保護者同伴につき
「現在、スキルと言われる能力が発見されてから50年余り経ったと言われている。スキル発見と共に各世界中にダンジョンと呼ばれる建物が突如として乱立しはじめる。各国は危険なダンジョンを探索するためスキル保有者の育成に力を入れている。ダンジョンもスキルも謎がまだまだ多いがスキルに関しては多大な人体実験により多くの事が分かってきた。その中でも特出すべき事項は戦闘に向いているスキルの傾向が分かり始めたことだろう。そのスキルは6代スキルと呼ばれ「火、水、風、土、雷、氷」である。戦闘向きともあって研究も盛んに行われている。他にも細かな属性は多く存在するが、どこにも属さないスキルは無属性とされる。無属性はスキル保有者が少ないため被験者が少なく研究効果が望めない。そのため誰も研究しない傾向にあるのが、スキル研究における大きな問題であ」
久東は読んでいた本を閉じた。
足元付近でヒナタがうるさい。
国会図書館から借りてきた本「スキル学の歴史」が頭に入ってこない。
「ねーってばー、一緒にいこーよ。ダンジョン!」
学校から帰ってきたヒナタはさっきからずっとこの調子だ。何やらダンジョンに行きたいらしい。
「なんだよー。帰ってきたと思ったらずっとそればっり。お前のために勉強してるんだぞ。俺は」
「勉強なんかしなくていー。そんなことよりこっち見てよ!」
ヒナタはランドセルから一枚のプリントを差し出した。そこには【Grade試験のお知らせ】と書いてある。
「なんだこれ?」
「Grade試験だよ?くーちゃん知らないの?」
「Grade?初耳だなぁ」
俺はそのプリントに目を通した。
「冬の寒さも和らいで来た今日この頃。皆さん、健康にお気をつけてお過ごしのことだと思います。本日は保護者の皆様にGrade試験のお知らせをしたいと思います。1週間後の日曜日からGrade試験を行います。今回は全てのGradeが対象になります。保護者の皆様にはご迷惑ご協力いただく事も多いかと思われますが、よろしくお願い致します。一次試験はダンジョンにて行います」
久東は読み終えたプリントをダンボールで出来た机の上に置いた。
「何これ?Grade試験があるのか?それもダンジョンで。よかったじゃないか、ヒナタ。ダンジョンいけるじゃないか」
「よく読んで、ここ、ここ」
ヒナタはプリントの下の方に書いてある文章を指差す。
「注意:今回のGrade試験は全Gradeが対象ですが、最下層GradeのDの者は保護者同伴に限り参加できるものとする(一次試験のダンジョン演習は少しばかりの危険を伴うため)」
久東はそっとプリントを置いた。
「もしかして、ヒナタちゃん、GradeはDってやつかい?」
「もっちろん!ずっとDだよ!」
久東はグレードの上下も全くよく分かっていないがDが低い事はわかった。下の方にグレードのピラミッドが書いてあった
名称 強度詳細
E : 能力者レベル0多くの凡人
D : 低能力者レベル1スプーンを曲げる程度で、日常では役に立たない
C : 能力者レベル2使い方が良く分からない・意味のないスキル
B : 能力者レベル3戦闘において群を引っ張っていけるスキル
A : 能力者レベル4軍隊におけるリーダー並み 6代スキルを極めし者
S : 能力者レベル5核兵器相当・国家間の交渉材料にもなる
俺はどうやらヒナタよりも低いEらしいな・・・。
「で、この保護者同伴って言うのはまさか……」
「うん!くーちゃんだよ!」
まさかとは思ったが俺がヒナタの保護者だと?
色々と頭が混乱する。
あまりの急展開に俺はそっとプリントを裏返した。
「それもそうだが、ヒナタもう一つやっておきたいことがある」
ヒナタと久東は河原へ出て行った。
「お前のコピースキルはスキルをコピーできるという事が分かった。次はスキルを他者にコピーしてみよう」
「……ということは、くーちゃんに私のスキルコピーする?」
「いや、いきなり俺は危険かもしれない。どうもスキルと脳の遺伝子は密接に関係しているらしいからな。俺に急にスキルをペーストした後、どんな影響が出るのか分からない」
「……そうなんだ。じゃあ、一回、これでやってみよっか!」
ヒナタは草むらに飛び込み、ガサゴサ何かを探し始めた。しばらくしてヒナタは1匹のカマキリを手に持ち出てきた。
「一回これにペーストしてみるよ」
「うむ。いいかもしれない」
ヒナタはカマキリに前田くんのスキルをペーストした。
カマキリは最初数秒間、何も変化がないように見えた。しかし、急にプルプルと震えだし、横に倒れ、動かなくなってしまった。
「……カマキリ……死んじゃったね」
ヒナタがつんつん動かなくなったカマキリをつつく。
「人間で同じようなことになるとかは分からないが……やはり危険だな。スキルの他者へのコピーは」
「うん……ごめんね。カマキリさん」
ヒナタはカマキリに手を合わせる。小さな穴を掘り埋めてあげる。久東はこのスキルの全貌が分からない状態でスキルを他者にコピーすることはかなり危険なことだと感じた。
「いいか、ヒナタ。スキルのペーストは絶対に他人にしてはいけないぞ。その効力は計り知れないけど、今みたいな事になるかもしれない」
「うん……これでくーちゃんもスキル使えるようになるかもと思ったんだけど……しょうがないね」
ヒナタが手を合わせながらションボリする。
「……いや。ヒナタ。一つ言うの忘れてた」
「……なに?」
「俺か、ヒナタ。もしくは俺たちにとって大切な何かが失われそうになった時、つまり【大切な何かを守る時】俺にスキルをペーストしてくれ」
「え?でも。そんなことしたら・・・」
「いいんだ。その時はリスクを取るべきなんだ」
「・・うん。分かった!」
ヒナタと久東は二人だけの秘密の固い約束をしたのだった。
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今日のヒナタの戦果
Grade認定試験のプリント
久東との約束
新章開幕です〜。
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