古典落語はしたくない2
音吉は答えます。
「だってね、師匠、古典ってのはあれでしょう。ペンギンみたいな黒いスーツだか何だかわからないのを着て、それでもって、尺八のお化けみたいなのを、ぶうぶう吹いたり。三味線だかなんだかわからないのを、ぴいぴい弾いたりするやつでしょう。ああ言ったものは。ぼくはどうもねえ」
「音吉、お前、何を言ってるんだい?お前の言っている古典っていうものはいったい何なんだい?」
音吉のどうにもトンチンカンな物言いに、師匠は、きょとんとした様子で答えます。
「師匠、何を言っているんですか。古典っていやあ、クラシックミュージックのことに決まってるじゃあないですか。いやだなあ」
「ク、ク、ク、クラシックミュージックだって。音吉やい、お前の言っていることがちっとも分からないのだけれどもね」
音吉はあっけらかんとして答えますが、師匠はなおもぴんとは来ない様子です。
「ですからね、師匠、ぼくはね、さっきも言ったように電気のない時代に幅を効かせていたような、あのどうにもこうにもかしこまって、やる方も聞く方もお澄まし顔でいるようなクラシックミュージックをやりたいんじゃあなくてね、やっぱりエレキギターをかき鳴らしてね、その音をスピーカーでもって大音量で響きわたらしたいんですよ」