Face
くるみと言われる少女はヒナタと同じ9歳くらいに見えた。背丈が似ている。黒髪のショートヘアを靡かせながら走ってこっちに近づいてくる。
「おーい!!くるみちゃ〜ん!!久しぶり〜!!」
「おぉ!!ヒナタか。こんなところで出会えるとは思えなんだが助けてくれんか!なんとかこいつから逃げたいんやー!!」
相変わらず関西弁のおっさんのような口調のくるみちゃん。見た目と口調があまりにも違いすぎる。
「ヒナタ、あれはお前の友達なのか?」
「うん!くるみちゃん!私の数少ない学校の友達!」
「くるみちゃんは普段からあんな口調なのか?」
「ううんー。今私が話してるのはジンだよー!」
「え?ジン?くるみちゃんじゃないの?」
「ジンはくるみちゃんのスキルだよ」
全く意味が分からなかった。
「ちょっと、何呑気に話してんのよ!くるみかジンかなんて今はどうでもいいでしょ!」
ここは確かにカレンの言う通りである。
「じゃあ、いつもの頼むわ。ヒナタ」
「へい」
【第一のスキル 風巻】
{ドッカアアアアアン}
火野戦以降、ステータスが急上昇したヒナタの放つ風巻は威力も大きさも今までのそれとは比べものにならないくらい大きくなっていた。
砂塵が立ち上り、三首ドラゴンは視界を一気に奪われる。その隙に久東はくるみちゃんを素早く抱え、近くの岩陰へと避難した。
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「ひっさしぶりぶりだね!くるみちゃん」
くるみちゃんと言われる少女は黒髪のおかっぱで白と黒のオーバーオールを身にまとう地味目な女の子だった。
「いやぁ、ヒナタがそんなに強ぉなっとるとは思わへんかったで。ほんま助かったわ」
関西弁でまくし立てるくるみちゃん……と思いきやよく見てみるとくるみちゃんは一切口を動かしていない。
「どう言う事だ?くるみちゃんは腹話術でもしているのか?」
「違うって!今話してるのはくるみちゃんのスキル、ジンなの!」
「いや、だからその意味がよくわから」
久東とくるみが言い争っていると、それを止めるべく、くるみちゃんの背負っている小さなリュックから関西おっさん風人形が突き出てきた。
半纏を着てハゲてて口髭も生えてる、でもちょっと愛らしい。そんな人形だった。
「わいがジンや!くるみのスキルによってこの世に生を受けたジンや!よろしゅう頼みますわ!」
人形はリュックを飛び出し、久東たちの前で話し出す。おもちゃが動く童話を見ている気分になる。
「これがわいのご主人様くるみのスキル、【Face】やで。くるみは【第一スキル ジン】って唱えながら触れた場所にこのわし、ジンを召喚できるんや」
くるみがコクンコクンとうなずく。どうやらくるみは話すのが苦手みたいだ。
触れた場所に人格を付与するスキル……久東が読んだどの本にもこんなスキルのことは書かれていなかった。
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