくてもスキル自身の意思で帰ってくることができる。完全自立型のスキルであることが異質であると久東は感じていた。スキル所持者の意思を超えて行動する事ができるからだ。
「とりあえず、早く先生を探しましょう。あんた達の作戦に私も協力してあげたんだから説明は後でもいいけど」
今回の作戦にカレンのプレートを使用したのだが説明するのが面倒であったのでカレンに説明はしていなかった。
しかし、カレン自身は自分の身の安全を確保する事が最優先だったのでそんなことはどうでも良かったのだ。カレンの説明は後でしてね、は事実上別に私は興味そこまでないわよという意味であった。
「そうだな。とりあえずやれる事はやった。今はクリアを最優先させよう」
****
一同は丸くなっているダンジョンの端に沿って歩く。入り口付近に先生がいるという事を予測して。
「ほんとにいるんでしょーね。先生」
「まぁ俺の予想に過ぎないけど。どう考えてもリタイアした参加者とか運ぶ際にも出口入り口は通るはずだからここら辺をグルグル回ってるのが一番会いやすいと思うんだけどな」
久東達は辺りに目を光らせながら歩き続ける。先生達はいないか?他の参加者はいないか?モンスターはいないか?様々ことに注意しながら探索を続ける。
そんな中、誰よりも早く異変に気づいたのはカレンであった。
「ちょっと見て。先の方で誰かいる!」
ヒナタが目を凝らしてみると、それは町田先生であった。
「あ!町田先生だよ!くーちゃん、誰か抱えてるけど!」
「やっぱりか、おそらくリタイアした人だったり脱落した人を運んでるんだ。町田先生にプレートを提出しよう!」
一同は一目散に町田先生の元へと走っていった。片手で小さな子供を抱える町田先生は俺たちに気づいたのか止まって待ってくれていた。
「せんせー!!!まってー!!」
足の速いヒナタが町田先生の元へ追いついた。
「あら?ヒナタじゃない?どうしたの?あなたもリタイアするの?」
「ううん?これ見て。先生」
ヒナタは町田先生にプレートを差し出した。ちょうどその頃、久東カレン達も合流した。
「えぇ?ヒナタがこんな数字のプレートを?信じられないわ!」
「第一のスキル ジャッジ」
町田先生は洞察のポーズをしてヒナタのステータスを見た。脇に抱えた参加者の少年をやや雑に地面に置いて。
「ステータスも大したことないのに、凄いわね。ヒナタ」
ステータスが大した事がない??久東は町田先生の発言に違和感を持った。火野のステータスをコピーしたヒナタは少なくとも参加者の中ではかなり上位のはずだ。
そう思った矢先だった。
町田先生が素早く胸ポケットからナイフを取り出し、ヒナタに襲いかかったのだった。
久東は急いでヒナタの腕を引き、寸前のところでナイフを避けさせた。
「おい!なにするんだ!」
町田先生はニヤニヤと笑うだけで返事をしない。こんな表情、前に見た町田先生ではない。
「………お前、町田先生じゃないな……一体、誰なんだ?」
町田先生らしきものはこう呟いた。
「よく分かったね。ザコのくせに」
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