町田先生は良い先生
「それじゃあ、ルールの方は理解できたと思うからみんなプレートの裏面に書いてあるダンジョンの入り口まで行くように!開始は今から15分後だ!何か質問がある奴は今のうちに私に聞きに来るように」
町田先生は早口で話し合えるとメガホンを隣の机の上に置いた。
各参加者は裏面のダンジョン入り口を確認し、移動を始める。
「おい、ヒナタ。裏面になんて書いてあるの?」
「W4って書いてる」
「ここがA1だから結構遠いかもな。早めに移動しないと」
「そうだね!」
ヒナタが走り出そうとするが、俺はヒナタの手を捕まえる。
「っち、ちょっと待ってヒナタ。入口行く前にやっておいて欲しい事がある」
「えぇ?何?くーちゃん」
「それはだなぁ」
ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ。
久東はヒナタに耳打ちをした。ヒナタはそれを聞いてニンマリと笑った。
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「ふぅ、なんとか説明を終えたわ。あの子たち、ちゃんと理解していればいいけど」
町田先生は今日の山場であるルール説明を終え、一息ついていた。
「せんせーい!質問があります!」
そこにヒナタがやってきた。
「あら、ヒナタじゃない。今回は参加出来てよかったわね。それで質問ってなぁに」
「この条件⑥ってどーゆーことぉ?」
「あー、わかんなかったか。ヒナタちゃん専用ルールみたいなところあるんだけどね」
町田は昨日の緊急職員会議を思い出した。ある先生がヒナタが最近コピーの成功頻度が飛躍的に上がっていると報告してきたのだ。今回のダンジョン演習において、もしヒナタのコピーが乱用されるようものならムチャクチャになってしまうため急遽作られた条件である。
ヒナタは町田先生の足に抱きつく。
「ねー、せんせー。これってヒナタがナンバープレートを【コピー】しちゃダメって事?」
「あらちゃんと分かってるじゃない。その通りよ」
「やっぱりそっかぁ。ヒナタ悲しい。コピーしちゃダメだし、ナンバー100の最下位だし」
「それはしょうがないのよ、ヒナタちゃん」
町田は少しヒナタに同情した。が、ルール上しょうがないことでもある。
「ねぇ、先生。ヒナタのステータスって本当にこんなに低いの?もう一回見て確認してほしい!ヒナタ絶対成長してる!」
「えぇ……ヒナタちゃん。最近見たばかりのはずよ」
「お願い!お願い!お願い!お願い!」
ヒナタは町田先生の足に捕まったまま大暴れする。
「ごめんね、ヒナタちゃん、私もこれから忙しいの・・・」
「分かった!じゃあね!」
「え?」
ヒナタはダッシュで去っていった。
「何なのあの子……もう少し落ち込むかと思ってたのに……」
町田先生は腕を振り猛スピードで走って帰るヒナタの背中を見送った。
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「くーちゃん!大成功した!」
ヒナタが汗だくで帰ってきた。そんなに焦る必要はないのだが。
「おっ!そうか。遠くで見てたけどお前演技上手いな」
「せんせーに抱きつくのは普段からやってるから!」
「先生に抱きつくのは迷惑行為だからしつけとして注意したいけど、お前のスキルを生かすという意味ではかなりプラスだ!お前はコピーするとき相手に触れている必要があるからな」
「そうだね!じゃんじゃん抱きつくよ!」
「コピー以外の時はダメだぞ!」
「へい!」
「それじゃ、【ペースト】だ」
「うん!」
ヒナタと俺は小走りでW4に向かいながら話す。
「【ペースト】」
ヒナタがペーストをした。これで町田先生のステータスを見るスキルがヒナタに備わった。
「おい、ヒナタ一回試してみたら?」
「そうだね〜」
「【第一のスキル ジャッジ】」
「どうだ?ヒナタ?見えるか?」
ヒナタは走りながらキョロキョロと周りを見渡す。
「すごーい!みんなの横に数字が見えるよ!ヒナタの横にもあるよ!町田先生のステータスもコピーしたからすっごい上がってる!!」
ヒナタはこれで町田先生のスキルである、人のステータスを見る力を手に入れた。これでわざわざ公民館に行かなくてもいい。
「あはは!くーちゃん、1ばっかりだ!」
ヒナタが腹を抱えて笑う。
ダンジョン入り口に向かいながらこっそりとショックを受ける久東であった。
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今日のヒナタの戦果
・町田先生のスキル 「洞察」
・町田先生のステータス
■如月ヒナタのステータス
学生 Lv5 → 学生 Lv10
HP 100/100 → HP 150/150
攻撃力 50 → 攻撃力 100
防御力 50 → 防御力 100
速攻性 50 → 速攻性 100
命中力 50 → 命中力 100
知力 5 → 知力 5
創造性 5 → 創造性 5
【スキル】
名称 : コピー
属性 : 無所属
Rank : D
※所持コピースキル【風体】【洞察】
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