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まさか、この私が敗れるとは!(演技)と捨て台詞を残してから300年、魔王な俺が新人冒険者になったワケ  作者: 藤谷ある
田舎暮らし準備編

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22話 物件内覧

※前回までのあらすじ


 骨董屋の主人から剣を譲ってもらった!

【22話】物件内覧



 とりあえず冒険の準備は整った。

 とは言っても、剣を手に入れただけだが。



 他に必要そうなものも特に思い付かない。

 この身一つあれば大抵のことはこなせるからだ。



 ちょっとそこまで行って帰ってくるだけだから大丈夫だろ。



 そんなわけで俺達は、邪竜マリーツィアが居座るというツオル山に向かっていた。



 しばらくは街道沿いに進むことになるが、途中からは山道に入る。

 瞬足スイフトを使えばあっという間だが、ルーシェを置いて行くわけにもいかないので地道に歩くしかない。



「ふんっ♪ ふふふん♪」



 俺の前を行くルーシェの足取りは軽く、とても楽しそうに見えた。



「いやー、こうしてマオ様とピクニックに行ける日が来ようとは想像もできませんでした」



「いつからピクニックになった!?」



「だって、そうでしょう? マオ様にかかれば邪竜討伐など赤子の手を捻るようなもの。そうなると、このクエストはピクニックに行くのと大して変わらないじゃないですか」



「だとしても、お前と馴れ合うつもりは更々ない」

「えええぇぇぇっ!?」



 ルーシェは大袈裟すぎるくらいに叫んだ。

 驚きすぎだろ。



「せっかく一緒にお弁当を食べようと思ったのにー」

「弁当だと? そんなものいつ用意したんだ?」



「用意など必要ありません。現地調達ですよ。森は恵みに満ちていますからね」

「急にエルフらしいこと言い出したな」



「猪でも捕まえて首根っこを締め上げれば、すぐに真っ赤な鮮血が滴る新鮮なお弁当の出来上がりですよ」

「ワイルドすぎだろ!」



 彼女は意気揚々と話す。

 しかしながら、ダークエルフっぽく見せたかっただけなのだろう。

 言ったあとに場面を想像してしまったのか、青ざめた顔で身震いを起こしていた。



 エルフって、菜食っぽいもんな。



 ちなみに俺は不老不死なので食事を取る必要が無いのだが……人間の料理というものに興味が無いわけではない。



 というか、結構気になる。

 いずれ町で何か食べてみるのもいいだろう。



「とにかく楽しく行きましょう。そう言いたかったのです」



 ルーシェは気を取り直すと屈託無く笑う。

 そういう所は相変わらずだ。



 しかし、ここで釘を刺しておいた方がいいだろうな。



「一応言っておくが、俺はまだお前を信用したわけじゃないからな?」

「ええ、別にいいですよ」



「……」



 あっさりとした返答に拍子抜けしてしまった。



 どうせ彼女のことだから、



「えええーっ! そんなー……私にやましい所なんか全然無いですよー」



 ってな調子で言ってくると思っていたからだ。

 それどころか寧ろ、清々しい感じですらある。



「マオ様が私をどう思おうが自由です。でも、私がマオ様を思う気持ちには偽りはありませんから」

「……」



 なんだ……この良く分からない自信というかなんというか、開き直りに近い感じは……。



 あまり感じたことが無い感覚に胸の辺りがムズムズとする。



「……勝手にするがいい」

「はい、勝手にします!」



 先を歩き出した俺にルーシェは追従してくる。

 が、すぐに、



「ところで、ツオル山というのはこっちの方角で合ってます?」



 俺の足が麓へと向かう街道から、草木が覆い繁る横道に逸れたので疑問に思ったのだろう。そう尋ねてきた。



「ちょっと寄り道をな」

「寄り道……ですか。一体どこへ?」



「俺が買う予定の家だ」

「ああ、新魔王城のことですか」

「だから違うっつーの」



 例の物件が丁度、この先にあるというので、クエストに向かうついでに見ておきたいと思ったのだ。

 どんな雰囲気なのか気になるしな。



「話ではこの丘の頂上にあると聞いているのだが……」



 獣道のような場所を歩いて登る。

 丘は然程高くなく、すぐに開けた場所に出た。



「わあ……」



 先にルーシェが感嘆の吐息を漏らした。

 後を追うように俺も眼前に現れた風景に目を奪われる。



 眼下にレムリスの町並みが広がっていたのだ。

 緑の平原の真ん中で寄り添うように建つ家々。

 ギルドらしき建物もうかがえる。



 なかなかの眺めだった。



「うむ……」



 景色は申し分無い。



「くくく……見て下さい。人がゴミのようですよ? マオ様」



 折角の絶景を無に帰す彼女のことは放って置いて……あとは家だが。



 その景色を背に振り返ると、正面にこぢんまりとした石造りの家が建っていた。

 第一印象は思いの外――可愛らしい――というようなものだった。



 あまり大きな家ではないが、心が落ち着くような雰囲気がある。



 家の周りは家主がいないせいか雑草が繁茂していたが、手入れをすればすぐに見違える状態になるだろう。



 一言で言い表せば〝気に入った〟ということだ。



「ここがマオ様と私の新居になるわけですね!」

「誰が一緒に住むと言った? ここは俺が一人で住むのだ」



「ええっ!? じゃ、じゃあ……私は野宿ですか?」

「家の隣を見ろ」

「となり?」



 そこにはやや傷んだ感じの馬小屋があった。



「あそこなら間借りさせてやらんでもない」

「えええ……」



 まさかそんな事になるとは思ってもみなかったのだろう。彼女は茫然自失としていた。



 さて、実際に家を見たことにより、俺の中で購入意欲が増した――というか、ほぼ確定になった。



 あとはクエストをこなし、その報酬でこの家を買うだけだが……。

 一つ、問題があった。




 誰かいるのだ。




 空き家であるはずのそこに気配を感じる。

 しかも一つじゃない。複数だ。



「あの……マオ様……せめて……家の中に入れてくれませんか? 私は床でも構いませんので……うう……」

「ちょっと静かにしろ」



 しくしくと涙目で訴えてくるルーシェに事情を伝える。

 すると彼女の涙はスッと引っ込んだ。



「それ本当ですか? 動物とかじゃなくて?」

「ああ、中に誰かいる。この感じは人の気配だ」



「でも誰でしょう。マオ様のものに勝手に入り込む不逞な輩は」

「いや、まだ俺のものじゃないけどな」



 かといって、そこに人がいるのはおかしい。



 空き家に金目の物は無さそうだし、空き巣って線は考え難い。

 旅人が雨風をしのぐ為に転がり込んだ……とかだろうか?



 とにかく調べてみる必要がありそうだ。



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