最終日
ダンジョンに朝が来た。久東は紺色のテントをひらりとめくり中を覗く。カレンとヒナタが身を寄せ合ってスヤスヤと眠っていた。
「こいつら、一昨日まで殺し合っていたとは思えんな」
久東は2人の体を揺らし起こす。2人ともなかなか起きない。
「おい、もうそろそろ起きてくれ。今日は動くぞ」
「……えぇもう朝?早くない?」
「……zzzzz」
スキル所持者ってロングスリーパーが多いのか?久東はメモしようかと一瞬迷ったがこの2人がそうなだけな気がしたのでやめた。
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「よーし!先生見つけてリタイア、リタイアよ!」
さっきまで眠い目を擦りながら愚痴愚痴と文句を言っていたカレン。何故かやる気に満ち溢れている。
「リタイアって、カレンからしたらスライムの森でじっとしてる方がもしかしたら安全だったかもしれないぞ。あと1日経てば試験は終わるんだ」
「何があるか分からないでしょ。もしとんでもなく強い参加者と会っちゃったらどうするのよ。火野ちゃんいない今、即死よ。即死。あなた達と一緒にいる方がまだ安全なの」
「ヒナタも火野に勝ったとはいえ、不安なところも多いぞ」
「ヒナタ、頼りにしてるわよ」
カレンがヒナタの肩を揉む。鼻息荒く腕を振り、ヒナタは自信に満ち溢れた様子で歩く。
「まっかせなさい!ヒナタがくーちゃんもカレンも守るからね!」
俺たち3人は、とりあえず円状になっているダンジョンの中心部に向かっている。おそらく他の参加者。そして先生達もここに多くいるのではないかと思ったからだ。
「……でも、なかなか誰とも出会わないわね。そもそも、いま何人くらい残ってるのかしら」
そう言われてみれば、もう二日経過して俺たちはまだカレンと火野以外の参加者には合っていない。激しい戦闘の末、もう残り参加者が少なくなっているパターンも考えられる。
「まぁ、今は進むしかないな」
「頼むから、参加者じゃなくて先生と出会いたいわー」
どんどん奥地へ歩を進める3人。次第にジャングルのような緑豊かな景色から土色の砂漠のような風景に変わっていった。
「ここはもうさっきまでの森林地帯じゃないな」
「そうね、ここからはスライム以外のモンスターにも警戒が必要よ」
とカレンが言った瞬間だった。3人の行先の遠くの方でとてつもない大きな物体が近づいてくるのが見えた。
「くーちゃん、あれ何?遠くの方でなんか見える」
いち早く異変に気づいたのはヒナタだった。その物体はどんどん猛スピードでこちらに近づいてくる。
「あれは……サラマンダーアンフェス!!」
「なんだそれ?」
「政府が開発したドラゴンよ!3首の!」
近づいてくる物体は3首のドラゴンだった。荒々しく地面を踏み鳴らし猛スピードでこちらに向かってくる!
「はやく、逃げましょうよ!何ボーッとしてんのよ!」
「いや、ちょっとよく見てみろ。なんか人もいるぞ」
久東が指さした先に、1人の少女が猛スピードでドラゴンから逃げ惑っていた。少女がドラゴンに狙われているようだ。
「あれー?!くるみちゃんだ!!」
ヒナタが大きく手を振る。くるみちゃんと言われた少女も手を振る。
どうやらヒナタと逃げ惑う少女は知り合いのようだ。
少女がこちらに気づき大声で叫ぶ。
「おい!おまんら、ちょっと助けてくれんか!?一緒にこいつを倒してくれへんか?」
……え?むちゃくちゃ関西弁じゃん!!それも声もおじさんだし?!!
久東は少女から発せられた声があまりにもおっさんだった事を信じることが出来なかった。
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更新しても何も反応がないとしんどいなぁと思います。
どれくらいしんどいなぁと思うか例えると「休日出勤」くらいしんどいなぁと思います。
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