古典落語はしたくない11
この回で完結です。最後までご拝読ください。
これで、音吉、舞太、ふかし、伝次郎と都合四人の相手をしていた師匠ですが、そこにまた、次から次へとでしがやってきました。その名も守
「師匠、私、古典がしたいんです」
「わかってるよ、守。古典がしたくないんだね、って今なんて言ったのかい、守や。『古典がしたい』って言ったのかい! いや待て待て、どうせ古典は古典でも落語じゃなくて、という、ただし、が付くのだろう。そうに決まってるんだ。わかってるよ騙されるものか。で、お前のいう古典っていうのはどんな古典だい。音楽かい、舞踊かい、それとも物理学? はたまた生物学なのかい」
「何行ってるんですか、師匠。古典といえば古典落語のことに決まってるじゃあないですか」
「そうか! そうだよな!古典といえば古典落語に決まってるよな! ちなみに守、お前はあたしのことを何だと思っているのかい」
「えっ、そりゃあ師匠は師匠だと思っていますが」
「いや、そうじゃあなくてね、ほら、世間にとってあたしは一体なんだということをこいているんだがね」
「世間にとってですか、ええと、そいつは咄家ってことになるんじゃあないですかねえ」
「そうだよ、守。その通りだよ。そうだよねえ、あたしは噺家だよねえ」
「何当たり前のことを言っているんですか、師匠」
「いや、こちらの話だ、守」
やっとまともな弟子がきたと師匠はすっかりご機嫌です。
「そうかい、守。古典がしたいのかい。で、どの古典だい。何でもいいよ。あたしは今ご機嫌なんだ。何なら歌い出したり、踊ったり、高尚な学問について一席ぶち上げたっていいんだよ」
「いや、師匠。歌やら踊りやら学問やらじゃあなくてね、ほら、師匠がこの前の高座でやったネタ、あれをですね、やりたいんですがね。ですから、師匠、稽古をつけてくださいよ」
「この前の高座? 確かあの時やったものは、あたしが若い頃に自分で作った新作だったはずだが。守、本当にお前は古典落語がやりたいのかい?」
「何を言っているんですか、師匠。師匠が若い頃には新作だったかもしれませんが、今やとっくの昔に古典になっちまってますよ」
最後まで読んでくださってありがとうございました。オチである古典新作云々はウィキペディアの『古典はいつから古典なのか』という記述をもとに話を広げたものです。それではこれを機に皆さんがさらに落語に親しんでいただけたら幸いです。




