街案内
ごめんなさい、めっちゃ短いです。
昨今ではNPCに力を入れているゲームは数多く存在する。それでも会話を続ける中で必ず何処かで人間と違いが出てしまう。
しかし、このゲームはどうだろう。
話し掛けてきた少女は現実の人間となんら変わりが無く見える。よほど上等なAIを積んでいるようだ。それだけでなく声や表情の変化もすごいのだ。
それでも僕が彼女をNPCだと認識できたのは、ネームが無いということだ。通常、プレイヤーの頭上には白い文字で書かれたキャラネームがある。しかしNPCにはそれが無いようで、彼女の頭上を見ても街の屋根や空が見えるだけ。
「ええと、君は?」
フラグを踏んだ覚えはない、というか街に入ってまだ数分歩いているだけなのだ。踏みようもないだろう。
「私、リーナです!」
この町娘の格好をした少女NPCはリーナというらしい。
「僕はキッドっていいます。それで、どうしたんだい?」
「ええと、キッドさんは旅人さんですよね?」
旅人はトラベルの世界内でのプレイヤーの総称らしい。題名にもある通り、プレイヤーは世界を旅するから旅人なのだ。
「それで、見たところキッドさんはこの街に来たばかりのようだったので、よろしければご案内しようかなと……」
フラグは初めてこの街に来たことかな?だとしたらしっかり踏んでたね。
そしてこれはチュートリアルの一つだと思っていいのだろうか。だとしたら断る必要はないかな。
「うん、じゃあお願いしようかな」
「おまかせください!」
リーナと街を回ってみての感想は、とにかく広いの一言に尽きる。飽和状態になるのを回避する為の処置なんだろうけれど、それにしたって広い。
案内役のリーナがいてくれて一番助かったのは、アイテムショップについてだ。アイテムショップは露店販売や数多くの店があって何処で買えばいいのかわからなくなっていたのだ。まあ何処で買ってもいいのだけれど、リーナの「このお店で買うといいよ」の言葉は、あまり攻略サイトを見る気の無い僕としてはとてもありがたかった。聞けば、店によって安い物は違うし、悪い店に当たると品質の良くない物を掴まされたりと、色々あるらしい。
「いやぁ、助かったよ。何かお礼をさせてほしいな」
街を案内されて気付いたことなのだけど、このゲームは割と人……NPCとの繋がりはかなり大事にした方がいいみたいだ。今後彼女と交流があるかはわからないけれど、お礼をするくらいは損にならないだろう。
「いえいえ、大丈夫ですよっ」
両手を胸の前で振りながら拒否するリーナ。
やっぱりこういう行動を見ても人間にしか見えないなぁ。
「まあそういこと言わないで、お礼をさせてよ」
「えっと、それなら……うちの宿をご利用していただければ、それで」
彼女の家は、アインスフィン内に数多く存在する宿屋の一つを営んでいるらしい。
ちょうどこれから宿を探そうとしていたので、ちょうどいいと言えばちょうどいいか。
「それじゃあ泊まらせてもらおうかな」
「はいっ!それじゃあこっちです!」
NPCリーナちゃんは、アインスフィンに初めて入ったプレイヤーの前に確率で出現します。この案内NPCはリーナちゃん以外にも居ますが、必ず起こるイベントではありません。案内してもらえなかったプレイヤーはドンマイです。