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Travel the world  作者: 伊島蒼
愛を謳い哀を抱け
7/12

またもゴブリンで検証

ついに評価をつけてくれた方が現れました!ありがとうございます!



「……人、多いなぁ」


特に迷うことなく武器屋に着いたはいいものの、店の中に入れば人で溢れていた。

現在時刻は午後八時を過ぎた辺り。大体のオンラインゲームでは人が多くなる時間帯、いわばゲームのゴールデンタイムだ。

さてどうしようか。僕もあの波の中に参戦してもいいけれど、異様にリアルなこのゲームのことだ、品切れとかいう概念も存在しかねない。そうならば最悪だ。得意でない人混みにわざわざ突貫して目的の物も得られないのだけは勘弁だ。


「うん、帰ろう」


人間諦めが肝心ってね。

別に逃げるわけではなく、これは戦略的撤退なのだ、うん。自分の中で勝手に言い訳を作りながら踵を返し、店を出る。

どうせここ以外の武器屋も同じようような感じだろうし、買い物は諦めて森でレベリングでもしてこようかな。最早壊れかけている杖と剣しかないけどまあ大丈夫だろう。剣の方は五本あるし、最悪の場合は絞め技を使ってもいいし。効くか知らないけど。ああ、その辺りも検証しようか。


そんな風に思考を飛ばしながら森へ移動、そしてさっそく現れる経験値ゴブリン。やはり頭が悪いのか無警戒に突っ込んでくる。


「ほいっと」


躱して足を掛けて転ばせる。大体のゴブリンはこの流れに乗ってくれるから楽で良い。この後は杖で殴るなり剣を突き立てるなりでHPを削りきるのだけれど、今回はちょっと工夫してみよう。

うつ伏せに倒れるゴブリンの背に跨り両足を脇に挟んで固定、そのまま足を反り返らせて締め上げる。古き良きプロレス技の一つである逆エビ固め。これは素人が遊び半分でやっても死につながることがあるような危険な技だ。さて、これは効くのかな?


「ギ、ギィ……」


うーん、普通に苦しそうだしダメージは与えられてるっぽいけど、決め手に欠けるかな。キャメル・クラッチの方が効いてたかも。いやそれだとSTRが足りなくて脱出されてたか。レベルが上がって出来るようになったらバックブリーカーとかもやってみたいなぁ。夢が広がるね。


「うわぁ……」


ちょっと引き気味の声が聞こえてきたと思ってゴブリンを絞めながらそちらを見れば、まだ初心者感の漂う男一人に女三人のいわゆるハーレムパーティーが。なんでかなと思えば、どう考えても今やっているこれしかなかった。

今現在は完全に陽が沈んだ夜だが、ゲーム的配慮により薄暗い程度に見えるこの森で、自分は魔法使いですよと主張するような初期装備のローブを着た男がゴブリン相手に逆エビ固め。広がる夢にちょっとニヤニヤしてたかもしれないことを付け足せば、もう完全にホラーだ。


「……ちょっと、待ってくれるかい?」


あくまでもここはゲームの中なので、どう思われようが関係ないと言えばそうだけど、狂人ヤバイやつの烙印を押されたままでは嫌なので一応弁明したい。


「『ファイヤ』」


脇で固定していた足を離しゴブリンを自由にすると、なんかすごいぐったりしていた。それはもうどうでもいいので、詠唱を行わない魔法で焼く。

薄暗い周囲が魔法の炎で照らされた。


「ひっ……」


うん、火だよ。ただの魔法だよ、だからそんなに怖がらないで。


「ギィ…」


ゴブリンが短い悲鳴を上げてポリゴンになる。取り敢えずドロップアイテムの回収は後に回して彼らと会話をしないと。


「ええと……僕は悪いプレイヤーじゃないよ?」


意気込んだはいいものの、結局口から出たらのはそんな相手からしたら微塵も信じられないような言葉だった。いや、この場面で何と言えばいいのかわかる人が居たら教えて欲しいよ。


「あ、あの……その、プレイヤーなんですよ、ね?」


ハーレムメンバーの一人がビビりながらも返事を返してくれた。ていうか、唯一の男は何をやってるんだ、もっと頑張って。


「うん。ネームを見てくれればわかる通り、僕はプレイヤーだよ。赤でもないから真っ当なプレイヤーさ」


プレイヤーがプレイヤーを死亡させた場合、頭上に浮かぶプレイヤーネームが白から赤に変化するのだ。言っといてアレだけれど、プレイヤーキルは別に運営側から禁止されているわけでもないから、赤だからといって真っ当なプレイヤーではないということはない。


「そ、それじゃあさっきやっていたのは?」


今度は男のプレイヤーが訊ねてくる。


「あー、ちょっとした検証をしててね」


「検証?」


まあ別に隠すことでもないし普通に答えようか。一刻も早く怪しいプレイヤーのレッテルを剥がしたいし。


「剣で斬ったりハンマーとかで殴ったりする以外に、モンスターを倒す手段がないかをね」


だから怪しい人じゃないよー、と両手をヒラヒラさせてみるが、あまり効果はないようだ。これはもうこの場を離れるべきか。


「ごめん、僕はここらで―――」


「「「バァウ!!」」」


だからなんでこうもタイミング悪くモンスターが現れるのかなぁ?やっぱりLUCが足りてないらいしい。


「『ファイヤ』」


先制一発、火の魔法を放つ。あくまで牽制目的で放ったものなので、動きの速い犬型モンスターのハウンドはあっさり避ける。回避動作によって出来た一瞬の隙を突き、スキルを使って一気に近づく。


「せいっ…あ」


モンスターを杖で叩くと、杖は砕けてしまった。そういえばもう壊れかけてたんだった。

くそう、さっさと全部倒してこの場から退避したかったのに。


「おっ、とと」


横から来た噛み付き攻撃を避けながらあの四人組の元まで退がる。

彼らをチラリと見ると、それぞれが武器を構えていた。一緒に戦ってくれるらしい。


「図々しいんだけど、誰か剣か杖の予備があったら貸してくれないかい?」


一応あと五本ほど剣は持っているけれど、一撃ごとに壊れていたんじゃ隙を晒し続けるだけだ。あまり強い敵ではないが、共闘するに当たって足手まといにはなりたくない。もし予備とか持っていなかったら普通に後ろで魔法でも撃っていようか。


「あっ、私持ってますよ」


おお、他の三人は視線で「コイツに貸す?」「いや、ちょっと…」みたいなやり取りしてたのに、迷わず貸してくれるとは。名前はハルさんね、覚えておこう。今は手持ちがないから残念だけど、どこかでまた会ったら何かお礼でもしようか。


「ありがとう」


彼女が貸してくれたのは、ゴブリンが落とす錆びの浮いた剣とは違う普通に綺麗なショートソードだ。試しに数度振ってみるが、特に問題はなさそうだ。


「『ウィンド』!」


魔法使いの少女が唱えると、緑色のエフェクトのある風がハウンドに向かう。ハウンドはそれを普通に避けるが、誰も追撃に行かない。


「あれ?」


なんで行かないんだろう?避けた瞬間は絶好の攻撃チャンスなのに。


「セヤァァ!!」


ハウンドの回避行動後、男プレイヤーくんは気合い一杯に剣を振り下ろす。ハウンドは動きが速いからそうやって振り下ろすと…ああ、やっぱり避けられた。攻撃後の瞬間は、回避直後の瞬間よりも隙が大きい。ああも大振りに振ったならなおさらだ。案の定、その隙を突かれてハウンドたちに飛びかかられる。

よく考えれば、ここはまだ始まりの街付近の森、当然ここでプレイしているのも初心者になるだろう。しっかりとした連携が出来ていないのも仕方がない、ここは僕が頑張ろう。いや、僕もこのゲームは初心者だけども。

スキルを使って一気に男プレイヤーくんに近づき、襟を掴んで引っ張る。手荒でごめん、でも正直僕一人で戦った方が早いんだ。


「ギャンッ!」


ハウンドの一体の目を突く。横から来た君には魔法をプレゼント。いい感じに怯んでくれたので、さっきの男プレイヤーくんみたいに気合いを入れて振り下ろす。


「キャウン!」


いいね、クリティカルが入った。

今のでHPを削りきれたらしく、ドロップアイテムを落として消滅。あと二体だ。


「ヤァァァ!!」


男プレイヤーくんの剣が当たり、もう一体のハウンドが消滅する。やればできるじゃないか。

内心で彼を褒めながら、最後の一体に向けてインベントリから取り出した錆びた剣を投げる。それとほぼ同時に魔法を放つ。予想通り剣は簡単に避けられたが、避けた先には魔法がある。どうでもいいけれど、僕は偏差射撃とかが得意なんだ。

素早くハウンドに近づき、剣で止めを刺して戦闘は終了。

やっぱり犬型のモンスターの相手は大変だ。ゴブリンが一番単純だし楽でいいな。


「ええと、お疲れ様」


「お疲れ様です」


返事をくれたのはハルさんだけ。共闘したんだし友情が芽生えたりしないかな?


「最後の、すごかったです。あれってスキルとか使ってるんですか?」


最後のとは、偏差射撃のことかな。


「いや、スキルとかは使ってないけど、慣れればたぶん誰でも出来るようになる程度の技術だよ」


うん、全ては慣れだ。何回も練習すれば嫌でも出来るようになるよ。とは言っても、この技術は別ゲーで、しかも実践の中で鍛えたものだからどうかわからないけれど。


「ああそうだ、剣を貸してくれてありがとう。耐久値も減っちゃってるからメンテナンス代は出すよ」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


このフレーズは数時間前にNPCからも言われた気がする。あの時は宿に泊まるってことになったけど、今回は何か渡しておきたい。


「それじゃあ、さっき倒したモンスターのドロップアイテムは全部譲るから、それでどう?」


「えっ、そんな、悪いですよっ」


そろそろ他の方々の無言がキツイ。ここらで撤退させてもらおう。


「ごめん、用事があるからこれで!」


完全に押し付ける形になったのは申し訳ないけれど、取り敢えずこれで逆エビ固めのことは忘れてくれたらありがたい。









「……さっきの人、なんか凄かったな」


走り去る後ろ姿を見ながらそう呟いたのは、ハーレムパーティ唯一の男でありながらリーダーであるカイト。彼のその呟きにその場にいた他の三人も頷いた。


「最初見た時は本当に驚いちゃった」


「だよな」


「逆エビ固めなんてファンタジー系ゲームじゃあんまり見ないもんね」


「ぎゃくえびがため?」


剣士の衣装に身を包んだ少女がハルへ訊ねる。


「さっきの…キッドさんがゴブリンにやってたやつだよ」


「へぇ〜、そんな名前ついてたんだ。よく知ってるね」


「えっ、あっ……こ、この前テレビでやってたのを覚えてただけだよ」



やっとヒロインが出ました。



今回主人公が使ったスキルは「アクセル」です。発動後の最初の一歩AGIが二倍になります。

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