第34話」うわ、冷たっ。「
わたしの名前は松崎苺! 釈迦萩高校に通うただの女子高生……だったんだけど、ひょんなことから不思議なチカラに目覚めちゃった!
勉強も恋も大変だけど、世界を救うために今日も戦いますっ!
ん、こんなんでいーのかな? 古い? 古いとかゆーなよー。結構真剣にやってんだぜ?
ま、ぜんぶ嘘だけどさ。許してよ。嘘ついて泥棒がはじまるなら世界なんてとっくに滅びてるだろうし、そーゆーのがお好みならそーするけど?
ははは、なんでもないよただの愚痴。適当に喋っとけばいいんでしょー? 語り部なんて。それっぽいこと言っとけば名言カレンダーにでもしてくれんじゃねーの?
「一日一悔!松崎苺!」。うわ、売れねーわダメだ死ぬか。
あー死にたーい、って口にすると炎上する素晴らしい世界さ。焼死体ごろごろ転がして明日も生きるんだぜ?
じゃあ、とりま(古い?)前話の続きからドゾー。
◇
ドゾー、っつって語り部わたしだったわ。
えーと、魔物が去って、大ダメージの教室は屋根が吹っ飛んでる。机とか椅子とかめちゃくちゃ。
小森日々子が泣いてて、影島アリスはそれをなぐさめてる。鈴村龍之介は灰崎寅宗を想ってて、赤瀬川葵は灰崎寅宗のスキルについて考えてるね。佐伯ルナはベランダから落ちて死んだかどうだか、みたいな。
一件落着はしたけど解決は全然してなくて、さてどーする? ってとこなわけだ。
で、わたしが現れて、
◇
「みんな、大丈夫だった!?」
廊下から教室にたった今駆けつけましたー、って演技してみた。
「誰だお前」
うわ、冷たっ。
「えっ、わたし? 苺だよ! 隣のクラスの松崎苺!」
「……いたっけ、そんなやつ……」
「いるじゃない! ここに! ふざけないでよ鈴村くんっ!」
「ああ、悪ぃ。そっちの教室は無事か?」
マジかこいつ。もう少し他人を疑うことを覚えるべきだぞ高校生。
「うん、なんとか。怪我した子は何人かいるけどね」
「そうか……」
何その四点リーダーで間を持たせる感じ。「俺にもっと力があれば……!」とか言えよ! クソつまんねーけど言えよ!
「俺にもっと力があれば……!」
「え、あ、うん。そだねー」
言った!! なんだこいつヤバい。ラノベの主人公気取りか?
「あたし達、ひどいことしちゃったね」
ん? あ、影島アリスが喋りはじめた。病んでる風モノローグのコーナーだ。
「もう、戻れないのかな……?」
「あー」
あー、言っちゃったか。そういうのはねー。ダメなんだよねー。
「影島アリス」
わたしは影島アリスをびしっと指さして、
「やり直し」
◆
◇
◆
「ゲーセン、行くかー」
誰ともなく鈴村龍之介が声を上げると、
「さんせーい! ね!」
「『よく学び、よく遊べ』だな」
「お金さえあれば、ゲームオーバーはありませんよね」
「……行く。……アリスも……ね」
「僕も行っていいのかい?」
「わたしも行くー」
「あ、あたしはちょっと……」
「いーから、お前も来るんだよ」
気乗りしない風な影島アリスは、半ば引き摺られるようにしてパーティーに加わった。
高校生、学校帰り、近づく夏、ゲームセンター。青春の季語を並べたような放課後の帰り道だった。
へぇ。
その日は夕焼けが綺麗で、影島アリスは馬鹿みたいにはしゃいだ。
ふぅん。
犯した罪のことも、叶えた願いのことも全部忘れて、このままここで人生が終わってしまってもいいと、そう思った。
ははは。死ね。
オレンジ色に包まれた影島アリス達七人プラスわたしの笑顔は、その向こうの夜の暗さなんて知らない振りをして、いつまでも輝いていましたとさ。
◇
って感じで第十四話のラストからだね。リテイク、リライト、リメンバー?
まあ、楽しんでいきなよ。どーせヒマなんでしょ?




